一方で、輸入企業が高くドルを買わされる分は、少なくとも一部が売値に転嫁されます。その分だけ輸入企業の収益への影響が小さくなり、同時に消費者物価の上昇を通じて景気にマイナスに働きます。

両者を合計すると、円安が景気にはマイナスに働く一方で、企業収益を押し上げることで株価は押し上げる、ということになるわけです。

しかも、輸出企業の多くは上場されているために利益増が株高要因となりますが、輸入企業は上場していないところも多いので、利益減が株安要因となりにくいのです。

景気と無関係な株高要因もある

ドル高円安になると、企業が海外に持っている資産が円換算で膨らみます。これは、決算書上で資産が時価評価されるか否かにかかわらず、株高要因です。また、海外から受け取る利子配当も、円換算で膨らみます。これは損益計算書を改善し、株高要因となります。

日本企業は海外に巨額の資産を保有しており、そこから巨額の利子配当収入等を得ています。その多くが上場企業のものであるため、この効果は大きなものとなっているはずです。

しかし、企業が海外に持つ資産が円換算で膨らんでも、海外から受け取った利子配当が円換算で膨らんでも、企業が国内で設備投資や賃上げをするわけではありません。内部留保されて借金の返済に回されるか、配当されて投資家の別の投資に使われるか、いずれにしても景気を押し上げる力はほとんどないはずです。