「賢い人」が「デマだから自分は買わない」と言っている間に、普通の人が購入量を増やしたため、賢い人が買えなくなって困っている、という笑えないことが起きているのです。

そうだとすると、政府が「デマを信じないで」と国民に依頼することにより、政府を信じてアドバイスに従った人が損をすることになります。これは政府としていかがなものかと思います。

皆が合理的に行動すると皆が酷い目に遭う

世の中には、皆が合理的に行動すると皆が酷い目に遭う、ということがよくあります。劇場火災の際に、個々人にとって合理的なのは非常口に向かって走ることでしょうが、皆が同じことをすると皆が酷い目に遭います。

株価暴落の噂が流れた時、株主が株を売る行為も同じですし、銀行破産の噂が流れた時に預金者が預金を引き出す行為も同じですね。

劇場主としては「走らないで」と放送しますが、効果は薄いでしょう。人々が合理的に行動している時に、人々の行動を変えるのは容易ではないからです。政府が「トイレットペーパーを大量に買わないで」というのも同じですね。

メーカーにも増産のインセンティブは小

メーカーが大増産してくれれば、品不足は短期間で解消するのでしょうが、それも望み薄でしょうね。

トイレットペーパーの使用量が増えているわけではないので、事態が収束した後は、消費者が自宅に買い置きしてある物を使うため、売れ行きが大きく落ち込むことが予想されるからです。

マスクのメーカーであれば、使用量が増えているので、「このまましばらく新型肺炎が収束しなければ、増産が大儲けに繋がる可能性もある」と考えるわけですが、トイレットペーパーにはそうした可能性が期待できないのです。