入所した親が使っているマイナ保険証を、施設や家族が預かって使ってよいのか、迷う方もいると考えられます。令和8年8月1日からは、後期高齢者の資格確認書の交付も見直されました。

ここでは、厚生労働省と総務省の資料、神奈川県・横浜市と東京都後期高齢者医療広域連合の案内をもとに、「施設や家族は、入所した親のカードで何をしてよいか」を場面ごとに整理します。加入先ごとに運用が異なるため、細目は入所者の加入先で確認してください。

1. 入所した親のカードは、入所契約や預かり証などの合意があれば施設が預かれる

厚生労働省の資料は、マイナンバーカードは本人による管理が基本としたうえで、入所契約や預かり証等の合意に基づき、施設側で入所者のカードを管理することも可能だと書いています。

管理の例は、鍵付きのロッカー等での保管、出し入れした日時など管理の記録、カードを管理する職員の範囲を定めておくことです。総務省のマニュアルには、本人の同意を得て家族が管理する方法も書かれています。資格確認書は、従来の健康保険証と同様に、施設等で管理できます。

2. 暗証番号は、施設が管理しなくてよい

暗証番号は、本人確認のために重要なものなので、原則として法定代理人以外の者に知らせることは適当ではない、と厚生労働省の資料は書いています。施設側でカードを預かる際に、暗証番号までを管理することは求められていません。

暗証番号がなくても、医療機関の受診時には、顔認証または医療機関のスタッフによる目視確認で受付できます。入所者に、マイナ保険証の利用登録の解除を求める必要もありません。

目視確認になるのは、顔認証がうまくいかず暗証番号も忘れた場合や、認知症・障害や体調の悪化で入力が難しい場合などです。暗証番号は3回間違えるとロックされるため、思い出せないときは、スタッフに声をかけるよう案内されています。

3. 本人の希望とやむを得ない事情があれば、家族や職員がカードをリーダーに置く支援もできる

厚生労働省の資料のよくある質問には、車いすに乗っている、視覚障害があるなど、本人がカードをリーダーに置くことが難しいやむを得ない事情があり、本人から希望があった場合は、本人の前で、家族や介助者、施設職員が置く支援を行っても差し支えない、と書かれています。職員が本人の代わりに暗証番号を入力してよい、とは書かれていません。

3.1 【施設に入所した親のカードで、施設や家族がしてよいことは?預かる・暗証番号・受診の支援・申請の4つの場面を早見表で確認】

場面ごとの、してよいことと条件

  • カードを預かる:施設が管理できる(本人の同意を得て家族も可)。入所契約や預かり証等の合意が必要
  • 暗証番号を管理する:施設が管理することは求められていない。原則、法定代理人以外には知らせない。目視確認で受診できる
  • 受診でカードをリーダーに置く:家族・介助者・施設職員が支援してよい。本人の希望とやむを得ない事情があり、本人の前で行う場合
  • 資格確認書を申請する:法定代理人のほか、介助者や施設が代理申請できる。保険者によって申請書・提出先が違う

4. 暗証番号が不安なら、顔認証マイナンバーカードに切り替えるか、資格確認書を持つ方法がある

暗証番号の管理に不安がある入所者の選択肢は、資料に2つ書かれています。1つ目は、顔認証マイナンバーカードへの切り替えで、本人確認を顔認証または目視確認に限り、暗証番号の設定を不要にしたカードです。2つ目は、利用登録を解除せずに資格確認書を申請し、マイナ保険証と資格確認書の2枚を持つ方法です。資格確認書で受診するときは、過去の薬や特定健診の情報を医療機関・薬局と共有できません。

5. 資格確認書の代理申請は、横浜市の様式では、同一世帯の親族以外は委任状が要る

マイナ保険証を持っていても、介助者などが同行して資格確認を補助する必要がある要配慮者は、申請により資格確認書を受けられます。福祉施設等の利用者は、施設側で代理申請ができます。

横浜市の施設向けの案内では、後期高齢者の医療保険の場合、専用の申請書に記入し、本人確認書類の写しを同封して、住所の区へ送るとされています。本人や同一世帯の親族以外が代理人で申請する場合は、委任状が必要です。「施設が代理申請できる」ことと、「書類なしで申請できる」ことは、別の話です。

5.1 【資格確認書の申請に何が要る?本人・同一世帯の親族・施設職員などの代理人・成年後見人の4つの場合を横浜市の案内で比較】

横浜市の後期高齢者医療の案内(令和8年8月20日更新)を基に整理。保険者によって様式や提出先が異なる2/2

横浜市の後期高齢者医療の案内(令和8年8月20日更新)を基に整理。保険者によって様式や提出先が異なる

出所:横浜市「高齢者施設・障害者施設のご担当者様へ」を基に作成

申請する人ごとの、必要な書類

  • 本人:申請書、本人確認書類の写し
  • 同一世帯の親族が代理:申請書、本人と代理人の本人確認書類の写し
  • 同一世帯以外の人(施設職員など)が代理:上記に加えて委任状
  • 成年後見人などが代理:申請書、本人と代理人の本人確認書類の写し、委任状に代えて登記事項証明書等の写し

