JDIがLTPSを駆使した新製品を多数展示

ファインテックジャパンで魅せた技術力

タッチセンサーも搭載した透明ディスプレー

本記事の3つのポイント

  • 「ファインテック ジャパン 2019」でジャパンディスプレイが新しい技術や開発品を多く展示
  • マイクロLEDディスプレーでは米glo社との共同開発品を展示。独自の透明ディスプレーも20年度から出荷を開始する
  • ディスプレーパネル内にタッチパネルのセンサーを作り込むインセル技術を応用展開し、曲げても割れない静電容量式フレキシブル指紋センサーも展示
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 12月4日(水)~6日(金)に、幕張メッセ(千葉県)で「ファインテック ジャパン 2019」が開催された。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)もブースを出展し、新しい技術や開発品を多く展示していた。11月から量産出荷を開始したとされる有機ELディスプレーについては展示が無かったが、同社の得意とするインセルセンサー技術や、車載向けディスプレーのほか、11月28日に発表したばかりのマイクロLEDディスプレーや透明ディスプレーなどが展示され、高い注目を集めた。

米glo社とマイクロLEDディスプレー共同開発

 注目を集めていたのが、1.6型のマイクロLEDディスプレーだ。数年前から米glo社と開発に着手し、共同ラボで開発を続けてきたという。試作品のスペックは、画素数300×RGB×300の265ppiで、数十μm大のマイクロLEDを27万個搭載した。輝度は300㏅/㎡で、視野角は178度以上。

 マイクロLEDディスプレーは、LEDそのものが画素となるため、液晶ディスプレーには不可欠なバックライトや、偏光板、カラーフィルター(CF)が不要で、次世代ディスプレーとして注目度も高く、実用化が実現すれば、史上最高のディスプレーになると言われている。

 glo社は、GaN(窒化ガリウム)ベースのマイクロLEDを赤・緑・青(RGB)の3色すべて保有しており、なかでもGaNの赤色マイクロLEDは世界で同社のみが実現している。また、ウエハーからの高速ダイレクトトランスファー技術を持ち、京セラとも共同で開発に当たっている。ちなみに、京セラは1.8型の256×RGB×256の200ppi製品を、10月に開催されたCEATEC2019に出品している。

 試作品は、JDIが長年培ってきたLTPS(低温ポリシリコン)バックプレーン技術を適用することで、高輝度かつ広視野角のマイクロLEDディスプレーを実現した。バックプレーンとgloの技術があれば、どこでも同じものができるのか、という筆者の質問に対しては「ノイズなどを抑えて鮮明なLED画面の特徴を活かすには、LTPS技術に長けていることが他社よりも利点になる」(説明員)と話した。

 ターゲット市場は車載など、高輝度で広視野角という特徴や製品価値を活かせる市場での展開を考えている。スマートフォンやウオッチへの展開については、ここまでの高輝度は必要なく、むしろ輝度を落として使用することなるため、マイクロLEDディスプレーの特徴を活かせないという。現状、大きさは10型までが可能で、市場が見つかれば国内既存工場での量産化を考えているとのことで、次期は未定ながらも、早期量産化に向け開発を進めているようだ。

20年度に4型透明ディスプレーを出荷

 透明液晶ディスプレーは、17年2月に4型を発表している。画素数300×360の117ppi、透過率80%のパネルで、表からも裏からも見ることができる。RGBのLEDを高速で切り替えて画素化するフィールドシーケンシャル方式(FSC)を用いた独自の透明ディスプレーで、偏光板やCFが不要なため、高い透過率を実現している。

 このほど、12.3型への大型化と、透過率87%の高輝度化に成功した。大型・高輝度化は、構成部材や設計の見直しを図ることで実現した。一方、透明度のほか輝度(150㏅/㎡)と、コントラスト比(=30:1、前回発表=16:1)を重要視したため、色数は前回発表製品の1677万に対し、今回は4096までに絞った。

 表示の仕組みは、「ガラス導光+新散乱型液晶+FSC駆動」だ。光ファイバーで使用されている光の全反射を利用して光をガラスパネル全体に行き渡らせ、液晶材が光をあらゆる方向に散乱させることで画素レベルで光取り出し効率を向上させ、FSCで高速に光源を切り替えることで、くっきりとした画像を実現している。20年度内には、性能を向上した4型を量産出荷する計画だ。

 現状の技術での大型化は20型くらいまで。これ以上の大型化には、また別の技術が必要になるという。LEDの光がガラス導光板全体に行き渡るのに限界があるためで、例えばディスプレーの上下にLEDを搭載すれば実現できるが、透明ディスプレー感が損なわれるデザインになってしまう。

