レビュー:長期金利が主要国で低下、欧州株が急落した1週間

先週(6月6-10日)の主要国の株式市場は、欧州株が急落し、ロシアや韓国・台湾等東アジアの一部の市場を除いて総じて軟調でした。英国のEU離脱の是非を問う国民投票を控え、イベントリスクへの警戒が高まったことが最大の要因です。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演で利上げ時期が明示されなかったことから米国の利上げ先送り観測が確定的になり、さらに韓国・ロシアが利下げに動くなど、金利面では株式市場にはサポート要因がありました。ちなみに、利下げをした2か国の株式市場は堅調でした。

しかし、5月の中国貿易統計が中国の内需・外需の足踏みを示唆し、原油価格が1バレル50米ドルの節目で足踏みを始めるなど、マクロ面で一段の株高につながる材料は少なかったと思います。

そうした中で英国のEU離脱の是非を問う国民投票の6月23日が近づき、イベントリスクを回避する動きが高まりました。主要国の長期金利が急低下し、金価格が急騰する一方、欧州株は軒並み▲2〜3%の下落をしています。日・米・中の3つの株式市場は若干下げている状況ですが、たとえばS&P500は最高値更新前に足踏みが続き、しかも恐怖指数といわれるVIX指数が急騰するなど、中身を見てみると警戒感がにじんでいるように思われます。

先週の主要市場の動き

注:現地通貨ベース、為替は円安が+、円高が‐表示

年初来の主要市場の動き

注:現地通貨ベース、為替は円安が+、円高が‐表示

アウトルック:日銀の次の一手とジョージ・ソロスの影が気になる1週間に

今週(6月13-17日)は、英国のイベントリスクを控えるうえに日米の金融政策が決められる週のため、株式市場では動意が難しい展開になりそうです。

注目材料は、12日の中国の主要景気指標(本稿執筆時点では未開示)、14-15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と15-16日の日銀金融政策決定会合が上げられます。

先週も中国の過剰債務問題の話題が上りました。中国の景気の方向性は引き続き重要で、市場のセンチメントに重要な影響を与えるでしょう。金融政策については、今回は米国の利上げの可能性は低く、金利据え置きならサプライズはないでしょう。むしろ手詰まり感が強まる日銀が、参議院選挙を前に景気を刺激するに足る有効な手を打ってくるのか注目が集まりそうです。政府与党は財政政策で景気下支えを考えていると思いますが、日銀に追加緩和策が出なければ一定の失望は生まれると予想します。

このように慎重になりがちな投資環境ですので、アップル開発者会議(13-17日)や北米ゲームショウE3(14-16日)などから個別の材料を探す動きも予想されます。VR、MR関連が注目されそうです。

さて、先週はジョージ・ソロスの動向を伝えるニュースが目にとまりました。「イングランド銀行を打ち負かした男」という肩書で語られる伝説のヘッジファンド運用者です。英国の国民投票が迫る中、ソロスの名を聞いて因縁を感じる方もいらっしゃるでしょう。中国の過剰債務問題を警戒していると言われるソロスは、日本にも注目をしていると思われます。ソロスの視線がいまどこに向けられているのか大変気になります。

 

LIMO編集部