この記事の読みどころ
- 6月前半の日本株式相場は散々な結果でした。安倍政権と日銀への失望感のためと考えられます。
- しかし、意外な所から相場が動き始めています。官製相場第3幕がスタートした可能性があります。
- 業種やセクターに注目するよりも、売られ過ぎ感が強い個別銘柄を拾うことが得策と言えます。
6月前半の株式相場の振り返り
政府と日銀に梯子を外された6月前半の株式相場
6月前半の株式相場は散々な結果となりました。5月末比で見ると、日経平均株価は▲9.5%下落、TOPIXも▲9.4%下落しています(6月17日の終値)。月の前半で約▲10%下落するのは、株式相場が急落した今年2月以来となります。なお、2015年末比では、日経平均株価が▲18.0%下落、TOPIXが▲19.2%下落となっており、再び下げ幅が拡大しました。
6月の株式相場下落の理由はいくつかありますが、ザックリ言うと、政府と日銀の悠長な政策スタンスに対して、投資家(特に海外投資家)が愛想を尽かしたということでしょう。
消費増税を延期する消費不振を認識しておきながら、期待された景気対策が完全不発に終わっている安倍政権、及び、「躊躇なく追加緩和する」と呪文のように唱えながら何もしない日銀に対する失望感は、極めて大きいと言わざるを得ません。「山高ければ谷深し」という感じでしょうか。もっとも、そのような期待を持ってしまった投資家にも責任があるのでしょう。
2016年6月の注目イベント、注目セクター
残る大きなイベントは英国のEU離脱を問う国民投票
消費増税の延期、日米の金融政策会合などの重要イベントが終わった6月ですが、国際経済ではもう1つ大きなイベントが残っています。それが、英国のEU離脱の是非を問う国民投票です。英国がEUを離脱するとなれば、その影響は直接・間接を問わず、日本経済や株式相場にも大きな影響を与えましょう。特に、為替相場に与える影響が注視されます。
英国国民が決めることとはいえ、投票が行われる23日(現地時間)は、マーケットが大きく動く可能性があります。
いつも株式相場は“ひょんなこと”から動き出す
さて、冒頭で6月前半の株式相場は失望に終わったことを述べました。英国のEU離脱を問う国民投票があるとはいえ、日本の株式相場は当面低迷するような雰囲気があることは否めません。しかし、株式相場はいつも意外な所から動き始めるものです。
6月20日(月)の日本経済新聞の1面に「リスク資産に最大6兆円 ゆうちょ銀、運用難で」という記事が掲載されました。記事中には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も運用上限額を引き上げるとあります。詳細は省略しますが、結論から言うと、これは非常に重要な記事です。端的に言うと、“官製相場第3幕”の始まりとも言えます。日本株の大きな買い手が登場したと考えられます。
もちろん、6兆円全てが株式投資に回るわけではありませんが、株式市場には2つの意味で支援材料となります。1つは、事実上、政府が株式相場の買い支えに注力し始めたと考えられることです。背景には参院選挙対策があるのかもしれません。まさしく、官製相場第3幕のスタートです。
もう1つは、こうした官製相場の始まりにより、短期筋の外国人投資家による日本株への売り崩しができ難くなることです。むしろ、アベノミクスに見切りをつけようとした、あるいは、既に見切りをつけていた外国人投資家が、再びか三度か分かりませんが、日本株の買い手として算入する可能性も十分あります。
実は、こうした動きを読んでいたどうか定かではありませんが、東京株式市場の売買高・売買代金は、6月中旬から少しずつ増え始めていたのです。既に、外国人投資家は安くなった日本株を拾い始めていたと考えられます。やはり、『善は急げ』の6月になりそうです。
セクターに注目するのではなく、売られ過ぎ感が強い個別銘柄に注目
6月後半はこうした日本株買いの動きが加速する可能性があります。有望セクターに注目するよりも、セクターを問わず、売られ過ぎの感が強い銘柄、年初来安値が続いている銘柄の下値を拾うことが得策です。ただし、前述したような英国の国民投票が控えているため、為替相場の動きには注意しましょう。そして、為替相場のトレンドが転換すると、従来の内需関連銘柄への注目が、一転して輸出関連株へシフトする可能性もあります。
現時点では、円安とも円高とも予想し難い環境ですが、自動車や精密機器など輸出関連セクターの下値を拾っておくのも必要かと思われます。
LIMO編集部