この記事の読みどころ
- 国内トラック販売の回復が鮮明です。4~5月は対前年同期比+15%以上の増加となっています。
- 熊本地震の復興需要に向けたミニ特需が起きている可能性はありますが、それが本格化するのはこれからです。
- 景況感悪化が著しい国内の景気対策実施を見据えた、先行需要の可能性もあります。6月以降の販売動向に注目です。
4月から国内トラック販売の回復が鮮明に
国内のトラック販売の回復が鮮明となってきました。収益性の高い大型・中型トラックの月次販売(対前年同月比)は、2015年10月+2%増⇒11月▲5%減⇒12月▲13%減⇒2016年1月▲3%減⇒2月▲10%減⇒3月▲1%減⇒4月+16%増⇒5月+15%増と推移しており、明らかにセンチメントが変わってきました。
4~5月の大幅増加は、前年同期の販売水準が低かったわけではなく、実態面での増加と見ていいでしょう。この増加基調が続けば、トラック関連企業の好調な業績も期待できます。
熊本地震後の復興需要に向けた販売増加はまだ限定的?
4月以降の販売回復ですぐに思い浮かぶのが、熊本地震発生後の復興需要向けによる押し上げ効果です。
復興のためには、まずは震災で発生した膨大な量の瓦礫(がれき)を片付ける必要があります。その瓦礫の運搬に、大型トラックは必要不可欠であり、過去の大震災発生後には例外なく、トラック需要が増大しています。その観点から見れば、トラック販売の回復は頷けるものと言えます。
しかし、大型・中型トラックは、乗用車のような大量生産品目ではありません。一般に、受注から生産を経て販売(登録)までのリードタイムは、概ね2~3か月かかります(注:車種や仕様によって大きく異なります)。どんなに急いでも1か月半は必要です。
そのため、普通に考えれば、4月中旬に発生した熊本地震による復興需要効果が、4~5月の販売を押し上げた可能性は低いと言えましょう。実際、2011年の東日本大震災では、発生の約4か月後からトラック販売が急増しています。
滞留在庫の一部が販売された可能性は否めず
一方で、熊本地震への緊急対応のため、メーカー側や販売店側が有する未登録の滞留在庫の一部が、急ピッチで登録(販売)されている可能性は否めません。こうした熊本地震による“ミニ特需”がどのくらい含まれているかは、もうしばらく様子を見る必要がありそうです。
しかし、それを最大限考慮しても、熊本地震だけで、トラック販売が大幅回復したとは説明し難いものがあります。滞留在庫がそんなに多くあることも考え難いからです。
それでは、4月からの販売回復の理由は何でしょうか。前述したミニ特需の可能性の他に、荷動きの活発化、一部トラックメーカーによる新型車への切り替えが進んだこと、など様々な理由が考えられます。
国内の景気対策実施を見据えた先行需要の可能性も
少し逆算して考えてみましょう。4~5月に販売された大型・中型トラックは、概ね2~3月に受注したものと考えられます。
この2~3月頃(特に2月)を振り返ってみると、消費増税の延期の可能性が高まるなど、景況感の悪化が著しく強まりました。そして、伊勢志摩サミットや参院選挙などを控え、夏場に国内の景気対策が実施されるという観測が広まりました。それを見据えるように、建設株も大幅上昇したのは記憶に新しいところです。
国内の景気対策が、公共事業拡大やインフラ再構築等の建設需要を発現させるため、それに必要なトラックを早めに準備した可能性は十分あると考えられます。確かに、そうした建設需要が起きてからトラックを発注するようでは、商機を逃しかねず、“遅い”と言えなくもありません。
残念ながら、未だに目立った景気対策は打ち出されていませんが、この可能性に注目したいと思います。いずれにせよ、熊本地震向け需要が本格化する6月以降の販売動向を注視しましょう。
LIMO編集部