3. 対象者は「事業に使用され、賃金を支払われる者」。正社員に限らず、アルバイトやパートも対象

厚生労働省のページによると、労災保険における労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者です。労働者であれば、アルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係ありません。

この定義には、「賃金を支払われる者」という条件があります。そのため、経営者や個人事業主は、この意味の労働者ではなく、原則として対象外です。ただし、条文には、一定の人が任意で入れる特別加入という仕組みもあります(第33条)。

特別加入の対象には、労働者を使用しないで事業を行う人や、その事業に従事する人、特定の作業に従事する人などが条文に挙げられています。個人事業主の加入の流れは、別の記事で詳しく整理しています。

4. 令和8年の法改正:令和9年4月1日から、遺族への定期給付の要件や時効などが変わる

厚生労働省のページによると、「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第60号)」が、令和8年7月17日に公布されました。令和9年4月1日から、いくつかの点が変わります。

遺族補償給付などのうち、定期的に支払われるものについて、夫にのみ課せられていた支給要件(妻の死亡時に55歳以上、または一定の障害の状態にある者)が撤廃されます。遺族が1人の場合の年額は、現行の給付基礎日額の153日分(55歳以上または一定の障害の状態にある妻は175日分)から、一律で175日分に改められます。

給付基礎日額を1万円と仮定すると、遺族が1人の場合の年額は、153日分で153万円、175日分で175万円です。差は22万円です(編集部試算)。実際の金額は、被災者の給付基礎日額や、遺族の状況で変わります。

ほかに、疾病の性質上、災害補償の事由に該当するかどうかを容易に判断できない疾病として政令で定めるものは、療養補償給付などの請求権の消滅時効が、2年から5年になります。対象の疾病は、政令で定められるため、現時点では、確認できていません。

4.1 【労災保険法等の令和8年の改正:令和9年4月1日から変わる主な点】

前提条件:厚生労働省「労災補償」のページ(令和8年法律第60号、令和8年7月17日公布)の記載を、編集部が表に整理したもの。年額の試算は、給付基礎日額を1万円と仮定した場合の、遺族が1人の場合。実際の金額は個別に変わる1/1

前提条件:厚生労働省「労災補償」のページ(令和8年法律第60号、令和8年7月17日公布)の記載を、編集部が表に整理したもの。年額の試算は、給付基礎日額を1万円と仮定した場合の、遺族が1人の場合。実際の金額は個別に変わる

出所:厚生労働省「労災補償」を基にLIMO編集部作成

  • 夫の支給要件:現行は、妻の死亡時に55歳以上、または一定の障害の状態にある者でした。令和9年4月1日から、要件が撤廃されます。
  • 遺族が1人の場合の年額:現行は給付基礎日額の153日分(55歳以上または一定の障害の状態にある妻は175日分)です。一律で175日分になり、給付基礎日額1万円なら153万円から175万円で、22万円増えます(編集部試算)。
  • 請求権の消滅時効:現行は、療養補償給付などは2年です。政令で定める疾病は、令和9年4月1日から5年になります。
  • 特別加入団体:現行は、要件を通達等で定めています。令和9年4月1日から、要件が法令に規定され、業務改善命令なども可能になります。
  • 不服申立て:現行は、社会復帰促進等事業の決定は行政不服審査法の対象です。令和9年4月1日から、労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象になります。
  • 農林水産業の小規模な個人経営:現行は、一部は任意適用です。公布の日から5年以内の政令で定める日から、一部も適用事業になります。厚生労働省の政省令の諮問資料では、この日は令和13年4月1日とされています。

表を見ると、令和9年4月の改正は、遺族の給付、時効、特別加入団体、不服申立てと、広い範囲に及びます。ただし、令和9年4月1日より前に生じた事由に、どの規定が適用されるかは、確認した資料に書かれていません。

5. 【編集者の視点】

今回、厚生労働省のページを読んで、気づいたのは、令和9年4月の改正の項目が、夫の要件の撤廃や年額の統一など、遺族の側に立った見直しを含んでいる点です。男女で違っていた要件が、一律に近づく方向です。

そのため、これまで「夫の場合は対象外になる」と聞いていた人は、令和9年4月以降の扱いを、改めて確認する余地があります。ただし、施行日より前に亡くなった場合の扱いは、確認できていません。

この記事は、2026年10月時点で確認できた範囲の整理です。改正の詳しい内容は、政令や省令で定められる部分もあります。個別のケースは、必ず、所轄の労働基準監督署に確認してください。

6. まとめ

労災保険は、仕事中や通勤中のケガや病気、障害、死亡に対して、国が給付を行う制度です。一人でも労働者を使用する事業は適用され、アルバイトやパートも、労働者であれば対象です。費用は、原則として事業主が負担する保険料でまかなわれます。

令和8年法律第60号により、令和9年4月1日から、遺族への定期給付の要件や、時効などが変わります。個別の判断は、所轄の労働基準監督署や、会社の担当者に確認してください。