「Working Rich」という富裕層

富裕層と見られたくない理由には、道徳心や品格を疑われるのではないかという恐れもあるようです。2008年のリーマンショック後、2011年の「ウォール街占拠運動」で格差拡大への不満が爆発して以来、富裕層を中傷する声があからさまになっていることから、道徳心に敏感なエリートが増えています。

シャーマン博士はアメリカでは第二次世界大戦後、富裕層の構成が徐々に多様化していると指摘しています。20世紀の富裕層は準貴族的なWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)が占めていました。しかし、教育システムが平等になったことから、学位を取得して高給な職につけるチャンスが誰にでも与えられ、実力主義になったからだとしています。

ちなみに、このような実力主義の社会で、価値の高い人的資本を活かし一生懸命働いて財を成す人々を「Working Rich」といいます。そして、彼/彼女らが富裕層のトップを占める割合は年々増えています。

彼/彼女らは、仕事、家事、子育てに忙しく振り回されるという点では「ミドルクラス」と同様です。そして、特権の上に胡坐をかき、社会的地位や物質的な富を見せびらかす強欲で非人道的な資本家や、苦労知らずで余暇を持て余す資産家のような、常識に欠けた富裕層と同様にみられることに抵抗をもっているようです。

富を公にひけらかすことは、下品で洗練されていないというイメージも広まっています