5. 早期退職で年金はどう変わる?60歳までの10年分で厚生年金の報酬比例部分は年約33.7万円、国民年金保険料は10年で約215万円
早期退職すると、60歳までの厚生年金の加入期間が短くなります。日本年金機構「報酬比例部分」によると、平成15年4月以降の加入期間の報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算します。
- 【60歳まで勤めた場合に加わる報酬比例部分】平均標準報酬額約51.2万円×5.481/1000×120か月で年約33.7万円(月約2.8万円)
一方、日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」によると、会社を辞めてしばらく次の会社に入らない場合は、国民年金の第1号被保険者の手続きをして保険料を納めます。配偶者の健康保険の被扶養者になる場合は、第3号被保険者の手続きをします。
- 【国民年金保険料(令和8年度)】月1万7920円
- 【50歳から60歳までの120か月】約215万円(令和8年度の額のままの場合)
- 【納めなかった場合】65歳からの老齢基礎年金が年約21.2万円少なくなる
- 【全額免除の承認を受けた場合】2分の1で反映され、少なくなるのは年約10.6万円
退職(失業等)で保険料を納めるのが難しい場合は、特例免除を申請できます。
※試算の前提:平均標準報酬額は大学卒の50〜59歳の所定内給与額(男女計)の平均と同じと仮定し、賞与は含めない。老齢基礎年金は令和8年度の満額(月7万608円)で計算。
6. 【検証】試算から見えること:早期退職の退職金の上乗せより大きいのは、60歳までの給与と退職所得控除の伸び
大学・大学院卒の平均で比べると、早期優遇退職の退職金は2266万円で、勤続35年以上の定年退職の2037万円より229万円多くなっています。一方で退職所得控除額は勤続28年で1360万円、勤続38年で2060万円と700万円違い、早期退職のほうだけに税金が約94.2万円かかります。
税金を引いた手取りの差は約134.8万円です。これに対して、60歳までの10年間の所定内給与は約6144万円で、退職金の手取りの差の約45.6倍にあたります。
年金でも、厚生年金の報酬比例部分は年約33.7万円少なくなります。また、60歳までに納める国民年金保険料の約215万円は、早期優遇退職の平均と定年退職の平均の差(229万円)に近い額です。
ただし、早期退職のあとに再就職すれば、再就職先の給与が入り、厚生年金にも加入します。退職金の制度や上乗せの額は勤め先によって大きく異なり、ここでの平均額はあくまで目安です。
早期退職の退職金を考えるときは、受け取る額と税金だけでなく、60歳までの給与、厚生年金の加入期間、国民年金保険料を並べてみると、差の大きさをつかみやすくなります。
7. まとめ
大学・大学院卒の早期優遇退職の平均退職給付額は2266万円で、勤続35年以上の定年退職の平均2037万円より229万円多くなっています。ただし、50歳で辞めると勤続28年で退職所得控除額は1360万円にとどまり、試算では税金が約94.2万円かかりました。60歳までの10年間の給与は、月給だけで約6144万円です。
実際の退職金や上乗せの額は、勤め先の退職金制度で決まります。勤め先の人事担当で退職金の額と勤続年数の数え方を、税務署で退職所得の税額を、ねんきんネットや年金事務所で年金の見込額を確かめることができます。
※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の退職金や税額、給与は、勤め先の制度や勤続年数、退職金の受け取り方によって異なります。詳しくは勤め先や税務署でご確認ください。
参考資料
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」
- 総務省「平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
安達 さやか