RCTの欠点を乗り越えて貧困削減に繋げる道筋
それでは「RCTを用いて因果関係の特定を行えばすべて解決!」といえるかというと現実的ではありません。どの手法にも言えることですが、RCTにも以下3つの欠点があると考えられます。
① 多大な人的、時間的、金銭的コストがかかる
厳密にRCTを行うにはとてもコストがかかります。上記の職業訓練校の例を考えてみてもお分かりになるでしょう。10都市で職業訓練校を増やし、増やさなかった他の10都市と合わせて3年間モニタリングする、というのは多大なコスト(時間的、人的、金銭的)がかかります。
② 倫理的に問題となる場合がある
RCTにおいて重要なのは、トリートメントグループとコントロールグループを「ランダムに」選ぶ、という部分です。ランダムに選ばないと、バイアスが入ってしまい、本当の因果関係が検証できません。しかし、たとえば食糧配布と子どもの栄養状態の因果関係を確かめるにあたって、食料を配布せず放置するコントロールグループをランダムに選び出すなどといったことが倫理的に問題ないかというのは議論する必要がありそうです。
③ 社会科学上の命題では厳密に用いることができない場合がある
RCTをより厳密に用いるには、RCTの対象者がどのグループに属しているかを知らない状態を作り出すことが重要です。しかしながら、上記の職業訓練校の例にしても、食糧配布の例にしても、そのような状態を作り出すのは、特に現在のようにインターネットへのアクセスが容易な時代には不可能といっても過言ではないでしょう。
おわりに
これらの欠点を乗り越えてRCTを活用しながら貧困削減に繋げていくためには、アカデミアとビジネス実務者の密な連携が必要と言えます。アカデミアが特定した因果関係に基づいてビジネスサイドが効果的な施策を行う、といったコラボレーションが期待されるところです。
不断の地道な努力が求められるところですが、貧困削減の将来像を描くにあたって欠かせないものですから、当社も引き続き試行錯誤しつつ尽力してまいります。
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