裁判所によると、後見開始の審判の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行い、費用は、申立手数料800円分と、登記手数料2600円分の収入印紙、連絡用の郵便切手などです。申立人は、本人、配偶者、四親等内の親族などです(2026年10月時点)。

親の認知症が進み、成年後見制度の利用を勧められたとき、手続きの流れと費用が分からず、立ち止まる方は少なくないと考えられます。令和8年に制度が見直されると聞いて、今申し立ててよいのか、迷う方もいるかもしれません。

この記事では、前半でこの疑問に、裁判所と法務省の公表資料と、編集部の試算で答えます。後半では、現行の3類型と利用者数、申立ての手続き、令和8年法律第45号の見直し、今利用している人への経過措置を整理します。個別の判断は、家庭裁判所や専門家に確認してください。

1. よくある疑問:認知症の父のために成年後見を申し立てたい。費用はいくらか。令和8年に制度が変わると聞いたが、今申し立ててよいのか

「認知症の父の施設の費用や、預金の手続きのために、成年後見を勧められました。申立てには、どれくらいの費用と書類が要るのでしょうか。令和8年に制度が変わると聞きました。今申し立てると、損をするのでしょうか」。

同じ迷いは、親の財産管理に不安を感じている人に、当てはまりえます。答えは、次の3点です。

  • 申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行います。費用は、申立手数料の収入印紙800円と、登記手数料の収入印紙2600円で、合計3400円です(編集部試算)。ほかに、連絡用の郵便切手(裁判所ごとに異なる)、鑑定が必要な場合の鑑定費用がかかることがあります(裁判所)
  • 令和8年法律第45号(令和8年6月24日公布)で、後見と保佐の制度は廃止され、補助の制度に一元化されます。施行は、公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日で、限度の目安は令和10年12月24日です(法務省、編集部試算)。具体的な施行日は、2026年10月時点で確認できませんでした
  • 令和7年12月末の利用者は、後見18万0828人、保佐5万8162人、補助1万8078人で、合計25万7068人です。後見が70.3%を占めます(法務省の資料、編集部試算)。今利用している人は、基本的には現行の内容で利用を続けられます(法務省)

2. 申立ての前に確認したい3つの「もし」を、法務省の資料で確認

読者の方が気にしそうな「もし」を、裁判所と法務省の資料で確認します。いずれも、ご自身の場合を確定するものではありません。

  • もし、今、申し立てるなら:現行の制度(後見、保佐、補助)の手続きで、家庭裁判所に申し立てます。見直しの施行日は、2026年10月時点で確認できていません。施行前後の申立ての扱いは、申立先の家庭裁判所に確認してください
  • もし、施行後も利用中なら:後見・保佐を利用中の人は、基本的には現行の内容で利用を続けられます。新しい制度に移りたいときは、補助の申立てをし、今の後見・保佐開始の審判は取り消されます。やめたいときは、取消しの申立てができます(法務省の経過措置)
  • もし、利用をやめたくなったら:現行の後見・保佐は、本人の事理弁識能力が回復しない限り、利用をやめられません。改正後は、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権により、終了できます(法務省)

ここからは、この答えの前提になる仕組みを順に確認します。現行の3類型と利用者数、申立ての手続きと費用、令和8年法律第45号の見直し、経過措置の順です。

3. 現行の法定後見は「後見・保佐・補助」の3類型:後見が約7割

法務省の資料によると、現行の法定後見制度は、本人の事理弁識能力の程度に応じて、利用できる制度が、後見、保佐、補助のどれかに画一的に定まります。後見は、包括的な代理権と取消権、保佐は、個別の代理権と幅広い要同意事項、補助は、個別の代理権と個別の要同意事項です。

令和7年12月末時点の利用者数は、後見が18万0828人、保佐が5万8162人、補助が1万8078人です(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」、法務省の資料)。3つを足すと、25万7068人で、後見が70.3%、保佐が22.6%、補助が7.0%です(編集部試算)。

3.1 【現行の法定後見の3類型と、令和7年12月末の利用者数】

前提条件:法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」の記載と、令和7年12月末時点の利用者数(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況-令和7年1月~12月-」)を、編集部が表に整理し、割合を試算したもの。合計と割合は編集部試算1/2

前提条件:法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」の記載と、令和7年12月末時点の利用者数(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況-令和7年1月~12月-」)を、編集部が表に整理し、割合を試算したもの。合計と割合は編集部試算

出所:法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」を基にLIMO編集部作成・試算

  • 後見:包括的な代理権・取消権です。利用者は18万0828人で、70.3%です。
  • 保佐:個別の代理権・幅広い要同意事項です。利用者は5万8162人で、22.6%です。
  • 補助:個別の代理権・個別の要同意事項です。利用者は1万8078人で、7.0%です。
  • 合計:3類型の合計で、25万7068人です(編集部試算)。

