② 短時間労働者への適用拡大

これまで健康保険の適用外だった短時間労働者(週30時間未満)に関して、適用要件を緩和して適用対象とするものです。

今回の改正により、これまで第一号被保険者や扶養に入っている第三号被保険者だった人が、第二号被保険者に区分がシフトすることになりますが、メリットは2つあります。

まず1つ目は、老後の年金受給額が増えることです。これまで、第一号や第三号被保険者は基礎年金のみでしたが、第二号になると、基礎年金+厚生年金となります。

2つ目が、就業不能時に所得補償として傷病手当金を受給することができるようになることです(注)。一方で、社会保険料負担の総額はこれまでより増えることになります。また、社会保険料負担は労使折半となっているため、短時間労働者を多く雇用している企業にとっては、負担増となります。

注:厚生年金保険と健康保険は被用者保険として一体適用が原則となっており、厚生年金の適用拡大に基づいて健康保険についても適用拡大になるために、本稿では傷病手当金について触れています。

【参考】第15回社会保障審議会年金部会(2019年12月25日)参考資料1「年金制度改革等に向けた提言 - 1.被用者保険の適用拡大」

③ 繰り下げ受給可能年齢の選択肢の拡充

現行制度では、支給開始年齢を65歳としているが、受給時期を前後5年ずらすことが可能であり、60歳~70歳で選べるようになっています。繰り上げた場合は、毎年の年金額は減額、繰り下げた場合には増額される仕組みとなっています。

今回の改正では、繰り下げ可能な年数を10年に延ばし、60歳~75歳で選べるようになります。より長く働き、繰り下げの選択を柔軟に行えるようにする観点です。なお、受給開始年齢の繰上げについては、減額率が見直しされ、▲0.5%/月から▲0.4%/月に減額率が小さくなります。