八村の強みはスモールフォワードとパワーフォワードという2つの攻めのポジションを両方こなせるスキル・身体能力を持ち合わせているということです。

悪く言えばどっちつかずの「ポジションレス」という批判もありますが、今のところ、そのどっちつかずが「ヴァーシティリティ(多芸性)」と褒められ、相手チームのディフェンスを惑わし、八村は色んなところから色んな方法でシュートを決めている、と米NBC Sport Washington 記者のチェイス・ヒューズ氏は評価しています。

10月31日に行われたヒューストン・ロケッツとの試合では、3ポイントシュートを3回も決め、大学時代には出せなかった記録を達成しファンを喜ばせました。

NBCワシントンのヒューズ氏によると、このように八村が好調なのは大学時代と違い、他のメンバーとのポジションの役割分担にこだわる必要がなく、ウィザーズではチャンスがあればどこからでもシュートしろという戦略が出来ているからだ、ということです。

そのため八村は、夏のトレーニングでは特に3ポイントシュートの練習に励み、ドラフト時よりも随分上達した、とウィザーズのヘッドコーチ、スコット・ブルックス氏が話している、とのこと。

八村自身も「NBAには(シュートする)スペースが沢山あり、自身の利点を活かせる」と話しています。

もう一つ、ブルックスコーチが評価しているのは、八村がとても練習熱心だということです。チームメイトでNBAスーパースターの1人であるブラッドリー・ビールも、自分自身もかなりの練習熱心で有名だが、八村の練習熱心さと飲み込みの速さに感心しているといいます。

また、ビールは「Ruiがポジションを持たないというのはいいことだ。チームの必要に応じて自由に動かせるということだ」と、ポジティブなコメントをしています。

NBAを生き抜く精神力はあるか

出だしは確かに好調のようですが、アメリカのスポーツビジネスはシビアで選手同士の競争は激しいです。また、アメリカ人はスポーツ観戦ではやたら負けず嫌いが多く、応援するチームを勝たせない選手には厳しくなる傾向があります。

八村の将来は、怪我や不調の時にそういうプレッシャーをどう乗り切って行くかが最大のカギとなることは言うまでもありません。

意外なことに、ベテラン選手ですら目標としてよく挙げることが「精神力をもっと強くしたい」ということです。それだけ、当たり前のようで簡単なことではないのでしょう。

あの、レブロン・ジェームズは18歳からNBAに入り、大きなプレッシャーと厳しい競争の中、怪我もなく自分を見失うことなくあらゆる期待に応え、NBAのキングと呼ばれるまでにのし上がったのは、才能はもちろん、尋常ならぬ精神力の強さ・集中力の高さで観る者を圧倒してきたからでしょう。

今後、八村は予想以上のNBAの厳しさに打ちひしがれる日もくるでしょう。持ち前の勤勉さと多芸性を武器に柔軟で強い精神力を身に着け、いつまでもNBAのコートで活躍してくれることを願います。

【参考】
Rui Hachimura ‘has Japan on his back’: Inside the media storm around his rookie season”The Washington Post
Rui Hachimura may be an ideal fit for positionless basketball” NBCSports Washington
The NBA’s Most Marketable Rookie Not Named Zion Williamson”Forbes

美紀 ブライト