やり場のない苛立ち

病院の方針変更によってりえさんが今、一番不安を感じているのが上の子と2人でいる時に破水したり、強い陣痛が来たりしたら…ということ。「子どもは病棟にも入れないので、夫か親が来てくれるまで家で待機しないといけないけど、近い距離ではないので、その間に生まれてしまったらどうしようって考えます。」

経産婦は一般的にお産の進みが早いと言われているからこそ、2回目の出産を経験するりえさんは初産とはまた違った恐怖に悩まされているのです。「それに、無痛分娩ができないことで持病が悪化したら…っていう不安も大きい。転院の難しい臨月直前になって、『これはできません』や『緊急事態なので』と言われても、正直私は納得できません。」

周りで里帰り出産を断られた話を聞くと、産む病院が決まっている自分はまだマシだと思う。けれど、コロナのせいで“普通の出産”ができず、無痛分娩や計画分娩も出来なくなってしまった。酷いつわりの時でも頑張って通院し続けた意味が無駄になってしまったように思え、りえさんはどうしてもやり場のない苛立ちを感じてしまうのです。

「無痛分娩は甘えっていう声があるのも分かりますし、麻酔の先生がひとりしかいないタイミングで帝王切開の方と無痛分娩希望の私がいたら、帝王切開の方が優先されて当然だとも思います。でも、妊娠が病気ではないからというだけで、全て我慢して当たり前という風潮は苦しい。妊婦は優先されて然るべきとは決して思わないけれど、“自分で望んで妊娠したんだから自己責任”という言葉を向けられるのは、あまりにも痛いです。」