入院が決まると、治療費に加えて、毎日の食事代がいくらになるのかも気になるところです。
厚生労働省の告示により、令和8年6月1日から入院中の食事代(標準負担額)は、一般の方で1食550円に引き上げられました。住民税非課税世帯は1食270円、過去1年間の入院日数が90日を超えると220円です。
ただし、非課税世帯の減額は、病院が自動で判断してくれるわけではありません。金額の一覧と、窓口で払いすぎないための手続きを整理します。
1. 入院中の食事代(標準負担額)とは?1食いくらかかる?
入院中の食事は、医療保険から「入院時食事療養費」が支給され、患者は標準負担額を自己負担します。令和8年6月1日に施行された厚生労働省の告示「健康保険及び国民健康保険の食事療養標準負担額及び生活療養標準負担額」では、この標準負担額は全国一律です。協会けんぽでも国民健康保険でも、区分ごとの金額は同じです。
1日分の自己負担は、3食分が上限となります。令和8年6月1日から適用される1食あたりの金額は、次のとおりです。
- 一般(下記に当てはまらない方):550円(1日3食で1650円)
- 指定難病や小児慢性特定疾病の方(住民税非課税世帯を除く):330円
- 住民税非課税世帯:270円(1日3食で810円)
- 住民税非課税世帯で、過去1年間の入院日数が90日を超える場合:220円(1日3食で660円)
- 住民税非課税世帯に属し、所得が一定基準に満たない70歳以上の方:130円
2. 令和8年6月から、入院の食事代はいくら上がった?
全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内によると、令和7年4月1日から令和8年5月31日までの標準負担額(1食)は、一般が510円、住民税非課税世帯が240円、非課税世帯で過去1年間の入院日数が90日を超える場合が190円でした。令和8年6月1日からの引き上げ幅は、次のとおりです。
- 一般:510円から550円へ(40円増)
- 住民税非課税世帯:240円から270円へ(30円増)
- 非課税世帯で過去1年間の入院日数が90日超:190円から220円へ(30円増)
- 住民税非課税世帯に属し、所得が一定基準に満たない70歳以上の方:110円から130円へ(20円増)
たとえば、住民税非課税世帯の方が30日間入院した場合(1日3食で90食)、食事代は改定前の2万1600円から2万4300円になり、2700円増える計算です。一般の方は4万5900円から4万9500円へ、3600円の増加となりました。
同じ30日間でも、一般の方と非課税世帯の方では2万5200円の差が出ています。減額の手続きをするかどうかで、自己負担は大きく変わります。
3. 住民税非課税世帯の「1食270円」は、どうすれば適用される?
減額を受けるには、加入先の保険者に申請して「限度額適用・標準負担額減額認定証」(名称は保険によって異なります)の交付を受け、入院先の窓口に提示する必要があります。
協会けんぽの案内では、申請書に低所得の証明書を添付して都道府県支部に提出する流れです。マイナ保険証や資格確認書で受診する場合も、認定証をあわせて医療機関の窓口に提出するとされています。国民健康保険の場合は、市区町村の窓口が申請先になります。
住民税非課税世帯に当たるかどうかや、必要な書類は、加入先の保険者や市区町村の窓口で確認してください。
4. 入院の食事代で損しないための注意点が3つあります
非課税世帯の減額は、制度を知っていても手続きの段階でつまずきやすい点があります。見落としやすい3つを整理します。
4.1 1 認定証を出し忘れると、いったん一般の金額で請求されます
認定証を提示できず、通常の金額を支払った場合は、申請により差額が支給される仕組みです。ただし、横浜市の案内では、費用を支払ってから2年を過ぎると時効となり、申請できなくなります。申請には、本人確認書類、医療機関の領収書、振込先の口座が分かるものが必要です。
たとえば、非課税世帯の方が認定証を出さずに10日間(30食)入院すると、1食550円で請求されます。本来の270円との差は30食で8400円です。
4.2 2 91日目以降の220円は、自動では適用されません
220円が適用されるのは、住民税非課税世帯で、過去1年間の入院日数が90日を超えた方です。横浜市の案内では、申請日以前の12か月に入院日数が90日を超えた市民税非課税世帯の方が、区役所の窓口に申請して認定証の交付を受けることになります。
複数回に分けた入院の数え方など、細かな扱いは加入先によって異なる可能性があります。同じ30日間(90食)でも、270円と220円では4500円の差になるため、入院が長引きそうなときは早めに確認しておくと安心です。
4.3 3 食事代は、高額療養費の対象外です
厚生労働省保険局のリーフレット「高額療養費制度を利用される皆さまへ」には、「入院時の食事負担や差額ベッド代等は含みません」と記載されています。月の医療費が自己負担の上限額に収まっていても、食事代は別に支払う必要があります。
入院費用の見積もりでは、高額療養費の上限額に、食事代を足して考えておくと安心です。非課税世帯が30日間入院した場合なら、食事代だけで2万4300円になります。
5. 入院の食事代は、2年ほどで3回引き上げられている?
入院食事代の推移(非課税世帯・一般)3/3
出所:厚生労働省保険局「入院時の食費・光熱水費について」(第204回社会保障審議会医療保険部会 資料3)、全国健康保険協会(協会けんぽ)をもとにLIMO編集部作成
厚生労働省保険局が令和7年11月20日の社会保障審議会医療保険部会に示した資料「入院時の食費・光熱水費について」によると、住民税非課税世帯の標準負担額は、令和6年5月まで1食210円でした。令和6年6月から230円、令和7年4月から240円に上がり、令和8年6月からは270円です。
一般の方も、同資料では令和6年5月まで460円、令和6年6月から490円、令和7年4月から510円で、令和8年6月からは550円となりました。
- 住民税非課税世帯:210円から270円へ(60円増)。30日間(90食)で5400円の増加
- 一般:460円から550円へ(90円増)。30日間(90食)で8100円の増加
背景には、病院が食事の提供に要する費用の基準額の見直しもあります。令和8年6月1日適用の厚生労働省告示「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」では、入院時食事療養(Ⅰ)の通常の食事が1食690円から730円に改められました。
この730円のうち、一般の方は550円を自己負担します。非課税世帯の270円であれば、差額の460円が保険から支払われる計算です。
6. まとめにかえて|入院が決まったら、まず「認定証」の申請先を確認
令和8年6月1日から、入院中の食事代は一般で1食550円、住民税非課税世帯で270円となりました。過去1年間の入院日数が90日を超える非課税世帯は、220円です。
非課税世帯の減額は、認定証を入院先の窓口に出して初めて受けられます。1日3食で、一般の1650円に対して非課税世帯は810円と、1日あたり840円の差が出る計算です。入院の予定があるときは、加入先の保険者や市区町村の窓口で、認定証の申請先と必要書類を早めに確認しておきましょう。
制度の内容や区分の判定は、加入する保険によって扱いが異なることがあります。最終的な金額や手続きは、加入先の保険者や入院先の窓口に確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「健康保険及び国民健康保険の食事療養標準負担額及び生活療養標準負担額」(厚生省告示第203号)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「入院時食事療養費・入院時生活療養費・保険外併用療養費・訪問看護療養費」
- 厚生労働省「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準(平成十八年厚生労働省告示第九十九号)」令和8年6月1日適用
- 厚生労働省保険局「入院時の食費・光熱水費について」(令和7年11月20日 第204回社会保障審議会医療保険部会 資料3)
- 厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 横浜市「国民健康保険 入院したとき(入院時食事療養費)」
池上 翠