 透明ディスプレーの市場としては、対面販売の際の顧客と販売員の間や、室内の透明パテーションなどといった、設置環境になじむ部材としてなど、屋内使用をメーンに想定。またスポーツ観戦中にかざすことで説明文が表示されるなどの用途も考えられ、現状ある市場に投入するのではなく、全く新しい用途で顧客と共に市場を作っていく方針だ。コストについては、すでに量産数次第でクリアできる状況だという。

インセルタッチセンサー技術応用、ホバーと指紋認証

 ディスプレーパネル内にタッチパネルのセンサーを作り込むインセル技術「Pixel Eyes(ピクセルアイズ)」の技術を応用展開し、曲げても割れない静電容量式フレキシブル指紋センサーを展示した。5月に発表した際のスペックは、有効センサーサイズ約10.5mm×約14mm(約0.7型)、階調数は256。既存のガラス指紋センサーの特長をさらに活かし、大きなサイズのセンサーや、商品のデザイン性を高める透明センサーなどの開発を進めている。展示した指紋センサーは、支持基板ガラス上に塗布されたポリイミド(PI)フィルムの上に静電容量式センサーを作り込んだ。

 欧米では個人認証付きスマートカードが流通しており、より信頼性の高い個人認証を行うためには、指全体を検出可能な大きなサイズの指紋センサーを搭載する必要があるが、シリコン製の指紋センサーでは、カードが湾曲した際に割れてしまう可能性が高い。一方、フレキシブル指紋センサーであれば、シリコン製指紋センサーでは実現できない大面積化が可能で、セキュリティー強化の対応がしやすくなるという。すでに技術は完成して量産化も決定しており、20年度内には出荷される予定。欧州でカードの指紋センサー向けに採用されたもようで、フィルム基板用量産設備などを導入し、量産に向け調整を進めていくという。

 このほか、ホバータッチディスプレーも初出品。ホバータッチは、画面に触れずにタッチ操作ができるセンサー技術で、例えば医療現場など、画面を直に触れられないような作業現場での使用が想定される。Pixel Eyes技術をベースに、センサーサイズを大きくすることで感度を上げ、指であれば画面から5cm、手のひらであれば10cm離れた場所から感知して動作させることができる。開発品のためユーザーインターフェースの方法は定まっていないが、展示品は、指を動かさずにいるとその部分が拡大され、手を振ると画面を送ることができた。

医療現場などで活躍しそうなホバーセンサー

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 画面サイズは7~20型までを想定している。タッチによる静電容量の変化を検出するTx層(トランスミッター)とRx層(レシーバー)があるが、大型になるとRxの本数が増えてICの数も増えてしまうため、20型以上の大型化は想定していないという。

 「ニーズがあれば、UIはおのずと決まってくると思う。例えば、数秒間指を動かさずにいることで画面決定をするとか、指を上下に振ると(決定が)できるようにする、といった方法が考えられる。技術的には、専用のICを起こすことで動作可能なため、ニーズ次第で作り込めるだろう」(説明員)という。

車載、VRのほかレーザーディスプレーも新開発

 これらのほか、車載のセンターインフォメーションディスプレー向けに、16.7型の大型曲面インセルディスプレーや、実景色よりも精細に見える9.6型の電子ミラー用ディスプレー(1920×RGB×384)、3枚の12.3型ディスプレーを横長に1つながりにしたインパネ用ディスプレーなどを展示した。今後サンプル提供を進めていく。また、VR向けに2.89型1056ppiの2Kパネルも出品した。すでに量産が決まっているという。

鮮明な色とつややかな質感が美しい車載用

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 新しい開発品としては、レーザーバックライト式液晶ディスプレーが関心を集めていた。バックライトの光源をレーザーにしたことで、BT.2020規格をほぼすべてカバーする広色再現性を実現した。同製品専用に作ったRGBのレーザーをパネルの左右に配置した構造で、高価格なレーザーの個数を削減するために、導光板も材料メーカーと新たに開発した。放送局のプロ向けとして提案中だ。

 JDIは、得意とするLTPS技術を進化させて「Advanced-LTPS」を完成させた。これは、LTPSとOxide(酸化物半導体)の利点を兼ね備えており、低消費電力化・狭額縁化に寄与している。LTPSをバックプレーンとするデバイスを、現在の液晶から有機EL、センサーへと応用展開を進め、形状の自由度が高いディスプレーや、樹脂基板のストレッチャブルセンサーなどを積極的に提案していくという。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 澤登美英子

まとめにかえて

 いちごアセットからの資金調達により、ようやく経営再建への道筋が見えてきたジャパンディスプレイ。事業運営ばかりに目が行きがちですが、次世代に向けた技術開発は手を抜かず、粛々と行っている印象です。こうした次世代技術の芽が花開くかどうか、同社の経営再建に向けた一挙手一投足に俄然注目が集まります。

電子デバイス産業新聞

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