子どもが3人いれば、大学の授業料は全員分が無償になると思われがちです。多子世帯の支援は、きょうだいの年の差によって、在学の途中で対象から外れることがあります。

制度の条件は、見出しの印象だけでなく本文の定義まで読み、条件が外れるタイミングを時系列で並べると、見落としを防ぎやすくなります。

ここでは、日本学生支援機構(JASSO)の公表資料をもとに、多子世帯の大学の授業料等の減免の対象と上限額を整理し、年の差が2歳の3人きょうだいの場合に、対象から外れる時期を試算します。

※制度の内容は、JASSO「多子世帯支援について」「2026年10月の支援区分見直し」(2026年11月4日確認)をもとにしています。

※実際の判定は、申込者と生計維持者の住民税の情報などをもとに行われます。ここで示す例は、仮定を置いた目安です。

1. 多子世帯の授業料等の減免とは?扶養する子が3人以上なら所得制限なしで、国公立は授業料54万円・入学金28万円が上限

JASSOによると、令和7年度(2025年度)から、多子世帯に属している学生等は、所得制限なく授業料等の減免を受けられるようになりました。大学の上限額は、次のとおりです。

  • 【国公立】入学金28万円、授業料(年額)54万円
  • 【私立】入学金26万円、授業料(年額)70万円
  • 【所得制限】なし
  • 【資産】3億円未満(5,000万円以上3億円未満の場合は、授業料等の減免だけで、給付奨学金は0円)
  • 【条件】扶養する子が3人以上の世帯で、本人が生計維持者に扶養されていること

減免されるのは、上限額までです。私立大学の授業料が上限の70万円を超える場合、超えた分は自己負担になります。

所得制限がないのは、授業料等の減免です。毎月振り込まれる給付奨学金には世帯の所得基準(第1〜4区分)や資産基準があるため、所得が上限を超える場合や資産が5,000万円以上の場合は0円になり、多子世帯でもすべてが無償・支給になるわけではありません。

2. 多子世帯の「扶養する子3人以上」は、どう数える?扶養親族の数と、生計維持者の子どもの数の、小さい方で判定する

JASSOによると、次の2つの数のうち、小さい方が3以上で、本人が生計維持者に扶養されている場合に、多子世帯の対象になります。

  • 【数1】申込時に申告した、生計維持者の扶養親族のうち、生計維持者の「子ども」にあたる人の数
  • 【数2】生計維持者全員の住民税の情報にある、扶養親族の数の合計

令和8年度の住民税を使う判定から、扶養親族にならない程度の収入のある学生世代の一部も、「子ども」の数に加えられるようになりました。JASSOは、2027年度に大学等に進学するための予約採用を申し込んだ人などに、この扱いを案内しています。きょうだいの分は、別に申告が必要です。

また、住民税の情報が確定したあとに新たに生まれた子等は、書類を出すと「子ども」の数に加えることができます。

3. 多子世帯の判定は、いつの住民税を使う?毎年10月に見直され、翌年9月までその年度の住民税で判定する

JASSOによると、支援の区分は毎年10月に見直されます。2026年度の場合、判定に使う住民税の情報は次のとおりです。

  • 【2026年4月〜9月】2025年度の住民税の情報(2024年の所得)
  • 【2026年10月以降】2026年度の住民税の情報(2025年の所得、2025年12月31日時点の扶養の状況)

住民税の扶養親族の数は、前の年の12月31日時点の状況で決まります。上の子が4月に就職しても、その年の12月31日を過ぎ、翌年度の住民税の情報に切り替わるまでは、判定の数は変わりません。

4. 多子世帯の支援は、年の差があるとどうなる?2歳差の3人きょうだいでは、第3子の2年生の後期から第2子・第3子とも対象外になる

年の差が2歳の3人きょうだいが、いずれも大学に進学する場合の例です。第3子が入学する年の3月に第1子が卒業し、4月に就職して扶養を外れるとします。

  • 【第3子が大学1年の4月〜9月】前々年の12月31日時点(第1子は大学3年)で3人 → 対象(第3子の入学金も減免の対象)
  • 【第3子が大学1年の10月〜2年の9月】前年の12月31日時点(第1子は大学4年)で3人 → 対象
  • 【第3子が大学2年の10月〜】第3子が入学した年の12月31日時点(第1子は就職済み)で2人 → 第2子(大学4年の後期/卒業までの半年間)・第3子とも多子世帯の支援の対象外

第1子が就職したあとも、判定に使う住民税の情報が切り替わるまでは、3人として数えられます。数が2人になると、外れるのは第3子だけではありません。同じ世帯の第2子も、多子世帯としての対象ではなくなります。

※試算の前提:2歳差の3人きょうだいで、全員が大学に4年で進み、第1子は卒業してすぐ就職し、就職した年の収入で扶養親族にも、新たに「子ども」に数えられるようになった学生世代にもあたらないとします。浪人や留年、大学院への進学、新たに生まれた子は考えません。授業料の減免は、前期・後期で年額の半分ずつとして計算します。

5. 多子世帯の対象から外れると、いくら変わる?上限額で、国公立は2人で約162万円、私立は約210万円

第2子・第3子が多子世帯の対象から外れた場合に、受けられなくなる授業料の減免の上限額を比べます。第3子の入学金は、入学時には対象のため含めません。

  • 【国公立】第2子 授業料54万円×0.5年 = 27万円、第3子 授業料54万円×2.5年 = 135万円、合計約162万円
  • 【私立】第2子 授業料70万円×0.5年 = 35万円、第3子 授業料70万円×2.5年 = 175万円、合計約210万円

上限額は、減免される最大の額です。実際の授業料がこれより低い場合は、減免される額もその分小さくなります。

ただし、多子世帯の対象から外れても、世帯の収入や資産が基準に当てはまれば、修学支援新制度のほかの区分で支援を受けられる場合があります。

6. 検証:見出しの「3人以上」ではなく、定義の文言まで読んで確かめる

試算では、2歳差の3人きょうだいでは、第1子が就職しても第3子の入学時はまだ対象で、第3子の2年生の後期から、第2子とあわせて対象外になりました。確認するポイントは3つあります。

  • 1つ目は、きょうだいの年の差です。上の子の卒業と、下の子の在学期間が重なるかで、扶養する子の数が変わります。
  • 2つ目は、上の子が扶養から外れる時期です。就職して収入が増えると、扶養親族の数に入らなくなる場合があります。
  • 3つ目は、判定に使う年度です。判定は住民税の情報を使うため、上の子の就職と、数が変わる時期には1年以上の差が出ます。

ただし、実際の判定は、きょうだいの収入や進路、申告の内容で変わります。ここで示した金額は、上限額を使った目安にとどまります。

進学を考える年が近い家庭は、進学先の学校の窓口やJASSOの案内で、きょうだいの状況を伝えて、対象になるかを確かめてみましょう。

7. まとめ

多子世帯の大学の授業料等の減免は、扶養する子が3人以上の世帯で、所得制限なしに受けられます。資産は3億円未満が条件です。国公立は授業料54万円・入学金28万円、私立は授業料70万円・入学金26万円が上限です。

年の差があると、上の子の就職をきっかけに、在学中の下の子がそろって対象から外れることがあります。最新の内容はJASSOや文部科学省の案内で確かめながら、きょうだいの進学と就職の時期を並べてみましょう。

※本記事の内容は、2026年11月4日時点の公表資料をもとにしています。制度や判定の方法は変わる場合があります。最新の情報はJASSOや文部科学省でご確認ください。

参考資料

塚本 奈津子