「学費を抑えられる」というイメージの強い国立大学ですが、相次ぐ授業料値上げの動きに不安や戸惑いを覚える保護者は少なくないでしょう。
岡山大学や香川大学、お茶の水女子大学では2027年4月入学者から学部の授業料が年64万2960円(現行の標準額は年53万5800円)となり、熊本大学は在学生を含む全学年が年59万4600円になります。
同じ「値上げ」でも、新入生だけが対象の大学と全学年が対象の大学があり、大学院や留学生では時期も金額も異なります。この記事では、各大学の公式発表をもとに、2027年春からの改定内容と、進路を考える前に確認したい点を整理します。
※本記事は、2026年10月時点で各大学が公式サイト等で公表している情報をもとに作成しています。授業料の改定内容や対象、適用時期、減免制度の条件などは、今後変更される可能性があります。実際の手続きや進路の判断にあたっては、必ず志望校の最新の公式発表をご確認いただき、不明な点は各大学の窓口にお問い合わせください。
1. そもそも何が変わる?国立大学の授業料「標準額」と120%ルール
国立大学の授業料「標準額」と上限(年額)1/3
出所:文部科学省 参考資料集(国私立大学の授業料等の推移・標準額)(2025年8月25日)、文部科学省 国立大学法人等の現状について(授業料設定ルール)(2025年6月30日)をもとにLIMO編集部作成
国立大学の授業料は、文部科学省が定める「標準額」が年53万5800円です。平成17(2005)年度以降、この標準額は据え置かれてきました。
一方、国立大学が法人化された平成16(2004)年度以降は、各大学の判断で標準額の120%(年64万2960円)を上限に授業料を設定できる仕組みがあります。53万5800円の1.2倍が64万2960円で、差額は年10万7160円です。
東京大学は2025年度の入学者から学部の授業料を年64万2960円としており、今回の改定も同じ上限額を使う大学が目立ちます。
2. 2027年春から授業料を改定する国立大学はどこ?大学別の対象と金額
2027年春から授業料を改定する主な国立大学(対象と金額)2/3
出所:各大学の公式発表をもとにLIMO編集部作成
各大学が公式サイトで公表している内容は、次のとおりです。
- 岡山大学:2026年6月25日の発表によると、日本人学生(学士課程)は2027年4月入学者から年64万2960円になります。留学生は全課程で年133万9500円です。在学生は据え置かれます
- 香川大学:学士課程(昼間コース)は令和9(2027)年度入学者から年64万2960円です。修士課程・博士前期課程・専門職学位課程は令和10(2028)年度入学者からで、在学生の授業料は改定されません
- お茶の水女子大学:学部は2027年4月入学者から年64万2960円になり、博士前期課程は2028年4月入学者からです。博士後期課程の授業料と在学生の授業料は現行のままです
- 熊本大学:令和9(2027)年度の授業料から、学部・大学院とも全学年が年59万4600円になります。年5万8800円の増額で、現行額に対して約11%の上昇です
- 東北大学:2027年4月以降に入学する外国人留学生(学士課程・博士前期課程・修士課程)が対象で、授業料は53万5800円から90万円になります。2026年度までに在籍している留学生は、その課程に在学している間は変わりません
- 筑波大学:2027年度以降に入学する外国人留学生の授業料を改定すると発表しています。大学の発表ページには改定後の金額の記載はありません
新入生だけが対象の大学が多い一方、熊本大学のように在学生も同時に改定される大学もあります。志望校がどちらのタイプかで、家計への影響が変わります。
3. 国立大学の授業料改定、見落としやすい注意点が3つあります
注意点1:「新入生だけ」か「全学年」かは大学で違います
岡山大学・香川大学・お茶の水女子大学は在学生の授業料を据え置きますが、熊本大学は全学年が対象です。「国立大学の授業料が上がる」という見出しだけでは、在学中のきょうだいの学費がどうなるかは分かりません。
注意点2:学部と大学院で時期がずれる大学があります
香川大学とお茶の水女子大学では、学部は2027年度、大学院(博士前期・修士)は2028年度の入学者からです。博士後期課程は、お茶の水女子大学と香川大学では改定の対象外とされています。編入学の場合は、香川大学は2年次編入が2028年度入学者から、3年次編入が2029年度入学者からです。お茶の水女子大学の3年次編入は2029年4月入学者からとされています。
注意点3:留学生は別枠で、金額の差が大きくなっています
岡山大学の留学生は年133万9500円で、標準額との差は年80万3700円です。東北大学は年90万円(差は36万4200円)です。在学中の留学生が進学した場合も据え置かれる大学がありますが、条件は大学ごとに異なるため、公式発表の確認が必要です。
4. 家計への影響はどのくらい?実例計算と減免制度
授業料改定による負担増の目安(年額・4年間)3/3
出所:各大学の公式発表をもとにLIMO編集部作成
たとえば、2027年4月に岡山大学・香川大学・お茶の水女子大学の学部へ入学し、4年間在学した場合、授業料の総額は64万2960円×4年で257万1840円です。現行の標準額(53万5800円×4年=214万3200円)と比べると、4年間で42万8640円の増額になります。
- 学部新入生(64万2960円の大学):年10万7160円増、4年間で42万8640円増
- 熊本大学(全学年):年5万8800円増、4年間在学すれば23万5200円増(在学中の学生は残りの年数分)
- 岡山大学の留学生:年80万3700円増
- 東北大学の留学生:年36万4200円増
負担を和らげる支援策も用意されています。熊本大学は、独自の減免の世帯年収基準を「380万円以下」から「425万円以下」に引き上げるとしており、新たに対象となる世帯には値上げ分が免除されます。国の修学支援制度で授業料が3分の2・3分の1免除となる世帯も、値上げ分が免除される内容です。
岡山大学も、2026年7月9日に「授業料適正化後の教育・学生支援制度」を掲載しています。減免や奨学金の条件は大学ごとに異なり、世帯年収や学業成績などで決まります。志望校の学生支援ページで確認しておきましょう。
5. まとめにかえて|授業料の「額」と「対象」を志望校ごとに確認
2027年春からの国立大学の授業料は、新入生は年64万2960円、熊本大学は全学年が年59万4600円と、大学によって異なります。標準額(年53万5800円)との差は、年5万8800円〜10万7160円です。
進路を考えるご家庭では、まず志望校が「新入生のみ」か「全学年」か、大学院の時期はいつかを公式サイトで確認しましょう。次に、減免制度や奨学金の対象条件を調べておくと安心です。改定の方針は今後ほかの大学でも発表される可能性があるため、最新の公式発表をチェックしてください。
参考資料
- 岡山大学「2027年度入学生からの授業料適正化」について(2026年6月25日)
- 岡山大学 記者発表資料(2026年6月25日)
- 香川大学 令和9(2027)年度以降の入学者の授業料改定について
- 香川大学 令和9(2027)年度からの授業料改定について(2026年8月26日付)
- お茶の水女子大学 2027年度以降入学者の授業料改定について
- 熊本大学 熊本大学における授業料の改定について
- 東北大学 外国人留学生の授業料の改定について(2025年12月1日)
- 筑波大学 外国人留学生の授業料の改定と支援体制のさらなる拡充について(2026年3月24日)
- 文部科学省 参考資料集(国私立大学の授業料等の推移・標準額)(2025年8月25日)
- 文部科学省 国立大学法人等の現状について(授業料設定ルール)(2025年6月30日)