キュレーターから読者に伝えたいポイント
5月の株式市場は日、米、独ともに上昇となり、「セル・イン・メイ」の展開とはなりませんでした。ただし、6月に入ってからの株式市場は、米国を除き膠着感が強い相場が続いています。
「休むも相場」という有名な投資格言があるように、方向感がつかみにくい時は、無理をせず、何もしないことも長期的に資産形成を目指す個人投資家には大切なことです。ただし、休んでばかりいると投資チャンスを逸してしまう可能性もあります。そうならないように、今後の金融政策の勘所を以下の記事から把握しておきましょう。
米国金融政策の4つの注目点
まずは米国からです。6月3日に発表された5月の雇用統計は、市場コンセンサスを大幅に下回る弱いものでした。しかし、6月6日に行われたイエレンFRB議長の講演では、米国経済は底堅さを維持しているとの認識を示唆しており、時期は明言しなかったものの、将来的に利上げを行う意向があることを印象付けました。
利上げ実施となれば日米金利差の拡大から円安が進む可能性が高まるため、日本の株式市場にとっては早く利上げが行われたほうが望ましいわけですが、イエレン議長には、まだいくつかの懸念要因が残っているようです。具体的には、以下の「イエレン議長が利上げをためらう4つのポイント」にあるように設備投資、雇用統計、労働生産性、GDPの4点です。
この記事の筆者によると、雇用統計を除くとそれほどハードルは高くなく、また、雇用統計でも賃金の上昇という明るいサインも見られるため、仮に雇用市場の落ち込みが一時的と判断されれば、再び利上げの声が出ても不思議ではないとのことです。よって、7月8日に発表予定の6月の雇用統計が非常に注目されることになります。
イエレン議長が利上げをためらう4つのポイント
出所:投信1
※6-8月の主な予定は以下をご参照ください。
主な経済指標・イベントスケジュール
出所:みずほ投信投資顧問
日本の金融政策には期待薄、メガバンクもマイナス金利政策には批判的
次は日銀の金融政策です。この記事の筆者によると、6月15-16日の金融政策決定会合で日銀が追加緩和策を発表する可能性は極めて低いとのことです。理由としては、以下の3点が挙げられています。
1)金融緩和に設備投資や消費を浮揚する効果はなく、事実上、円安誘導だけが追加緩和の目的となっている
2)マイナス金利に弊害が大きいことが分かってきた
3)日銀の異次元緩和(国債等の80兆円買い取り)も弊害が大きいことが分かってきた
サプライズ好きの黒田日銀総裁のことですから、何が飛び出してくるか予想することは専門家でも困難と言われていますが、上記のような考え方もあるということは気に留めておきましょう。
また、この記事にあるように、三菱東京UFJ銀行は国債のプライマリーディーラー(国債市場特別参加者)の資格を国に返上する方針を固めた、というニュースは要注目です。
この制度は、国債入札への積極的な参加など、国債管理政策上重要な責任を果たす一定の入札参加者に対し、国債発行当局が「国債市場特別参加者」として“特別な資格”を付与し、国債の安定的な消化の促進、国債市場の流動性の維持・向上等を図ることを目的として2004年に創設されています。
特別な資格とは、財務省が開催する特別参加者との会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができるといったことですが、そうした特権を享受できる”仲良しクラブ”から日本最大のメガバンクである三菱東京UFJ銀行が離脱するというのは、かなり異例な動きです。
引き続き、国債の最大の買い手は日銀であるため、こうした動きにより国債の消化が遅れるという心配は当面は全く不要ですが、メガバンクは明らかにマイナス金利政策に対して批判的である、ということは覚えておきましょう。
日銀が追加緩和に動けない3つの理由
出所:楽天証券
イギリスの国民投票や参院選の行方にも注目したい
2016年6月7日に発行されたDIAMアセットマネジメントのマンスリーレポートでは、今後3か月の見通しについて、日本株、米国株ともに前月と同様に横ばいを予想しています。
日本株式については、6月23日に行われるイギリスでのEU(欧州連合)離脱・残留を問う国民投票の結果が発表されるまでは上値の重い展開が続くとしています。また、円安が進む余地は限定的であるため、国内企業業績の改善を確認するには時間を要することも指摘されています。
一方、下支え要因としては、日銀の追加緩和期待や、参議院選挙を控えて与党の公約に目新しい内容が出てくることなどが想定されています。
マンスリーレポート(世界の投資環境)
出所:DIAM
LIMO編集部