銀行に余裕がなくなってきている

もっとも、預金口座の維持手数料を客に要求すると、休眠口座以外の預金口座も逃げ出してしまうリスクがありますから、今まではそれが怖くて銀行は維持手数料の設置に慎重でした。

しかし、ゼロ成長やゼロ金利の長期化等々によって銀行の収益環境は悪化しています。そのあたりの事情については拙稿『ゼロ成長とゼロ金利が地銀を苦境に追い込むのはなぜか』をご参照いただければ幸いです。そこで、もはや「背に腹は代えられない」という銀行も出てきている模様です。

自行だけが苦しいのであれば、手数料の設置によって顧客が他行に流れてしまうリスクも高いでしょうが、各行ともに苦しいのであれば、各行が追随してくれる可能性も見込まれますから、最初に設定する銀行のリスクも限定的だと言えるかも知れません。

顧客の批判はあり得ますが、毎年1回10円を入金すれば(通帳と10円玉を持ってATMで手続きすれば)休眠口座ではなくなるのですから、それほど大きな抵抗はないでしょう。

残高がなくなれば口座を銀行側から解約する、といったこともあり得るでしょう。そうなれば、むしろ残高数百円の口座を持っている人は、解約に行く手間が省けて助かるのかもしれませんね。

ちなみに「年会費の自動引き落としや年金振込の口座に指定してあるので、解約されては困る」と考える読者がいるかも知れませんが、ご安心ください。そうした口座は休眠口座ではありませんから(笑)。

最大手の三菱UFJ銀行が手数料の導入を検討していると伝えられているので、他行が追随する可能性も大きいと思われます。今後の推移が注目されます

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義