3. 妻が受け取れなくても、子どもは遺族厚生年金を受け取れる

妻が年収850万円以上で遺族年金の対象にならなくても、子どもが受け取れる場合があります。

3.1 遺族厚生年金は、妻の次に子が受け取る順位

遺族厚生年金を受け取れる遺族には順位があり、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です。厚生年金保険法では、子への遺族厚生年金が支給停止になるのは、配偶者が遺族厚生年金を受け取る権利を持っている間とされています。

妻が生計維持の要件を満たさず、遺族厚生年金を受け取る権利がない場合は、18歳到達年度の末日までの子が遺族厚生年金を受け取ることになります。

3.2 遺族基礎年金は2028年4月から見直し

一方、遺族基礎年金は、子と生計を同じくする父または母がいる間は、子に支給されません。母が年収850万円以上で受給権がなくても、子と一緒に暮らしていれば、子の遺族基礎年金は止まります。

令和7年の年金制度改正で、この扱いが見直されました。2028年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいても、子が遺族基礎年金を受け取れるようになります。厚生労働省の資料でも、対象となる例として年収850万円以上の妻のケースが挙げられています。

同じ改正では、2028年4月から、60歳未満で配偶者を亡くした子のない人などの遺族厚生年金が、原則5年間の有期給付に見直されます。厚生労働省の資料では、この有期給付については年収850万円未満という収入要件を廃止し、年収850万円以上の人も受け取れるようにするとしています。対象や時期は段階的に変わるため、自分が当てはまるかは年金事務所で確認しましょう。

4. 3つのケースで比べる

夫が40歳で会社員として在職中に亡くなり、10歳と8歳の子がいる場合で比べます。夫の平均標準報酬額は男性の1人当たり標準報酬額(年538万4千円)を月額にした約44.9万円とし、厚生年金の加入期間は300月とみなして計算しました(2026年度の年金額)。

4.1 ケース1:妻の年収800万円

  • 遺族基礎年金と子の加算(2人分):134万4900円
  • 遺族厚生年金:55万3307円
  • 合計:年188万8207円(月約15万7351円)を妻が受け取る

4.2 ケース2:妻の年収900万円

  • 妻は受け取れない
  • 子が遺族厚生年金55万3307円(月約4万6109円)を受け取る
  • 子の遺族基礎年金は、母と暮らしているため支給されない(2028年3月まで)

ケース1との差は年133万4900円です。2028年4月以後は、子の遺族基礎年金(2人で年109万1100円)も受け取れるようになり、合計は年164万4407円になります。

4.3 ケース3:妻の年収900万円で、5年以内に退職する予定

就業規則などで、おおむね5年以内に年収が850万円未満になると認められれば、ケース1と同じく妻が遺族年金を受け取れます。

年収850万円を超えると、受け取れる遺族年金は大きく減る2/2

年収850万円を超えると、受け取れる遺族年金は大きく減る

出所:日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」などを参考にLIMO編集部作成

子が18歳到達年度の末日を過ぎると、子への遺族年金は終わります。ケース2の妻は、もともと遺族年金の受給権がないため、中高齢寡婦加算も受け取れません。

5. 年収850万円前後の共働き世帯が考えておきたい備え

妻の年収が850万円前後の共働き世帯は、遺族年金をあてにしすぎないことが大切です。次の点を確認しておきましょう。

5.1 遺族年金をあてにせず、生命保険などで備える

妻の年収が850万円以上なら、夫が亡くなっても妻自身は遺族年金を受け取れません。子どもの教育費や住宅ローンの返済など、夫の収入がなくなったときに必要なお金を、生命保険や貯蓄でどこまで賄えるか確認しておきましょう。

5.2 勤務先の定年や退職の予定を確認しておく

定年が近い場合など、5年以内に収入が下がる事情があれば、遺族年金の対象になる可能性があります。就業規則の定年の規定など、事情を示せる書類を確認しておくと安心です。

5.3 夫婦それぞれの年収を把握しておく

判定に使うのは、夫が亡くなったときの前年の収入です。夫婦の年収が逆転している場合や、妻の年収が850万円前後で年によって上下する場合は、夫婦で一度話し合っておきましょう。

6. まとめ

遺族年金を受け取れるかどうかは、夫が亡くなった時点の妻の年収で判定されます。年収850万円以上だと、原則として妻は遺族年金を受け取れません。夫の死亡後に仕事をセーブして収入が下がっても、あとから受け取れるようにはなりません。

ただし、5年以内に収入が下がる事由があれば例外となり、妻が対象外でも子どもは遺族厚生年金を受け取れます。2028年4月からは、子どもが遺族基礎年金も受け取れるようになります。

年収の高い共働き世帯ほど、遺族年金をあてにせず、生命保険や貯蓄での備えを夫婦で確認しておきましょう。個別の事情がある場合は、年金事務所で相談してみてください。

参考資料

和田 直子