この時、Sさんの所持品は咄嗟につかんできた財布のみ。Sさんの夫は「主婦に金を持たせると贅沢ばかりする」といって、必要な生活費以外のお金をSさんに渡すことはなかったそうです。そのため、Sさんの財布にはその日の買い物を切り詰めて浮かせた1,000円だけが入っていました。

コンビニでパンを買い、水飲み場の水を飲んで空腹を満たしたSさんでしたが、そんな自分の姿が哀れに思えてたまらず、公園のベンチでただただ泣き続けたのだとか。

夫からの「お前は一人で生きていけない」という呪い

ところがSさんはしばらく泣き続けると、なんだか妙にすっきりした気分になったといいます。「泣きじゃくって気づいたら、暗かった空が明るくなってきたんです。私、小銭しか入ってない財布と体ひとつで、どこだかよく分からない場所で一晩を明かしたんだなって思ったら、急に呪いが解けたような気がしました」

Sさんのいう「呪い」とは、夫が結婚当初から幾度となく口にしてきた「お前は一人で生きていけない」という言葉。夫の庇護がなければ生きていけない、だからこそ理不尽な要求にも従い、どんなことも我慢して完璧な主婦でいなければいけないと思い込んでいたと語るSさん。

「でも、外で一晩明かせるなら何だってできるんじゃないかって。そう思って公園を出てまた歩き出したら、私と同年代の女性がいろんなところで働いているのに気づいたんです。私だって本当は働けるし一人で生きていけるんだって思いました」

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その後、結婚以来会うことのなかった古い友人宅を訪ねて事情を話し、一晩泊めてほしいと頼んだSさん。友人はSさんの話を聞いて「もっと早く相談してほしかった」と涙を流し、快く招き入れてくれたといいます。