10. 【編集者の視点】

特例の条件を通知で読むと、本人の同意が、前提に置かれていることが目立ちます。保険料が下がる一方で、将来受け取る公的な給付の額や、手当金に影響が出るため、同意を取る手順が、通知の中に、きちんと組み込まれているのだと、編集部は読みました。

試算では、保険料の年間の差より、手当金の12か月後の差のほうが大きくなりました。ただし、手当金は、病気やけがで休んだときにしか受け取りません。保険料は毎月下がります。どちらを重く見るかは、人によって違います。

勤務先が特例の手続きを取るかどうかは、通知からは分かりません。働き方を変える前に、勤務先の担当部署に、手続きの有無と、本人の同意の取り方を、確認してみることが、最初の一歩になると思います。

※本記事は、編集部が厚生労働省の公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

11. 標準報酬月額が下がると、高額療養費の区分も変わりうる

厚生労働省の高額療養費のページによると、標準報酬月額は、保険料と、高額療養費の自己負担限度額の算定の基礎になります。標準報酬月額が下がると、高額療養費の所得区分が下がる場合があります。

令和9年8月からは、70歳未満の区分が13段階に細分化される予定です。たとえば、標準報酬月額が36万円から41万円の区分は、医療費100万円(窓口3割)の月の自己負担が、編集部の試算で10万4830円です。28万円から34万円の区分は9万2940円で、差は1万1890円です。

令和9年1月から7月までは、36万円も28万円も、同じ区分(28万円から50万円)で、月額上限は変わりません。区分の違いが出るのは、令和9年8月以降です。試算の前提は、医療機関が1か所で、直近12か月に高額療養費の該当がないことです。

特例の対象や、保険者ごとの運用、区分の判定は、加入している保険者に確認してください。健康保険組合の保険料率や手当金の扱いは、協会けんぽと違う場合があります。

12. よくある質問

12.1 Q. 標準報酬月額の特例は、いつから始まりますか?

令和9年1月1日から適用されます(厚生労働省の通知)。

12.2 Q. どんな人が対象ですか?

療養、育児、介護と仕事を両立するための就労調整で報酬が急減し、標準報酬月額が2等級以上低下して、3か月以上続く見込みの人です。本人の書面同意も必要です(厚生労働省の通知)。

12.3 Q. 1等級だけ下がる場合は、対象になりますか?

対象になりません。2等級以上の低下が条件です(厚生労働省の通知)。

12.4 Q. 自分で申請できますか?

事業主が、被保険者報酬月額変更届(特例改定用)と申立書兼同意書を、通知に定められた事務センター(または事務所。健康保険組合の場合は健康保険組合にも)に提出します。本人が直接申請する制度ではありません(厚生労働省の通知)。

12.5 Q. どんな場合に対象外になりますか?

報酬が減った初月の支払基礎日数が17日未満の場合、初月に報酬が一切ない場合、初月の翌月に資格を失う場合、被保険者期間が初月を含めて3か月未満の場合です(厚生労働省の通知)。

12.6 Q. 特例で、保険料はいつから変わりますか?

報酬が減った月の翌月から、標準報酬月額を改定できます(厚生労働省の通知)。保険料にいつ反映されるかの細かい扱いは、勤務先と保険者に確認してください。

12.7 Q. 傷病手当金に影響はありますか?

影響があります。通知にも、傷病手当金と出産手当金に影響が出ることを、本人が理解して同意する、と書かれています。手当金は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均で決まるため、改定後に時間がたつほど下がります(協会けんぽ、厚生労働省)。

12.8 Q. 高額療養費にも影響しますか?

標準報酬月額は、高額療養費の自己負担限度額の算定の基礎になります。区分が変わる場合があります。詳しくは、加入している保険者に確認してください(厚生労働省)。

参考資料

齊藤 慧