すると同僚より給料が低い従業員のうち、給与情報公開のURLを受信していた従業員の方が仕事への満足度が低いことが判明したのです。一方で同僚よりも給料が高い従業員は、給与情報公開のURLの受信有無を問わず、満足度に差はありませんでした。
つまり給与情報公開のURLを受信し、同僚よりも自分の給料が低いことを知ったグループのみ、仕事への満足度が低くなったということになります。またこのグループの従業員は、その後の離職率も上昇しています。
このように、職場環境や給与金額は全く変わっていないのにもかかわらず、同僚の給与金額を知るか否かが、自分の仕事に対する満足度、さらには人生の選択までをも左右する可能性があるということが言えそうです。
まとめ
本記事では、周囲と自分の給料の金額を比べることが、仕事のやる気や生産性、満足度に悪影響を及ぼすことがあるということを、2つの実験をもとに見てきました。
「自分の給料の方が高いと知ったら自信を持てるのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、仮にその事実を知ると優越感が油断に変わってしまい、結果として仕事で高いパフォーマンスを発揮できない可能性もありますね。
同僚はどれくらい給料をもらっているのか、つい気になってしまうものですが、もし今の仕事や給料に満足しており、特に不満がないのならば、周囲を気にせずに一生懸命に自分の仕事に取り組んでいくほうが合理的と言えるでしょう。
自分の軸を持ち、時には情報を取捨選択していくことも、今の幸せを守るためには大切なのです。
【参照】
① Anat Bracha, Uri Gneezy, and George Loewenstein, "Relative Pay and Labor Supply", Journal of Labor Economics 33, no. 2(April 2015):297-315
② Card, David, Alexandre Mas, Enrico Moretti, and Emmanuel Saez. 2012. "Inequality at Work: The Effect of Peer Salaries on Job Satisfaction." American Economic Review, 102(6):2981-3003
タナカ チアキ