早期退職の募集に応じると、退職金が上乗せされることがあります。ただ、早期退職で受け取る退職金には勤続年数で決まる退職所得控除がかかわり、60歳の定年まで勤めた場合と比べると、税金や受け取る給与も変わります。
富裕層や法人のお客さまの資産運用のご相談を受けていた経験からお伝えすると、早期退職は、退職金の上乗せ額だけでなく、60歳までの給与や年金とあわせて、早めに確かめておきたいテーマです。ここでは、大学卒で22歳から勤めた人が50歳で早期退職した場合と、60歳の定年まで勤めた場合を、公的統計の平均額をもとに比べます。
退職金にかかる税金と手取り、60歳までの10年間に受け取るはずだった給与、厚生年金と国民年金への影響を試算しました。
※退職金は、厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」の大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)です。給与は、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の大学卒の所定内給与額(男女計)です。
1. 早期退職の退職金はいくら?大学・大学院卒の早期優遇退職は平均2266万円、勤続35年以上の定年退職は平均2037万円
早期退職の退職金について、厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」をみると、勤続20年以上かつ45歳以上で退職した大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均退職給付額は、退職の理由で次のように違います。
- 【早期優遇退職】2266万円
- 【定年退職(勤続年数の計)】1896万円
- 【定年退職(勤続35年以上)】2037万円
早期優遇退職の平均は、勤続35年以上の定年退職の平均より229万円多くなっています。ただし、早期優遇退職の平均は勤続年数を分けずに集計した値で、45歳から59歳までのさまざまな年齢・勤続年数の退職者が含まれます。
2. 早期退職の退職金にかかる税金は?勤続28年なら退職所得控除は1360万円、平均2266万円なら所得税と住民税で約94.2万円
早期退職の退職金も、国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」によると、他の所得と分けて課税されます。退職所得の金額は「(退職金−退職所得控除額)×2分の1」で、退職所得控除額は勤続年数で決まります。
- 【勤続20年以下】40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
- 【勤続20年超】800万円+70万円×(勤続年数−20年)
- 【1年未満の端数】1年に切り上げ
22歳から50歳まで勤めた勤続28年の場合、退職所得控除額は800万円+70万円×8年で1360万円です。平均2266万円の退職金なら、退職所得の金額は約453万円になります。
- 【所得税と復興特別所得税】約48.9万円
- 【住民税(市区町村民税6%・道府県民税4%)】約45.3万円
- 【税金の合計】約94.2万円
- 【手取り】約2171.8万円
「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に出していないと、退職金の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算することになります。
※試算の前提:大学卒で22歳から勤めた勤続28年。退職金は全額を一時金で受け取り、「退職所得の受給に関する申告書」を提出。所得税は国税庁「退職所得の源泉徴収税額の速算表」、住民税は退職所得の金額の10%で計算。