警察官を名乗る電話で「あなたの口座が犯罪に使われています」と告げられたら、冷静でいられる自信はあるでしょうか。

2026年10月2日、警察庁が公表した「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」では、ニセ警察詐欺の被害額は728.6億円となり、前年同期比で27.0%増えました。

一方で認知件数は6346件と、前年同期より274件(4.1%)減っています。件数が減っても被害額が増える背景を、警察庁の資料から確認します。

1. ニセ警察詐欺とは? 警察官をかたる電話から始まる手口

ニセ警察詐欺とは、警察官などをかたって捜査を装い、金銭をだまし取る手口です。

警察官を名乗る電話から始まり、「口座が犯罪に使われている」と不安をあおる流れが典型です。

その後「金融調査」などと称して、振込や現金の受け渡しを求められます。

警察庁によると、令和8年上半期の当初接触ツールは電話が98.2%(4385件)を占めました。

電話のうち携帯電話は2580件で、電話全体の58.8%です。

警察庁は、50代以下では携帯電話、60代以上では固定電話が半数以上を占める傾向も示しています。

2. ニセ警察詐欺の被害額はいくら? 件数は減ったのに前年同期比27.0%増

ニセ警察詐欺の認知件数と被害額(令和8年8月末・前年同期比)1/5

ニセ警察詐欺の認知件数と被害額(令和8年8月末・前年同期比)

出所:警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとにLIMO編集部作成

令和8年8月末のニセ警察詐欺は、認知件数が6346件で、前年同期比274件(4.1%)の減少でした。

一方で被害額は728.6億円に上り、前年同期より155.1億円(27.0%)増えています。

  • 認知件数:6346件(前年同期比274件・4.1%減)
  • 被害額:728.6億円(前年同期比155.1億円・27.0%増)
  • 特殊詐欺全体:29687件・2360.7億円
  • 全体に占める割合:件数21.4%・被害額30.9%(編集部算出)

特殊詐欺全体の被害額2360.7億円のうち、ニセ警察詐欺はおよそ3割を占めます。

たとえば728.6億円を6346件で割ると、1件あたりの被害額は約1148万円です。前年同期は573.5億円・6620件で、約866万円でした。

1件あたりの平均額は、約32.5%大きくなった計算です。数値はいずれも編集部による試算値となります。

3. 「金融調査」と言われたら? 警察が電話やSNSでしないこと

警察が電話やSNSなどで行わない4つのこと2/5

警察が電話やSNSなどで行わない4つのこと

出所:警察庁「ニセ警察詐欺に注意!」をもとにLIMO編集部作成

警察庁は、警察が次のことをすることはないとして、注意を呼びかけています。

  • 「+」から始まる国際電話番号から電話をすること
  • SNSで連絡をしたり、ビデオ通話で警察手帳を見せて取調べをしたりすること
  • 逮捕状や捜索差押許可状などの捜査書類の画像をSNSで送ったり、郵送したりすること
  • インターネットで警察職員の名前を検索してみるよう言うこと

実在する警察署の電話番号が表示されていても、本物と信じ込まないよう警察庁は求めています。

不審に思ったら電話を切り、警察署や警察相談専用電話「#9110」に相談してください。

 

4. ニセ警察詐欺で見落としやすい注意点は3つあります

被害を防ぐうえで押さえておきたい点を、警察庁の公表資料から3つに整理しました。

4.1 1. 件数が減っても、被害額は増え続けています

警察庁の暫定値を時点ごとに並べると、被害額は着実に積み上がっています。

  • 6月末:507.9億円(前年同期比108.9億円増)・4466件(同296件減)
  • 7月末:617.1億円(同126.1億円・25.7%増)・5422件(同368件・6.4%減)
  • 8月末:728.6億円(同155.1億円・27.0%増)・6346件(同274件・4.1%減)

3つの時点のいずれも、件数は前年同期を下回る一方、被害額は25%を超えて増えています。

件数の減少だけを見て、被害が軽くなったと受け止めるのは禁物です。

4.2 2. 年代で「件数」と「金額」の顔ぶれが違います

ニセ警察詐欺の年代別認知件数と被害額(令和8年上半期)4/5

ニセ警察詐欺の年代別認知件数と被害額(令和8年上半期)

出所:警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとにLIMO編集部作成

令和8年上半期のニセ警察詐欺を年代別に見ると、件数・被害額ともに70代が最多でした。

  • 20代:550件・15.6億円(件数は前年同期比354件減)
  • 30代:664件・34.4億円(同318件減)
  • 40代:577件・37.0億円
  • 50代:580件・71.2億円
  • 60代:666件・116.3億円
  • 70代:869件・151.6億円(件数は前年同期比295件増)
  • 80代以上:531件・81.5億円(同169件増)

60代と70代の被害額を合わせると267.9億円で、全体の507.9億円の52.8%を占めます(編集部算出)。

1件あたりに直すと、20代は約284万円、60代と70代は1700万円台です(編集部試算)。

件数が減ったのは20代・30代が中心で、70代・80代以上では増えています。平均額が大きくなった一因とも考えられますが、警察庁が因果関係を示しているわけではありません。

4.3 3. 振込だけではありません。現金の手渡しや暗号資産の送信もあります

ニセ警察詐欺の交付形態別の件数と被害額(令和8年上半期)5/5

ニセ警察詐欺の交付形態別の件数と被害額(令和8年上半期)

出所:警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとにLIMO編集部作成

被害金の渡し方は、銀行振込にとどまりません。令和8年上半期の内訳をまとめます。

  • 振込型:2930件(65.6%)・256.2億円(50.4%)
  • 現金手交型:695件(15.6%)・123.6億円(24.3%)
  • 暗号資産送信型:620件(13.9%)・110.3億円(21.7%)
  • その他:221件(4.9%)・17.8億円(3.5%)

暗号資産送信型は、前年同期比で354件(133.1%)、60.8億円(122.8%)増えました。

警察庁は、金を購入させて「目的は資産運用と話すように」と指示する手口も紹介しています。

5. 身を守る備え:固定電話の国際電話休止から相談先まで

警察庁は、固定電話での対策として国際電話の利用休止を進めています。令和8年6月末時点の手続件数は約182万件です。

「+」から始まる国際電話番号は警察が使うことはないため、休止の手続きは有効な備えの一つといえます。手続きの方法は、契約している電話会社に確認してください。

スマートフォンでは、警察庁推奨アプリとして2つが認定されています。「詐欺対策 by NTTタウンページ」と「トレンドマイクロ 詐欺バスター Lite」です。

令和8年6月末時点の累計ダウンロード数は、約147.6万件でした。

不安を感じたときの相談先は、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署です。

6. まとめにかえて|「口座」「捜査」と言われたら、いったん切って確認を

令和8年8月末のニセ警察詐欺は、件数が6346件に減る一方、被害額は728.6億円に達しました。1件あたりでは約1148万円の計算です。

警察は、国際電話番号からの電話、SNSでの連絡、ビデオ通話での取調べをすることはありません。

  • 警察を名乗る電話で金銭の話が出たら、その場で電話を切る
  • 電話に表示された番号や、相手に教えられた番号にはかけ直さない
  • 警察署や警察相談専用電話「#9110」へ、自分で調べた番号から相談する

離れて暮らす家族にも、今回の数字と「警察がしないこと」を伝えておくと安心です。

参考資料