メモリー市況の悪化や、米中貿易摩擦の影響で低調な一年となった2019年の電子デバイス業界。20年は5Gの商用化に伴い、関連業界は活気づいており、曇り空にも薄日が差してきた。スマートフォンの出荷台数も3年ぶりにプラス成長となる見通しであるほか、基地局などのインフラ投資も活況を呈する。
一方で、米中問題は今後の情勢を見極めるのが困難な状況で、両国の出方次第では市況が一変する可能性もある。最終需要でカギを握りそうなデータセンター(DC)は、期待と不安双方が入り乱れており、20年の業界トレンドを読み解くには、様々な要素を考慮しなければならなそうだ。
約15%が5G対応端末に
5G商用化は20年の業界動向を見通すうえで、最も重要なテーマといえる。5Gの商用サービスは米国に続き、中国でも19年11月から開始。20年は対象エリアを拡大すべく、今後インフラ投資が拡大する見通しだ。米国ではミリ波の商用サービスも19都市で開始された。
商用化に伴い、端末も一定程度が5G対応となる見込み。当初は20年のスマホ出荷台数のうち、1.2億~1.3億台程度が5G端末になるとみられていたが、足元では2億台を超えることが確実視され、出荷台数のうち、約15%が5G対応機種となる見通しだ。
20年に市場投入されるアップルの次機種も5G(一部モデルはミリ波にも対応予定)に対応するほか、中国でもサブ6対応の機種が続々とリリースされる。ミリ波を筆頭に、5Gによって部品点数の増加や、さらなる高性能化が期待されており、台数増加以上のインパクトがあるとみられている。
車載デバイス需要に陰り
5Gの登場で明確なプラス材料が出てきたスマホ分野に対し、DCはまだ不透明感が残る。GAFAに代表される大手IT企業の本格的な投資再開に向けた動きが確認できていないためだ。メモリー大手のマイクロンは直近決算(19年9~11月)でDC向けのSSD需要が非常に強かったとしているが、これが年明け以降も継続したものとなるかどうか、見通せない部分が多い。さらに、インテルのサーバー向け新型MPU「Ice Lake」の出荷遅延も、DC投資にとってはマイナス材料だ。
デバイス別にみれば、イメージセンサーや光デバイス、パワーデバイスといったニッチ分野が引き続き好調を持続する。これらジャンルは比較的国内勢が得意とする分野でもあり、関連企業の積極的な設備投資も目立つ。
一方で、これまで好調を持続していた車載用半導体は、中国での新エネ車に対する補助金政策の見直しや欧州市場の落ち込みなどが影響し、減速感が強い。車載向けに伸長していたMLCC(積層セラミックコンデンサー)も状況は同じで、在庫調整が長引いている。
FPDは10.5Gの稼働状況次第
FPD市場では19年、テレビ用液晶パネルの価格が下落し続け、各社の業績が大きく悪化したが、20年は韓国勢の生産能力削減によって価格の上昇が期待できる。ただ、未稼働の10.5G工場が立ち上がったり既存10.5G工場の稼働率が上がれば、再び年後半に供給過剰に転じることも懸念される。
有機ELはスマホ向けでは液晶の置き換えを加速しそうだが、テレビ用では液晶との価格差が大きく開き、セールス面で苦戦しそうだ。次世代技術として注目を集めるQD-OLEDやマイクロLEDの進展に注目したい。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