身近に頼れる家族がいない人が亡くなったとき、火葬は誰が行い、費用は誰が負担するのだろうと気になる方もいるのではないでしょうか。

厚生労働省が2026年10月27日に公表した「令和7年度衛生行政報告例」によると、墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓埋法)第9条に基づいて市町村長が行った埋葬・火葬は、全国で12361件(死体・死胎数)でした。

1日あたりにならすと約34件にのぼり、東京都・埼玉県・千葉県・北海道の4都道県だけで全体の約4割を占めています。

本記事では、都道府県別の件数や費用の負担の考え方、火葬までの期間を、一次資料に沿って整理します。

1. 墓埋法第9条とは?自治体が火葬を行うケース

墓埋法第9条は、埋葬や火葬を行う人がいない場合、または誰か分からない場合に、死亡地の市町村長が埋葬または火葬を行うと定めています。

つまり、亡くなった人に引き取り手が見つからないときの「最後の受け皿」として、自治体が火葬を担う仕組みです。

今回の統計は、この第9条に基づいて市町村長が行った件数をまとめたものです。

2. 令和7年度は全国で12361件|都道府県別の上位10位は?

墓埋法第9条に基づく市町村長の埋葬・火葬 都道府県別の上位10位(令和7年度)1/2

墓埋法第9条に基づく市町村長の埋葬・火葬 都道府県別の上位10位(令和7年度)

出所:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」第6表-2をもとにLIMO編集部作成

令和7年度に墓埋法第9条に基づいて市町村長が行った埋葬・火葬は、全国で12361件でした。内訳は火葬が12265件、埋葬が96件です。

件数の多い上位10都道府県は次のとおりです。

  • 1位 東京都:1520件(火葬1520件、埋葬0件)
  • 2位 埼玉県:1510件(火葬1490件、埋葬20件)
  • 3位 千葉県:1123件(火葬1122件、埋葬1件)
  • 4位 北海道:1084件(火葬1084件、埋葬0件)
  • 5位 石川県:907件(火葬907件、埋葬0件)
  • 6位 愛知県:558件(火葬558件、埋葬0件)
  • 7位 栃木県:385件(火葬355件、埋葬30件)
  • 8位 静岡県:372件(火葬358件、埋葬14件)
  • 9位 兵庫県:357件(火葬357件、埋葬0件)
  • 10位 神奈川県:337件(火葬337件、埋葬0件)

たとえば、上位4位までの東京都1520件、埼玉県1510件、千葉県1123件、北海道1084件を合わせると5237件です。全国の12361件の約42%を、4都道県で占めている計算です。

一方、件数が少ない県もあります。和歌山県は7件、鳥取県は12件、徳島県は13件にとどまりました。

なお、埋葬の件数が1件以上あったのは11県で、栃木県の30件と埼玉県の20件が目立ちます。東京都や北海道など、埋葬が0件で火葬だけの地域が大半でした。

3. 「引き取り手なき火葬」費用は誰が負担する?葬祭扶助の上限額も

墓埋法第9条により自治体が火葬を行った場合、その費用の扱いは、行旅病人及行旅死亡人取扱法の規定が準用されます。

一般的には、まず亡くなった人が残した現金などの遺留金品から充てます。足りない場合は、相続人や扶養義務者に費用の弁償を求める流れです。

こうした方法でも賄えない分の扱いは、法令や自治体の運用により異なります。個別のケースは、お住まいの市区町村の担当窓口で確認しておくと安心です。

3.1 生活保護の「葬祭扶助」はいくらまで?

亡くなった人が生活保護を受けていた場合や、葬祭を行う扶養義務者がいない場合などには、生活保護法の「葬祭扶助」が使われることがあります。

厚生労働省の資料によると、令和3年4月時点の葬祭扶助の基準額は、大人で実費の上限21万2000円以内、小人で16万9600円以内でした。

基準額は見直されることがあるため、最新の金額は福祉事務所などで確認が必要です。

4. 知っておきたい注意点が2つあります

4.1 (1)12361件は「墓埋法第9条」分だけ

自治体による火葬の根拠となる法律は、墓埋法だけではありません。厚生労働省の委託調査研究報告書は、行旅死亡人法、墓埋法、生活保護法の3つに基づく火葬等の事務を調査の対象にしています。

今回の12361件は、第6表-2の表題のとおり墓埋法第9条に基づく件数です。ほかの法律に基づく火葬は含まれていません。

4.2 (2)火葬後の遺骨の保管も課題に

同報告書では、引き取り手のない遺骨を1年間に50柱以上預かった自治体は、政令市の5割近く、特別区の3割以上にのぼると記されています。

火葬が終われば終わりではなく、その後の遺骨の保管も、自治体の事務負担になっているとみられます。

5. 火葬までの期間は?平均11.9日・中央値5.5日

墓埋法第9条による火葬までの期間(平均11.9日・中央値5.5日)2/2

墓埋法第9条による火葬までの期間(平均11.9日・中央値5.5日)

出所:厚生労働省委託調査研究事業報告書(令和7年3月)をもとにLIMO編集部作成

厚生労働省の委託調査によると、墓埋法第9条に基づく火葬までの期間は、自治体によって差があります。

  • 「3〜4日」が26.7%で最多
  • 「2日以内」が19.1%
  • 1週間以内に火葬する自治体は約7割
  • 1か月を超える自治体は約7%
  • 平均は11.9日、中央値は5.5日

平均が中央値の倍以上になっているのは、1か月を超えるような長期のケースが平均を押し上げているためとみられます。

6. まとめにかえて|件数と費用の仕組みを知っておく

令和7年度に墓埋法第9条に基づいて市町村長が行った埋葬・火葬は、全国で12361件でした。東京都・埼玉県・千葉県・北海道の4都道県で、全体の約4割を占めています。

費用は、まず遺留金品から充て、足りなければ相続人や扶養義務者への弁償請求が検討されます。生活保護の葬祭扶助には、令和3年4月時点で大人21万2000円以内という上限が設けられています。

制度の詳細は変更されることもあります。身近な人との間で連絡先や希望を共有しておくとともに、気になる点はお住まいの市区町村の窓口に確認してみてください。

参考資料