そうした消費者の行為は、冷たい頭脳で考える限り、合理的です。多めに買わないことのリスクは結構あります。「品不足が長続きしたらどうしよう」という不安を抱えて過ごすだけでもストレスですし、もし本当に品不足が解消しなかったら、必需品なしで暮らすことになりかねませんから。

多めに買った国民は合理的だった

それに対し、メーカーは「在庫は足りているから、安心してほしい」と言っていますが、合理的な消費者は、それを信じて通常どおりの購入量を維持するのでしょうか。そんなことはないでしょう。

まず、本当に足りているのでしょうか。足りているという根拠は何でしょうか。「消費者が通常1週間に購入するトイレットペーパーの量は在庫として持っている」ということであれば、意味のないコメントですね。消費者が「いつもは1週間分の買い置きをしてあるが、今日からは2週間分の買い置きをしよう」と考えた途端に在庫不足になるからです。

実際、トイレットペーパーが店頭から消えて数日経ちますが(本稿執筆時点の水曜日現在)、多くの店で在庫切れとなっているわけです。そうだとすれば、多めに購入した消費者は正しかった、ということになるでしょう。

実はメーカーには大量の在庫があり、単にメーカー在庫が店頭に並ぶまでの流通に時間がかかっている、ということかもしれませんが、そうだとしても、「店頭に並ぶまでに時間がかかりそうだから、多めに買っておこう」と考えた消費者は、やはり正しかったことになります。

「デマを信じないで落ち着いて行動して」という声も聞こえてきますが、これも疑問です。最初に流れた情報はデマだったわけですが、人々がそれを信じて行動したことで、デマが真実になってしまったからです。