「EQ(イーキュー)」をご存知でしょうか。「心の知能指数」と呼ばれることもあります。いま、EQを見直す動きが広がっています。これまで、人の能力をはかる基準としてIQ(学力や偏差値)がつかわれていました。IQの高い人が成功するなら、入学難易度の高い有名大学出身者が有利なはずですが実際にはそうではありません。

むしろ、IQよりも、達成意欲やストレス耐性、自信やコミュニケーション力などの、EQ(心の知能指数)の重要性が多くの研究結果から明らかになっています。

私は、以前、EQ理論を提唱した、イェール大学のピーター・サロベイ博士(第23代イェール大学学長)、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士と共同研究をおこなっていた研究機関に所属していたことがあります。そこでは、EQを検証したり、展開する部門の責任者として普及につとめていました。

EQはどんなことに使えるのか

文科省の平成30年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題」に関する調査結果によると、全国の小中高校などで平成30年度に認知されたいじめが前年度から約13万件増加し、54万3933件と過去最多を更新したことが明らかになりました。小学校で前年より3割以上も増加(42万5844件(前年度31万7121件)。心身に大きな被害を受けるなどの「重大事態」も602件で、過去最多となっています。

以前は悪ふざけと考えられていたものが、イジメに派生していることも考えられ喫緊の対策が求められています。

人間には感情があります。ところが、感情を上手にコントロールすることは意外に難しいことです。子どもであれば、「キレやすい子ども」という表現を聞くことがあります。自分の気に入らない事があったり、思い通りにいかない事があると、大声を出したり、物を壊したり、暴れたり、時には暴力を振るったりするいわゆる「キレやすい子」が増えています。

EQの高い人は、対人関係能力に優れ、自分の感情を適切に把握しコントロールすることができます。そのため、教育現場のでニーズが高まっています。子どもがキレた場合、親はどのように対処すればいいでしょうか。EQを高めるための関わり方について考えてみました。

人間の表情観察

アメリカで行われているEQの訓練に「エモーショナルーポーカー」というゲームがあります。トランプの代わりにいろいろな人の顔写真が印刷されているカードを使用して、印刷された顔の表情から同じ感情と思われるカードを選ぶというものです。たとえば「喜び」「哀しみ」「怒り」「憎しみ」「安心」「不安」などのカードを用意して、ペアとして扱うというポーカーゲームと考えてください。

これは本や雑誌でも可能です。載っている人の表情を見て、その人がどんな感情なのかを推測します。芸能人の表情などからはさまざまな感情が読み取ることができるはずです。たくさんの表情を見るうちに自然と人の感情がわかるようになります。

人間ウォッチング

写真などを見て、どんな感情を表しているかが判断できるようになったら、今度は、実際に人を見て、その人の感情の状態を読み取る「人間ウォッチング」もいいでしょう。人の表情を観察することで同じ効果が得られます。

この方法は学校で応用できます。先生や友達が、どのような感情のときにどんな表情になるかを知ることは、相手にどう対応するかの実践にもつながります。「先生は○○君のことが好きではないな」「友達の高橋さんは、A組の○○君が本命かな」といったことがなんとなくわかります。人を見ることの重要性に気がつけば、人とのコミュニケーションに役立つはずです。

子どもが勉強を好きになるきっかけとは