労災保険(労働者災害補償保険)は、仕事中や通勤中のケガや病気、障害、死亡に対して、国が給付を行う制度です。厚生労働省のページによると、その費用は、原則として事業主の負担する保険料でまかなわれています(2026年10月時点)。
仕事中のケガは、どこまでが労災なのか、パートやアルバイトでも使えるのか、自分が保険料を払っていないのに使ってよいのかなど、迷う点が多い制度です。令和8年には、労働者災害補償保険法等の改正も公布され、令和9年4月から変わる点もあります。
この記事では、前半でよくある疑問に、条文と厚生労働省の資料、編集部の試算で答えます。続けて、対象者と、令和9年4月の改正を確認します。
1. よくある疑問:アルバイトで働いていて、仕事中にケガをした。自分も労災を使えるのか。保険料を払っていないが、受け取ってよいのか
「飲食店でアルバイトをしています。仕事中にケガをしましたが、店長から『うちはバイトに労災は出ない』と言われました。保険料を払った覚えもありません。労災は、自分も使えるのでしょうか」。この疑問は、編集部が想定したもので、実際の問い合わせではありません。
同じ迷いは、アルバイトやパートで働く人に、当てはまりえます。答えは、次の3点です。
- 厚生労働省のページによると、労災保険は原則として、一人でも労働者を使用する事業は、業種や規模を問わず、すべてに適用されます。労働者であれば、アルバイトやパートタイマーなど、雇用形態は関係ありません
- その費用は、原則として事業主の負担する保険料でまかなわれます。働く人が、自分で保険料を払う仕組みではありません(厚生労働省)
- 給付は、業務災害と通勤災害で、それぞれ7種類が条文に定められています。請求に基づいて行われるため、使うかどうかは、請求の手続きで決まります(労働者災害補償保険法)
2. 確認したい3つの「もし」を、条文と厚生労働省の資料で確認
読者の方が気にしそうな「もし」を、労働者災害補償保険法と、厚生労働省の資料で確認します。いずれも、ご自身の扱いを確定するものではありません。
- もし、会社を辞めたあとだったら:保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない、と条文にあります(第12条の5)。また、保険給付を受ける権利は、譲り渡したり、担保にしたり、差し押さえたりすることができません
- もし、通勤の途中だったら:通勤災害にも、療養給付、休業給付など7種類の保険給付があります(第21条)。業務災害の給付とは、名称が異なります
- もし、複数の会社で働いていたら:条文は、事業主が同一でない二以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)を定めています。二以上の事業の業務を要因とする事由も、保護の対象です(第1条)
ここからは、この答えの前提になる仕組みを、順に確認します。対象者、令和9年4月の改正の順です。