将来の市場金利上昇時に備える
銀行預金の金利は、市場金利と比べると安定しています。したがって、将来市場金利が大幅に上昇することになったとしても、預金金利の上昇は限定的でしょう。そうなると、預金部門のない銀行は苦しくなります。
他行は、それほど高くない金利で預金を集めて貸出するので大きな利益を得ることができますが、自行は高い金利で他行から資金を借りて、それを貸出に使うので、利益を稼ぐことは容易ではないでしょう。
そうした事態に陥ることを避ける意味でも、預金部門は維持しておく必要があります。預金部門を解散してから再度設置しても、一度解約された預金口座が戻ってくるまでには大変な労力と時間を要するでしょうから。
休眠口座は迷惑なだけ
上記のように、一般預金客でさえも銀行にとっては必要な存在ですから、客に笑顔で礼を言うのは、銀行にとって合理的だ、ということもできそうですね。
しかし、どうしても迷惑な客がいます。休眠口座の所有者です。預金口座は持っているけれども残高が極めて小さく、しかも取引のない口座は、多数あります。引っ越し前に作った口座、結婚前に作った口座で、解約するのは面倒だから放置してある、という人も多いでしょう。
これは、所有者にとっては何でもありませんが、銀行にとってはコストなのです。たとえば、あまり知られていませんが、銀行は預金通帳の発行冊数を数えて、それに対する印紙税を支払う必要があるのです。それ以外にも、コンピューターの容量を食いますし、相続が発生した時に面倒な手続きが発生しかねません。
それならば、せめて印紙税の分だけでも顧客に負担してもらいたい、というのが銀行の本心でしょう。それによって休眠口座の解約が増えれば、銀行にとって、むしろ有難いことだからです。