日本でも外資系企業を中心に年収ベース(年間固定給に加え、業務成績に応じた賞与支払い)の報酬制度を導入するケースが増えましたが、それでも、まだ残業代によって収入が変動する人が多いと思われます。そして、事実上の大幅な残業規制を強いられ、月々の手取り額が目減りした社員も少なくないでしょう。

そのため、忘年会に限らず、飲み会や外食を控えている人も多いと推察されます。昨年もこの影響はあったと考えられますが、この1年間でそれが拡大したとしても不思議ではありません。

また、全般的に食材が高騰していることに加え、10月からの消費増税(外食は軽減税率適用外)で価格が上昇しています。こうした要因を勘案すると、忘年会を始めとする飲み会代は、思った以上に財布を直撃すると考えられます。

「#忘年会スルー」は日本社会への抗議?

もちろん、収入減や食費値上がり等とは関係なく、会社の忘年会には行きたくないという人も少なくないでしょう。それでも、この1年間における“飲み会代”の実質的な値上がりや割高感の上昇が、少なからず忘年会離れに拍車をかけていると考えられます。

言われてみると、前掲した女性社員の発言にある「4,000~5,000円」は、普通の飲み会の参加費としては高いと感じてしまうのは筆者だけでしょうか。

今回、多方面で共感を得た「#忘年会スルー」は、日々の生活が決して楽ではないこと、そしてムダなお金を使いたくないことを暗示する、日本の社会への抗議だと考えるのは行き過ぎでしょうか。こうした事情を鑑みながら、来年以降も「#忘年会スルー」がより一層大きな反響を呼ぶのか注目したいところです。

葛西 裕一