キュレーターから読者に伝えたいポイント

今週は日米で金融政策に関する重要な会合が開かれ、いずれも現状維持が決まりました。また、来週6月23日には、いよいよ英国でEU離脱をめぐる国民投票が行われます。いずれも重要なイベントであることには違いないですが、やや関心がこれらの問題に集中し過ぎているきらいがあることも事実です。

こうした時こそ、まだ関心が集まっていない新たな動きに注目することも大切です。今回は、世界的な株価指数を算出している米MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が、中国A株の指数採用を見送ったニュースについても取り上げました。

”3拍子”揃ったら円高はどこまで進むか

2016年6月15日(米現地時間、日本は16日未明)、米連邦準備理事会(FRB )は米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の現状維持を決め、追加利上げを見送りました。一方、16日に日本銀行は金融政策決定会合で金融政策の現状維持と追加金融緩和の見送りを決めたと発表しました。いずれの政策判断も、概ね事前の市場予想に沿った内容でした。

今後の焦点は、ブレグジット(BREXIT:イギリスのEU離脱問題)の行方ですが、仮に「米利上げなし・日銀の追加緩和なし・ブレグジット実現」と6月に3つ円高(ドル安)材料が揃った場合にどこまで円高が進むか、注意深く見ておく必要があります。

米FOMCは利上げなし 日銀はどう動く?
出所:楽天証券

悪材料出尽くしとなる可能性も

6月23日に行われる英国のEU離脱を巡る国民投票で仮に離脱派が勝利した場合、大幅な円高が進むのではないかという見方が一般的になりつつあります。離脱後に起こる変化が予測し難いため、ユーロやポンドが売られ、その退避先として日本円が選好されるという見方がその背景にあります。

また、ギリシャ危機が起った時に、ギリシャがEUを離脱するのではないかという懸念からユーロが売られ、円が買われたことも、円高が進むと見られていることの一因です。

とはいえ、この記事で筆者が指摘しているように、ギリシャがユーロを使用しているのに対して、英国はユーロではなくポンドを使用していることを考慮すると、ギリシャ危機と今回のブレグジットを同列に扱うのはやや無理筋と言えるのではないでしょうか。

このため、仮に離脱派が勝利したとしても、むしろ悪材料出尽くしとなり、相場が反転する(円安に向かう)可能性もあることは頭の片隅に入れておきましょう。

第102回 英国のEU離脱を巡る国民投票について
出所:楽天証券

最近話題にならない中国の動向を見過ごしてはいけない

最近の相場の関心事は、もっぱらブレグジットと日米の金融政策に集中していますが、長期的に資産形成を目指す個人投資家はこのような時こそ、次のテーマを探すべきです。

そうした観点で気になったニュースは、6月14日(現地時間)に株価指数を開発・算出する米MSCI社が、中国本土に上場している人民元建て株式(中国A株)のMSCI新興国株価指数への組入れを見送ると発表したことです。

採用が見送られた理由は、グローバル投資家が投資対象とするには、まだアクセス(市場への出入り)が不十分であるという理由からでした。ただし、この記事によると今回の決定は一時的な見送りであり、今後、改善が認められれば、2017年までには採用される可能性は十分にあり得るとのことです。

上海総合株価指数が2015年6月から7月にかけて約30%急落した「上海ショック」から早くも1年が経過しましたが、最近ではあまり中国株の動向は話題になっていません。しかし、この記事のような見方もあるため、新たな動きが始まる可能性にも注目したいと思います。

MSCI、中国A株採用を見送った4つのポイント
出所:ピクテ投信投資顧問

 

LIMO編集部