7. 労災保険とは:業務上の事由、複数業務の要因、通勤による負傷や病気に、迅速かつ公正な保護をする制度
労働者災害補償保険法の第1条は、この制度の目的を、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由、または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して、迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行うことと定めています。
あわせて、被災した労働者の社会復帰の促進、遺族の援護、労働者の安全や衛生の確保等を図るための事業も行います。厚生労働省は、この事業を「社会復帰促進等事業」として紹介しています。
労災保険は、一人でも労働者を使用する事業を適用事業とします(第3条)。ただし、国の直営事業と官公署の事業は、労働基準法別表第一に掲げる事業を除き、この法律を適用しないと、条文に書かれています。
8. 災害は3つに分かれる:業務災害、複数業務要因災害、通勤災害。給付は業務災害と通勤災害で7種類ずつ
条文は、保険給付を、業務災害、複数業務要因災害、通勤災害の3つに分けて定めています。ほかに、二次健康診断等給付が、別の節で定められています。
業務災害の給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類です(第12条の8)。通勤災害の給付は、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付の7種類です(第21条)。
業務災害は、「補償」の字が付き、通勤災害は付きません。名称は違いますが、治療、休業、障害、遺族、葬祭、傷病、介護と、中身の並びは同じです。
労災保険の給付は何種類ある?業務災害と通勤災害の名称を一覧で確認(労働者災害補償保険法を基に整理)
前提条件:労働者災害補償保険法(e-Gov法令検索、2026年10月時点)の第12条の8(業務災害)と第21条(通勤災害)に定められた保険給付を、編集部が表に整理したもの。ほかに二次健康診断等給付がある
| 給付の内容 |
業務災害の名称 |
通勤災害の名称 |
| 治療 |
療養補償給付 |
療養給付 |
| 休業 |
休業補償給付 |
休業給付 |
| 障害 |
障害補償給付 |
障害給付 |
| 遺族 |
遺族補償給付 |
遺族給付 |
| 葬祭 |
葬祭料 |
葬祭給付 |
| 傷病(長期) |
傷病補償年金(療養開始後1年6か月を経過した日に、治っておらず傷病等級に当たるとき) |
傷病年金 |
| 介護 |
介護補償給付 |
介護給付 |
出所:e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」を基にLIMO編集部作成
8.1 【労災保険の保険給付の種類:業務災害と通勤災害の名称】
- 治療:業務災害は療養補償給付、通勤災害は療養給付です。
- 休業:業務災害は休業補償給付、通勤災害は休業給付です。
- 障害:業務災害は障害補償給付、通勤災害は障害給付です。
- 遺族:業務災害は遺族補償給付、通勤災害は遺族給付です。
- 葬祭:業務災害は葬祭料、通勤災害は葬祭給付です。
- 傷病(長期):業務災害は、療養開始後1年6か月を経過した日に、治っておらず傷病等級に当たるときの、傷病補償年金です。通勤災害は、傷病年金です。
- 介護:業務災害は介護補償給付、通勤災害は介護給付です。
表を見ると、7種類は、治療から介護まで、一人の被災者が、段階に応じて受けうる給付の順に並んでいます。休業の給付の金額や、最初の3日間の扱いは、別の記事で整理しています(労災保険の休業補償給付の支給要件)。
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)
中央大学法学部を卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。
現在は「公的社会保障制度(年金・医療・介護)」の仕組みと、「私的資産形成(NISA・iDeCo)」の税制優遇制度を横断的に分析し、生活者のための家計防衛術を提供する編集者として活動している。
各省庁が公表する難解な一次情報(e-Gov法令検索の条文データや、総務省統計局の家計調査など)を読み解き、現役世代からシニア層までを対象に、事実に基づいた実用的な解説記事を継続的に執筆している。
このほか、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』でも情報を発信している。
【経歴・専門性】
前職の専門紙記者時代には、厚生労働省本省および各地方自治体(保険者)を直接取材対象とし、現場の最前線で以下の重要政策の決定プロセスと一次情報に触れてきた。
これらの政策取材を通じ、「制度の複雑化が引き起こす、生活者のサイレントな不利益(申請漏れや制度の不知による経済的損失)」の構造を実務レベルで把握。役所の論理で構築された難解な制度設計を、IT企業時代に培ったデータ分析手法と掛け合わせることで、客観的指標(平均値ではなく中央値を用いた実態把握など)に基づく解説記事を執筆している。
【具体的な実績・保有資格・メディア掲載歴】
公的機関の一次データに依拠した客観的な記事執筆により、Yahoo!ニュース「経済ランキング」において多数の1位を獲得。具体的な執筆・担当領域における実績は以下の通りである。
- 公的年金・給付金領域:日本年金機構の公表資料に基づく「在職老齢年金による支給停止基準」や「年金生活者支援給付金の受給要件」の解説。また、国税庁のガイドラインに沿った定額減税や各種給付金の対象者判定フローの実務的整理。
- 医療・介護保険領域:高額療養費制度などの自己負担限度額の算出方法や、公的保障のセーフティネット範囲の図解解説。
- 資産運用領域:金融庁のNISA特設サイトや、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のデータに基づく税制優遇メリットの数値化。特定の金融商品の購入推奨は行わず、公的年金の不足分を補うための長期積立投資の制度整理に特化。
- 貯蓄・家計管理領域:家計調査などの官公庁統計データに基づいた、年代別・世帯年収別の貯蓄実態の論理的解説、およびインフレ時代におけるリスク管理手法の情報提供。
- 保有資格・実務知見:東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定試験®合格。上場企業での実務経験と当資格で培った「組織マネジメント」や「コンプライアンス・リスク管理」の視点を個人の家計防衛に転用し、ビジネスパーソンが納得できる論理的な解説の裏付けとしている。
【読者へ提供する価値と発信理念】
「役所の論理ではなく、生活者の視点で制度を翻訳する」ことを発信の基本理念としている。
複雑怪奇な社会保障制度においては、制度を知らないこと自体が直接的な経済的損失に直結する。この情報非対称性を是正し、「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」ことが現在の活動における最大のミッションである。
そのため、記事執筆にあたっては個人の主観や推測、投資推奨は避ける。
そのうえで、読者の生活や資産に影響を与える領域であることを自覚し、読者が「国に頼りすぎず、国を賢く利用する」ための正確で安全な判断材料を提供し、生活者とその家族を守るための実用的な知見を届け続けている。