麻薬は、やはり「魔薬」である

中毒になろうとも治療さえも受けず、人生は一度だけ、自分の一生は自分で決める!と麻薬を常用し続ける人たちも、もちろんいます。

大手企業に勤務するサラリーマンの隣人は、常にパリっとしたスーツに身を固めた典型的なエリートでした。ある夏の日の夕方、庭先で彼が注射器で薬物を打っている姿を私は偶然、目撃してしまいました。それは、あまりにも衝撃的でした。

あっけにとられている私に気がつき、彼は私から視線をそらせて言いました。「邪魔しないでくれ」と。私は謝って、その場を離れました。

数年後、彼が物乞いをしながら街をさまよっている姿を見かけました。あまりの変貌に目を疑いましたが、明らかに隣人その人でした。

かつては雑談に応じた仲、私は彼を哀れに思い小銭を渡そうとしました。しかし、近くを歩いていた老婦人に止められたのです。「よしなさい。あなたのお金は彼の麻薬代の足しになるだけだから」。隣人の姿を見かけたのは、それが最後になりました。

屋外で注射を用いて麻薬を摂取する中毒者。最近はその数は減少傾向にある。(画像提供:フリー画像/Pixsbay)


今後、オランダをモデルとした、大麻を含むソフト・ドラッグを容認する国が増えていくかもしれません。

しかし、たかが大麻、されど麻薬。ほんの少しをたしなむ程度であっても、中毒になる可能性を秘めたこのドラッグ類は、まさに「魔薬」と感じざるを得ません。

稲葉 かおる