父の退職後、プールも映画鑑賞も諦めた母

一方、筆者の母は典型的な夫源病に陥った人間です。

母は子育てがひと段落してから通い始めたプールや、レディースデイを狙った映画鑑賞を楽しんでいました。しかし、その生活も父の定年退職後に終止符が打たれたのです。

元々、無趣味で人付き合いもない父が退職したら、今までの生活スタイルががらりと変わることを予想していた母。ある程度のことは覚悟していましたが、その悪い予感は見事的中してしまいました。

たとえば、プールに行こうとすると何か用事を頼んで邪魔をしたり、プールに行けば受付に電話をかけて呼び出してもらうなど行動を監視し、外出を阻もうとしたのです。

プール通いも映画鑑賞も諦めた母は、新婚当初から父に嫌味を言われ続けても貫いた図書館通いを唯一の楽しみにし、現実逃避をするためにほぼ毎日足を運んでいます。

「死ぬまで女中をやらされるかと思うをうんざりする」と口にした母の表情は、人生を諦めかけた老婆そのものでした。

夫婦の関係を維持するには?

夫婦と言えども他人です。永遠に良好な関係を保つことは難しいかもしれませんが、結婚生活を続けていくにはお互いを尊重し、思いやる気持ちを持って接するのが大切です。

筆者の両親のように、老年期に入ってから改善を試みるのは極めて難しいので、子育てがひと段落する前から素直な気持ちを伝え、お互いを理解するよう心がけることが必要なのではないでしょうか。

中山 まち子