6. 令和8年8月以降に届く書類は、東京都は利用実績、横浜市の案内は利用登録で分ける

東京都後期高齢者医療広域連合の案内では、令和8年8月1日から、85歳以上の全員と、84歳以下でマイナ保険証を普段から利用していない人に資格確認書が交付されます。「普段から利用している」とは、過去1年間に6回以上、かつおおむね直近3か月以内に1回以上利用していることで、この条件を満たす84歳以下の人には資格情報のお知らせが交付されます。

横浜市の案内(神奈川県の後期高齢者の医療保険の運用)では、分け方が違います。資格情報のお知らせは、75〜84歳で利用登録がある人です。資格確認書は、85歳以上の全員と、75〜84歳で利用登録がない人などです。

6.1 【令和8年8月以降に届く書類は地域で違う?東京都は利用実績、横浜市の案内は利用登録で分ける75〜84歳と85歳以上の扱いを比較】

対象ごとの、交付される書類

  • 東京都の84歳以下:過去1年に6回以上、かつ直近3か月に1回以上利用していれば資格情報のお知らせ、それ以外は資格確認書
  • 横浜市の案内の75〜84歳:利用登録があれば資格情報のお知らせ、なければ資格確認書
  • 東京都・横浜市の案内の85歳以上:全員が資格確認書

同じ施設でも、入所者の加入先が違えば、分け方が違う場合があります。

7. まとめ

  • 入所した親のカードは、入所契約や預かり証等の合意があれば、施設が預かれます
  • 暗証番号は施設が管理しなくてよく、暗証番号がなくても目視確認で受診できます
  • 本人の希望とやむを得ない事情があれば、家族や職員がカードをリーダーに置く支援もできます
  • 資格確認書は施設が代理申請できますが、横浜市の様式では、同一世帯の親族以外は委任状が必要です
  • 令和8年8月以降の書類の分け方は、東京都は利用実績、横浜市の案内は利用登録です

預かることと、暗証番号を渡すことは、別の話です。入所の前後に、預かりの方針と、資格確認書を申請するかを、施設の担当者と入所者の保険者に確認してください。

8. 【編集者の視点】

「施設に預けると、暗証番号まで渡すことになるのでは」と、心配になる方もいると思います。国の資料は、預かりと暗証番号の管理、受診の支援を、別々に書いています。

入所のときに決めておくことは、3つあります。預かり証に何を書くか、カードの出し入れの記録をどうつけるか、暗証番号を誰が知るかです。法定代理人が管理するのか、顔認証マイナンバーカードにするのかを、先に話し合うと迷いが減ります。

9. 検証:「預けてよいか」より、「誰が何を決めたか」を残すことが分かれ目になる

高齢の方の保険や介護の手続きを取材してきた経験からいえば、施設での困りごとは、「預けてよいか」そのものより、「誰が何を決めたかが残っていない」ことから起きやすいと考えています。

国の資料が示す条件は、預かりは合意、受診の支援は本人の希望と、「誰かの意思を確かめる」形でそろっています。横浜市の申請の案内も、本人確認書類や委任状を求めています。預かり証や委任状は、その意思を残すための書類と読めます。

一方、令和8年8月以降の書類の分け方は、加入先で違いました。施設の入所者の加入先がそろっているとは限らないため、全員に同じ説明をするだけでは足りない場面が出てきます。

私は、預かり証に暗証番号の扱いまで書き、加入先ごとの書類の扱いを入所者ごとに確かめる運用が、現場では役に立つと考えています。

10. 要配慮者は、マイナ保険証を持っていても資格確認書を申請でき、更新時の申請は不要

マイナンバーカードでの受診等が困難な、高齢者や障害者などの要配慮者は、マイナ保険証を持っていても、申請により資格確認書を受けられます。更新時の申請は不要で、有効期限は5年以内で保険者が設定します。

病態の変化などで、顔認証付きカードリーダーをうまく使えなくなったときも、資格確認書を申請して使います。登録の解除の仕組みはこちらの記事で、令和8年8月以降の交付ルールはこちらの記事で整理しています。

11. 【編集者の視点】

入所者の状態は、時間とともに変わることがあります。暗証番号の入力ができなくなっても、目視確認で受診できます。資格確認書を申請しておくと、2枚の選択肢が手元に残るため、早めに準備しておく価値があります。

※本記事は、編集部が厚生労働省と総務省、自治体・広域連合が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

12. よくある質問

12.1 Q. 暗証番号を施設に教える必要はありますか?

A. 暗証番号は、原則として法定代理人以外の者に知らせることは適当ではないとされています。施設側でカードを預かる際に、暗証番号までを管理することは求められていません。

12.2 Q. 施設の都合で、マイナ保険証の登録を解除する必要はありますか?

A. 必要ありません。暗証番号を施設が管理していなくても、受診時は目視確認で受付できます。登録を解除しなくても、資格確認書を申請して交付を受け、2枚を手元に持てます。

12.3 Q. 入所者の加入先が分からないときは、どこに聞けばよいですか?

A. 入所者個々の問い合わせは、加入している保険者に確認するよう、横浜市の案内に書かれています。後期高齢者の医療保険の場合は、資格を担当している自治体で、横浜市では住所の区役所の担当課です。

参考資料

齊藤 慧