表を見ると、現行の利用者の約7割が後見で、令和8年法律第45号で廃止される後見・保佐を合わせると、約93%です。見直しの影響を受ける人が、とても多いことが分かります。

4. 申立ての手続き:本人の住所地の家庭裁判所へ。申立人は本人、配偶者、四親等内の親族など

裁判所のページによると、後見開始の審判の申立人は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官です。申立先は、本人の住所地の家庭裁判所です。

申立てに必要な費用は、申立手数料が収入印紙800円分、登記手数料が収入印紙2600円分です。連絡用の郵便切手は、郵便料が裁判所ごとに異なるため、申立先の裁判所に確認します。郵便料は、保管金として納付することもできます。

後見開始の審判をするには、本人の精神の状況について鑑定をしなければならない場合があり、申立人が鑑定に要する費用を負担することがあります(裁判所)。鑑定の費用は、裁判所の案内に金額が書かれておらず、この記事では金額を示しません。

標準的な申立添付書類として、本人の戸籍謄本、本人の住民票または戸籍附票、成年後見人候補者の住民票または戸籍附票が、いずれも発行から3か月以内のものとして挙げられています。本人の診断書も、発行から3か月以内のものです。

4.1 【後見開始の審判の申立ての要点】

前提条件:裁判所「後見開始」のページの記載を、編集部が表に整理したもの。申立先の裁判所によって、追加の書類や郵便料が異なる場合がある。マイナンバーが記載された書類は提出しないよう注意が示されている2/2

前提条件:裁判所「後見開始」のページの記載を、編集部が表に整理したもの。申立先の裁判所によって、追加の書類や郵便料が異なる場合がある。マイナンバーが記載された書類は提出しないよう注意が示されている

出所:裁判所「後見開始」を基にLIMO編集部作成

  • 申立人:本人、配偶者、四親等内の親族などです。検察官や、保佐人・補助人なども申し立てられます。
  • 申立先:本人の住所地の家庭裁判所です。申立書提出先の一覧で確認します。
  • 申立手数料:収入印紙800円分です。合計3400円は編集部試算です。
  • 登記手数料:収入印紙2600円分です。登記印紙を持っていれば、当分の間、それも使えます。
  • 連絡用の郵便切手:裁判所ごとに異なります。保管金としても納付できます。
  • 鑑定費用:鑑定が必要な場合に、申立人が負担することがあります。金額は案内に書かれていません。
  • 主な添付書類:戸籍謄本、住民票または戸籍附票、診断書などです。いずれも発行から3か月以内です。

表を見ると、収入印紙だけなら、合計3400円です。ただし、実際には、書類の取得費、切手、鑑定が必要になった場合の費用が加わります。専門家に手続きを頼むときの報酬も別です。申立先の裁判所の案内で、全体の費用の見通しを確かめてください。

5. 申立てのあとの流れ:参与員や調査官が事情を聴き、診断書や鑑定を基に、ふさわしい人を後見人に選ぶ

裁判所のページによると、申立てを受けた家庭裁判所では、参与員が、申立人が提出した資料について申立人から説明を聴いたり、家庭裁判所調査官が、申立人、本人、成年後見人候補者などに会って、申立ての実情や本人の意見などを聴いたりすることがあります。ウェブ会議を使うこともできます。

家庭裁判所は、本人の判断能力について、鑑定や医師の診断書などを基に判断し、本人の財産の内容や、生活する上で必要となる援助の内容に応じて、ふさわしい方を成年後見人に選びます。つまり、申立人が、候補者として希望した人が、そのまま選ばれるとは限りません。

申立書に添える書類には、本人の財産と、収支が分かる資料があります。預貯金や有価証券の残高が分かる書類、不動産関係の書類、負債が分かる書類、収入と支出の資料です。申立ての前に、これらの資料を集めておくと、手続きが進めやすくなります。

6. 【編集者の視点】

今回、資料を読んでいちばん意外だったのは、「成年後見制度」という言葉が、後見だけを指すものではない点です。法定後見には、後見、保佐、補助の3類型があり、令和8年法律第45号は、そのうち後見と保佐を廃止して、補助に一元化します。

そのため、「後見を申し立てる」という言い方が、これからは変わっていきます。ただ、今の申立てが、どの類型になるのか、施行前後でどう扱われるのかは、確認した資料に書かれていません。迷ったときは、申立先の家庭裁判所の案内で、必ず確認してください。

