「友人は引っ越し先が見つかるまで泊っていていいと言ってくれました。一緒にネットで物件を探しながら夜遅くまでおしゃべりしたりして、本当に久しぶりに心から笑えたんです」

翌朝、荷物を取りに自宅に帰ったSさんを夫の罵声が迎えましたが、怖いとは感じなかったそう。
「大声を出して女を支配したつもりになって、哀れな人だなと思いました。前日に用意した、記入済みの離婚届を突き付けて、自分の荷物と結婚前の貯金が入った通帳を持ってもう一度家を出ました。今度は家出じゃなくて、再出発のために」

離婚届を見てSさんの夫は「一人で生きていけると思っているのか」といつもの言葉を吐きかけましたが、Sさんの心は揺らがなかったそう。夫からのモラハラによって、家の中にしか向いていなかった意識が、家出することで外に向き、自分自身の人生を生きたいと思えるようになったのだと、Sさんは晴れやかな表情で語ります。

「でも、もし私と同じような状況で悩んでいる人がいたら、家出をする前に誰かに相談してほしいと思います。たまたま良い方向に転がっただけで、もしかしたらトラブルに巻き込まれていた可能性もありますから……」

家出が良い転機になったSさんですが、やはり安易に家出をすることはおすすめできないといいます。
「DV相談ナビ」に電話すると、DVやモラハラについての相談ができる窓口を紹介してもらうこともできるため、限界まで抱え込まずに相談機関を頼るのも良いでしょう。


参照:「DV相談ナビ」(男女共同参画局)

WANNAGROWライターズ