キュレーターから読者に伝えたいポイント

先週に引き続き、今週も英国の国民投票に関する話題ばかりが目立ちました。様々な記事を読んで感じることは、結果がどうであれ、“雨降って地固まる”というようなバラ色シナリオは欧州に関しては描きにくいということです。

むしろ、英国以外にもEUからの離脱を指向する動きが高まる可能性すらあることには注意が必要です。

国民投票の結果がどうであれ、しばらくは梅雨空が続きそう

執筆時点では英国のEU離脱をめぐる国民投票の行方は判断がつきませんが、この記事にまとめられているように、EU残留が決定された場合は金融市場が落ち着きを取り戻し、次の焦点は米国や中国など主要国の景況感と金融政策、米国大統領選挙などに移っていくことが考えられます。

一方、離脱となった場合は、金融市場のボラティリティが高まることが予想されています。とはいえ、5月に開催された伊勢志摩サミット等の会合において、主要国の政策当局者達は金融危機回避策を行うことで合意済みであるため、混乱があったとしても短期間で収まる可能性が高いと考えられます。

ただし、景況感の下振れや金融緩和姿勢の長期化懸念から、一段の円高が進む可能性には注意したいところです。

英国のEU離脱問題の背景と現状を考える
出所:DIAM

次はチェグジット(チェコ)リスク?

この記事でも、仮に離脱となっても金融危機は回避されるという見方が示されています。最大の懸念は、ロンドンのシティにある資金が大陸へ急速にシフトすることですが、離脱といっても離脱告知から最短で2年後ですので、告知が遅れれば2年以上かかり、準備期間は十分にあるからです。

ただし、結果がどうであれ、英国内で残留派と離脱派が拮抗していること、また、欧州大陸の各国にもEUに対してネガティブな見方が台頭していることには注意が必要です。この記事によると、チェグジット(チェコ)、フレグジット(フランス)、スウェグジット(スウェーデン)、ジャーグジット(ドイツ)、スペグジット(スペイン)などの言葉が欧州では使われ始めているとのことです。

英国の国民投票の影響
出所:楽天証券

アメリカはどうか?

このように、投票結果に関わらず金融危機は避けられるものの、英国を含む欧州にはあまり大きな期待が持てないことが分かります。また、その裏返しとして、米国の金融政策や景気動向に一段と関心が高まることになりそうです。

そうした点で注目されるが、2016年6月21日に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長による議会証言です。証言内容が比較的楽観的であったため、タカ派的(利上げを選好する傾向)だったという見方もありますが、この記事によると、発言の中には、労働市場に対してやや慎重な姿勢も見られたことには要注意とのことです。

7月8日には6月の米雇用統計が発表される予定です。上記の点を踏まえて、細心の注意を払って注目したいと思います。

イエレン議長の議会証言、細部に宿るもの
出所:ピクテ投信投資顧問

世界経済への不安が払拭できない中での日本株の銘柄選別方法

このように、世界経済への不透明感が英の国民投票後も継続する可能性が高いため、日本の株式市場が一気に夏空へ向かう可能性は低そうです。そうした中での銘柄選別の1つの方法は配当利回りに着目することです。

ただし、この記事にあるように、配当利回りが高い(割安)であるのは、それなりの理由(リスク)があってのことだということを理解しておくことも大切です。円高リスク、マイナス金利リスク、資源安リスクなどの影響度を踏まえて銘柄選別を行いたいと思います。

好配当利回り株への投資を今どう考えるべきか
出所:楽天証券

 

LIMO編集部