実家の裏山や田畑について、どのように管理を続けるべきか悩む人が増えています。将来の相続を見据え、土地を手放す手段を調べる場面も珍しくありません。
法務省は2026年10月19日に「相続土地国庫帰属制度の統計」を更新しました。
同資料には2026年9月30日現在の速報値が掲載されています。公的データをもとに、制度の利用状況や土地の引き取りに関する実態を確認していきましょう。
1. 相続土地の国庫帰属、申請6125件・帰属3231件 最新の実数を見る
1.1 実家の裏の畑、このままにしていいのかな。そう思ったときに見たい数字
相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国へ引き渡せる公的な制度です。2023年4月27日の制度開始以来、全国で多くの申請が寄せられていました。
法務省の発表によると、2026年9月30日現在の累計申請件数は6125件に達しています。内訳を見ると、田・畑が2372件、宅地が2135件、山林が928件、その他が690件でした。
一方、国への帰属が承認された件数は累計で3231件を記録しています。帰属の内訳は宅地が1208件、農用地が1013件、その他が781件、森林が229件という構成でした。
申請件数と帰属件数の間には、審査進行中や取下げ、不承認などの数値が含まれます。そのため、単純な比率計算で承認率を判断することは避ける配慮が必要です。申請時と帰属時で地目の区分名称が異なる点にも注意しておきましょう。
2. 却下86件・不承認103件・取下げ1162件 引き取ってもらえないのはどんな土地?
2.1 申請したのに引き取ってもらえない土地には、どんな共通点がある?
制度を利用すれば、すべての土地を引き取ってもらえるわけではありません。同資料によると、申請が却下された事例は累計で86件存在しました。
却下理由の最多は添付書類の不提出で37件を占める状況です。次いで境界が明らかでない土地が23件、通路として使われている土地が22件ありました。
さらに審査を経て不承認となった事例も累計で103件報告されています。不承認理由の第1位は、地上に管理や処分を阻害する工作物等がある土地で49件でした。国による追加整備が必要な森林が37件、金銭債務を伴う土地が12件と続いています。
引き取り不可となる要件には、審査前の段階で弾かれる「却下要件」と、実地審査等を経て判断される「不承認要件」が法令上明確に区分されています。建物の存置や境界不明、有害物質の存在(土壌汚染等)などは事前に申請自体が受け付けられない「却下事由」となり、放置された工作物や追加整備が必要な森林などは実地審査で弾かれる「不承認事由」となります。自らの土地がどちらに該当しそうか、事前の確認が不可欠です。
一方、申請が途中で取下げられた件数は累計で1162件に上りました。取下げ理由の中で最も多いのは、有効活用の見込みが生じたケースで595件です。
国庫帰属の手続きを進める過程で、第三者への売却や貸与の道が開ける場面も見られました。手放す検討を進めることが、土地の利活用を再考する引き金となる可能性を示しています。
3. 申請前に知っておきたい費用 審査手数料と負担金
3.1 「国に引き取ってもらえば無料」ではない。かかるお金は何がある?
国庫帰属制度を利用するにあたり、無償で手放せるわけではありません。手続きには申請時と承認後の2段階で費用が発生する規定となっています。
まず申請時には、土地1筆につき1万4000円の審査手数料の納付が必要です。承認を受けた後は、10年分の土地管理費に相当する負担金を納める義務が生じます。
宅地、田・畑、その他の雑種地等は原則として定額20万円が設定されています。市街地内の宅地や農地、および森林については、面積に応じて負担金が算定される例外規定が設けられている形です。
隣接する2筆以上の土地をまとめて申請する際、合算して算定できる特例も存在します。具体的な納付額については、事前に法務局の窓口へ確認を行う手順が確実でしょう。
4. 【深掘り解説】あえて「申請を取り下げる」人が1000件超?国庫帰属の準備がもたらす意外なメリット
法務省の最新統計によると、制度開始からの累計で1162件もの「申請の取下げ」が発生しています。一見すると「手続きを断念した失敗例」のように見えますが、その内訳を見ると非常に興味深い実態が浮かび上がります。
取下げ理由の最多は、全体の半数以上を占める「売却・貸与等の有効活用の見込み(595件)」です。なぜ、国庫帰属を申請した後に売却や貸与へ切り替えることができたのでしょうか。
4.1 境界確定と現地整理が「処分できない土地」を「買える土地」に変える
国庫帰属制度を利用するためには、隣地との境界確定や所有権の整理、現地の状況把握が必須条件となります。それまで長年放置され「境界も境界標も不明で誰も買えなかった土地」が、制度申請の準備プロセスを経ることで、法的にクリーンで取引可能な土地へと生まれ変わります。
その結果、境界が明確になったことで隣地の所有者が買い取ってくれたり、近隣の事業者が借り手として名乗りを上げたりする事例が相次いでいます。
1筆あたり1万4000円の審査手数料は申請時に納付が必要ですが、承認後に発生する高額な負担金(原則定額20万円〜)を国へ納める前段階で民間での処分・活用が手仕舞いできれば、所有者にとっても費用や手間を大きく抑えられる結果となります。国庫帰属はあくまで「最後の受け皿」と捉え、まずは境界の明確化や現状整理から始めることが、いらない土地を賢く手放す第一歩と言えます。
5. まとめにかえて|「いらない土地」をどうするかは、相続の前から話し合える
相続土地国庫帰属制度の利用状況と注意点について整理を深めてきました。
- 最新累計で申請は6125件・帰属は3231件に達している:制度の利用が着実に進んでいます。
- 建物や境界不明な土地は「却下」、工作物の存在等は「不承認」の原因となる:事前確認と現地調査が不可欠です。
- 1筆1万4000円の審査手数料に加え、承認後には原則定額20万円(例外あり)の負担金が必要:事前の試算が求められます。
実家の土地を放置せず、登記事項や境界の状態を確かめる最初の一歩を踏み出しましょう。法務局の事前相談やWeb相談窓口を活用し、家族で将来の方針を話し合ってみてください。