大きく変わった中小・零細企業の資金調達環境

日本では、2009年12月に「中小企業金融円滑化法」が施行され、国が中小・零細企業に対する資金繰り支援を促してきました。

「延命措置」ではないかと揶揄される面もありましたが、同法施行前、月の平均倒産件数が1,300件程度であった厳しい状況を脱しました。昨年の倒産件数は毎月600〜800件程度になっています(参考:東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」)。

この時限立法の法律は2013年に終了しましたが、市中金融機関は国の意向に応える形で、「引き続き、返済猶予に応じて中小・零細企業を倒産させない」という姿勢を維持してきたものと思います。

ところが、中小企業から返済猶予を求められた件数と、それに応じた件数を金融庁へ報告するという金融機関の義務は2019年3月末に消滅し、また、金融円滑化チェックリストを含む「金融検査マニュアル」(金融庁)は2019年12月に廃止されました。

結果として、2020年から、返済猶予に応じるかどうかは金融機関が独自に判断すればよいということになっています。

実は、手厚い日本の中小・零細企業向け金融支援については、その根拠となってきた「中小企業金融円滑化法」の枠組みがすでに消滅しているのです。

最近の低金利政策や地方経済の衰退に伴って地域金融機関の収益力が減退していることを考えると、先行き、中小・零細企業の資金調達環境の悪化が心配されます。