4. 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと20.42%が引かれる

ここまでの試算は、退職金を受け取る前に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出している場合のものです。この申告書を出すと、会社が退職所得控除を反映して税金を計算し、差し引いてくれます。

4.1 1896万円なら387万1632円が先に引かれる

国税庁によると、申告書を出していない場合は、退職金の支給額に一律20.42%を掛けた所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。退職所得控除は差し引かれません。

1896万円の退職金なら、387万1632円が先に引かれる計算です。勤続38年で本来は税金がかからない人でも、受け取る額はその分少なくなります。

4.2 引かれすぎた分は確定申告で取り戻す

申告書を出さずに多く引かれた税金は、本人が確定申告をして精算します。退職金の源泉徴収票を手元に用意し、退職所得控除を反映した税額との差を戻してもらう流れです。

申告書は、退職金を支払う会社に提出するものです。退職の手続きを進めるときに、勤続年数などの記入を確かめたうえで、退職金が支払われる前に出しておきましょう。

退職金を受け取ったあとは、税金だけでなく、退職後の保険料も気になるところです。筆者の経験から、受け取る前に確かめておきたい点をお伝えします。

5. 【筆者の視点】退職金を受け取る前に確かめておきたいこと

筆者が元公務員として国民健康保険を担当していた頃、退職したばかりの人から「退職金を受け取ったら保険料が上がるのでは」と聞かれたことがありました。退職金と保険料の関係は、思い込みで心配している人が少なくなかったのです。

5.1 退職金は国民健康保険料の計算に入らない

国民健康保険料の所得割は、前年の所得をもとに計算します。分離課税で受け取るときに税金を納め終える退職所得は、この計算に含まれません。

一方で、退職した翌年度までは、在職中の給与の所得で保険料が決まります。退職金よりも、1年目の保険料の高さに戸惑う人のほうが多かった印象です。

5.2 勤続年数の数え方を会社に確かめる

早見表のとおり、退職金の税金は勤続年数で大きく変わります。入社日と退職日から数えた勤続年数が、申告書と源泉徴収票で正しく扱われているかを確かめておくと安心です。

出向や休職の期間をどう数えるかは、会社の規程によって異なります。分からない点があれば、退職金を受け取る前に人事や総務の担当に聞いておきましょう。

6. まとめにかえて

大学・大学院卒の会社員が定年で受け取る退職金の平均は1896万円です。この額を一時金で受け取ると、勤続20年なら税金は123万538円、勤続30年なら30万610円、勤続38年なら0円になります。

税金を左右するのは、勤続年数で決まる退職所得控除です。退職金が支払われる前に退職所得の受給に関する申告書を会社に出し、受け取ったあとは源泉徴収票で差し引かれた税額を確かめておきましょう。

参考資料

太田 彩子