日本の公的医療保険制度は「世界でも稀にみる充実ぶり」というのはよく知られるところです。日本に住むほぼすべての人は何らかの公的医療保険に加入し(生活保護法適用者は除く)、健康保険証を持っています。今回は、公的医療保険制度とともに注目すべき健保組合を取り上げ、その制度についての理解を深めていきましょう。
そもそも公的医療保険制度とは何か
厚生労働所「医療保険に関する基礎資料」の各年度版を参考にすると、公的医療保険の種類は大きくは以下に分類することができます。
- 健康保険(協会けんぽ(協会(一般))、組合健保、法第3条第2項被保険者)
- 船員保険
- 共済組合(国共済、地共済、私学共済)
- 国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
「健康保険」はさらに分かれており、主には中小企業中心の「協会けんぽ」や主には大企業中心の「組合健保」、日雇特例被保険者である「法第3条第2項被保険者」と整理することができます。
このように、日本に住む人は、何らかの公的医療保険に加入しています。意外と自分がどの健康保険に入っているか、全体の制度の中でどの位置づけなのかを正確に把握している人も多くはないかと思います。今一度整理しておくとよいかもしれません。
公的医療保険と組合健保の独自制度の合体版が魅力
日本の公的医療保険制度には、厚生労働省「医療費の自己負担」にある通り、「高額療養費制度」というのがあります。医療費が高額になった場合に、自己負担額については年収に応じて変わります。
しかし、仮に医療費が高額になったとしても、公的医療制度があるために自己負担額を大きく抑えることが可能です。
また、健保組合に加入し、高額医療費がかかった場合に、被保険者が加入している組合次第ですが、独自の還付金制度(付加給付)を持つ組合もあります。
健保組合はどれくらいの数があるのか
では、健康保険組合(健保組合)はどのくらいの数があるのでしょうか。
厚生労働省「医療保険に関する基礎資料~平成29年度の医療費等の状況~」によれば、平成29年度末現在で、組合健保の保険者(運営主体)数は1394。また、適用事業所数は10万4078事業所となっています。かなりの多くの数となっています。
ちなみに、国民健康保険の保険者(運営主体)数は、市町村国保が1716、国保組合が163であることを考えると、組合健保の保険者数は市町村国保の保険者数についで多くなっています。
今回は、組合健保の中でもサントリー健康保険組合をピックアップし、その高額医療費の還付金制度(付加給付)について見ていきましょう。
健保組合に加入で高額な医療費がかかった場合の負担はいくらか
サントリー健康保険組合の場合、付加給付は以下の計算となります(小学校入学~70歳未満の場合)。
- 自己負担額-2万5千円
※算出費が100円未満の場合は不支給。100円未満の端数は切り捨て。
ただし、保険適用外の費用は除きます。保険適用外の例としては、差額ベッド代、食事代、文書料などです。
つまり、保険診療料内での医療費であれば、高額な医療費の結果として自己負担額が大きくなっても、当健保組合に加入していれば、ひと月当たり2万5千円しかかからないということになります。
さらに、特定疾病の治療を受けている方向けの支給もあります。「血友病」、「抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群」、「人工透析を必要とする慢性腎臓疾患」の長期患者は、特定疾病の認定を受けると、医療機関への支払いが1ヵ月10,000円で済みます。
ただし、人工透析を必要とする患者が70歳未満で標準報酬月額53万円以上に該当する場合は、自己負担が1ヵ月20,000円となります。
万が一の医療費負担を心配する前に自分の健康保険証を確認
万が一の時を考えて、民間の保険会社が提供する医療保険に入るのを検討されている方も多いかと思います。
しかし、その前に、まずはすでにご加入されている公的な医療保険について確認しましょう。確認ステップは、以下の通りです。
1:健康保険証にある健保の名前をグーグルやヤフーで検索。例:「トヨタ自動車健康保険組合」
2:各組合健保のサイトで「医療費が高額になったとき」というようなコンテンツをクリック
3:各健保組合の「独自の付加給付制度」を確認。
このように健康保険証を確認し、ネットで検索をし、高額な医療費が必要になった時の各健保組合の独自のサポート体制を確認するのをおすすめします。皆さんの想像以上に日本の組合健保のサポート体制は充実しています。
民間の医療保険を活用するケースのポイント
先進医療は公的医療保険ではカバーされませんが、保険内診療などであれば、高額療養費制度でカバーされます。
先進医療特約の保険料は毎月それほど高くはないので、先進医療を選択した際の医療費の支出額が大きくなるのが心配な人は、先進医療特約を付けることができる医療保険で毎月の保険料が安い商品に加入するということも選択肢のうちの一つです。
もっとも、ここまで繰り返し触れてきましたが、日本の公的な医療保険の制度は充実していますので、まずは、その認識から始めることが大前提となります。
【ご参考】高額療養費制度とは何か
日本には高額療養費制度というのがあり、医療費が高額となっても自己負担限度額を超えると、超えた分は返還してくれます。
はたらく世代が含まれる「70歳未満」の1か月の自己負担限度額についてみてみましょう。
「年収約1160万~」ケース:健保(標準報酬月額83万以上)国保(旧ただし書き所得901万円超)
25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%
「年収約770万円~約1160万円」ケース:健保(標準報酬月額53万円~79万円)国保(旧ただし書き所得600万円~901万円)
16万7000円+(医療費-55万8000円)×1%
「年収約370万円~約770万円」ケース:健保(標準報酬月額28万円~50万円)国保(旧ただし書き所得210万円~600万円)
8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
「~年収約370万円」ケース:健保(標準報酬月額26万円以下)国保(旧ただし書き所得210万円以下)
一律5万7600円
「住民税非課税」
一律3万5400円
参考文献(References)
- 厚生労働所「医療保険に関する基礎資料」の各年度版
- 厚生労働省「医療保険に関する基礎資料~平成29年度の医療費等の状況~」
- 健康保険組合連合会「健康保険組合一覧」
- サントリー健康保険組合「医療費が高額になったとき」
- 厚生労働省「医療費の自己負担」
- 厚生労働省「先進医療の概要について」
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LIMO編集部