最終出勤日を終え、翌日ゆっくり休んで「今日は何をしようか」と起きた朝。
ブルルルル!とケータイが鳴りました。ケータイを見ると、メールが届いていたのです。

「10時にデスク。マジで」

なにか大変なことをやらかしてしまっていたのでしょうか。
僕は大慌てで着替え、2日ぶりに勤務先に向いました。

するとブラック先輩が「ほら、来た!ホントに来た!」と大喜び。
なんでもリサーチに人手が必要で、なんとしても手伝ってほしかったのだとか。

先輩が「ちゃんと会社には報告済み。バイト代を支払ってもらえるように話付けてるから!」とのことだったので、僕は結局その日はお手伝いをすることにしました。

今思えば、パワハラ以外の何物でもないのですが、なんだか僕は困ったときに僕を呼んでくれたことが嬉しかったのです。

その「最後の仕事」は僕にとっても、いい思い出になりました。ブラック先輩に「今日はマジでありがとう。東京に来たら絶対に遊びに来いよ」と言ってもらい、最後に役に立てて良かったなと思いました。

このADの期間は辛く苦しいものでしたが、僕にとっては大きな財産になったのは間違いありません。

ADという仕事はとても過酷で、ディレクターはさらに過酷です。僕のように数カ月で辞めるADも多く、いつも制作現場は人手不足になっています。

制作現場にもっとゆとりができ、労働環境がよくなり、より良い番組ができる制作環境になることを心から祈っています。

柳沢 裕也