3. 税金の差はどこから生まれる?
試算では、所得税と住民税の合計は、片働きが約135.0万円、共働きが2人で約66.9万円でした。税金だけで約68.0万円の差があります。その理由を、所得税の計算の流れで見ていきましょう。
3.1 片働きは税率20%、共働きは1人5%
所得税は、課税される所得金額に税率をかけて計算します。試算では、片働きの夫の課税される所得金額は約578.4万円で、税率は20%でした。一方、共働きの場合は1人あたり約179.7万円で、税率は5%です。
3.2 給与所得控除と基礎控除が2人分使える
給与所得控除は、給与収入から差し引ける、いわば会社員の必要経費のようなものです。国税庁によると、令和8年分の給与所得控除は、年収1000万円の場合は上限の195万円、年収500万円の場合は144万円です。共働きなら2人分で288万円になります。
基礎控除も、令和8年分は合計所得金額によって金額が変わります。国税庁によると、合計所得金額が489万円以下なら104万円、655万円超2350万円以下なら62万円です。試算では、片働きの夫は62万円、共働きの夫婦はそれぞれ104万円で、2人分では208万円になります。
なお、令和8年分の基礎控除と給与所得控除の見直しは2026年12月1日に施行され、会社員の場合は年末調整で反映されます。
3.3 片働きは配偶者控除を使える
片働きの場合は、収入のない妻について配偶者控除を受けられます。国税庁によると、納税者本人の合計所得金額が900万円以下なら、所得税の配偶者控除は38万円です。試算の夫は合計所得金額が805万円のため、38万円の控除を受けられます。
それでも、給与所得控除と基礎控除が2人分使えることや、税率の低い部分で収まることの効果のほうが大きく、税金は共働きのほうが少なくなりました。
4. 社会保険料は共働きのほうが多い
税金とは反対に、社会保険料は共働きのほうが多くなりました。片働きが約126.6万円なのに対し、共働きは2人で約144.6万円と、約18.1万円多い計算です。
4.1 厚生年金保険料には上限がある
理由の1つが、厚生年金保険料の計算に使う標準報酬月額の上限です。日本年金機構によると、厚生年金の標準報酬月額は65万円が上限のため、毎月の給与が約83.3万円の片働きの夫も、65万円として保険料を計算します。一方、共働きの夫婦は給与が約41.7万円ずつで、2人とも給与に応じた保険料を納めます。
また、片働きの妻は夫の扶養に入っているため、自分で健康保険料や年金保険料を納める必要はありません。
4.2 保険料が多い分、将来の年金も増える
社会保険料が多いと手取りは減りますが、厚生年金保険料を納めた分は、将来受け取る厚生年金に反映されます。共働きの場合は夫婦それぞれが厚生年金に加入しているため、老後は2人とも老齢厚生年金を受け取れます。手取りの差だけでなく、将来の年金の違いもあわせて考えておきたいところです。
5. まとめ:世帯年収だけでなく「誰がいくら稼ぐか」で手取りは変わる
世帯年収1000万円で試算すると、片働きの手取りは約738.5万円、夫婦500万円ずつの共働きでは約788.4万円で、年に約50万円の差がありました。所得税と住民税は共働きのほうが約68.0万円少ない一方、社会保険料は共働きのほうが約18.1万円多くなっています。
なお、試算は一定の前提を置いた目安で、実際の手取りは賞与の有無や年齢、加入している健康保険、ほかの所得控除などによって変わります。
わが家の源泉徴収票や給与明細を見ながら、世帯年収だけでなく夫婦それぞれの収入と手取り、将来の年金もあわせて確認してみませんか。
参考資料
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.1191 配偶者控除」
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」
- 東京都主税局「個人住民税」
和田 直子