この記事は、特定の手続きを勧めるものではありません。申立てるかどうか、どの類型が合うかは、本人の状態で違います。家庭裁判所、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家に、必ず相談してください。

親のために、成年後見の手続きを考えるとき、「自分に務まるだろうか」「裁判所に行くなんて」と、気が重くなる方は多いと思います。制度の仕組みを、あらかじめ知っておくだけでも、その重さが少し和らぎます。制度が見直される時期でもあるので、最新の情報を確かめながら、ひとつずつ進めてみてください。

「一度始めたら、やめられない」という点が、成年後見制度をためらう理由になっていた方もいると思います。今回の見直しで、その不安に向き合う方向が示されました。ただ、まだ施行されたわけではありません。今の制度で、何ができて、何ができないのかを、冷静に確かめることが、まず大切です。

7. 令和8年法律第45号:後見・保佐を廃止して補助に一元化し、利用の終了もできるように

法務省の資料によると、令和8年法律第45号(民法等の一部を改正する法律)は、令和8年6月に参議院本会議で可決・成立し、6月24日に公布されました。成年後見制度は、後見と保佐の制度を廃止し、本人に必要な事項について代理権・取消権を付与する補助の制度に一元化します。

補助は、事理弁識能力が不十分であること、本人の同意、制度利用の必要性を要件として、特定の行為について、個別に権限を付与する仕組みです。補助人に代理権(たとえば遺産分割の代理権)を付与する審判や、補助人の同意を要するとの審判をします。

事理弁識能力を欠く常況にある人は、例外として、法定の重要な財産行為について、いずれも取り消せる仕組み(特定補助の仕組み)を選べます。利用にあたっては、医師2人以上の意見を聴いたうえで、明らかに必要がないときは、鑑定が不要です。

7.1 【令和8年法律第45号による成年後見制度の主な見直し】

  • 制度の形:現行は、後見、保佐、補助の3類型です。改正後は、後見・保佐を廃止し、補助に一元化します。
  • 利用の終了:現行は、事理弁識能力が回復しない限り、やめられません。改正後は、必要がなくなったと家庭裁判所が認めるとき、申立てまたは職権で終了できます。
  • 選任時の本人の意見:改正後は、選任時に考慮する要素の冒頭に「本人の意見」を規定します。補助人が職務を行うときは、本人の意向を把握しなければならないと明確化されます。
  • 解任:現行は、不正な行為や著しい不行跡などが事由です。改正後は、本人の利益のため特に必要があるときに、補助人を解任できます。
  • 死後事務:現行は、成年後見人にのみ権限があります。改正後は、補助人が、本人の火葬・埋葬の契約の締結と、死亡当時の権限の範囲内での相続財産の保存に必要な行為をできるようにします。
  • 施行時期:公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日です。

表を見ると、今回の見直しの方向は、本人にとって必要な範囲で、必要な期間だけ、制度を使えるようにすることです。公布の日は令和8年6月24日なので、2年6月後の限度は、令和10年12月24日です(編集部試算)。具体的な施行日は、今後の政令で決まります。

8. 経過措置:今利用している人は、継続も、補助への移行も、終了もできる

法務省の資料の経過措置によると、後見・保佐を利用している人は、基本的には現行の内容で、利用を継続できます。ただし、解任事由と、意向尊重義務は、改正後の民法が適用されます。

新しい制度に移りたいときは、改正後の補助の制度に係る申立てをして、新制度を利用します。このとき、現在利用中の後見・保佐開始の審判は、取り消されます。申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人・保佐人等です。

制度の利用を終了したいときは、後見・保佐開始の審判の取消しの申立てができます。補助を利用している人は、改正後の補助の制度の内容で利用を継続でき、終了したいときは、補助開始の審判の取消しの申立てができます。

後見人等の報酬については、LIMOの記事「【成年後見制度利用支援事業】後見人等の報酬は「年20万円台」が中心。4月公表の調査で見る、市区町村の報酬助成はいくらまで出るのか?」で整理されています。法務省の資料は、報酬の決定に当たって、補助人が行った事務の内容等を考慮するとしています。

9. 【編集者の視点】

今回の見直しで、いちばん気になるのは、「今申し立てると損か、得か」という問いに、確認した資料が答えていない点です。法務省の資料は、すでに利用している人への経過措置は示していますが、施行前に申し立てる人が、どう扱われるかは書いていません。

そのため、時期を見計らって申立てを遅らせるべきか、急ぐべきかは、一般論では言えません。本人の財産管理が、今、どれだけ差し迫っているかが、判断の中心になるからです。日常生活自立支援事業など、別の仕組みで足りる場合もあります。

具体的な施行日や、施行前の申立ての扱いは、今後の政令などで定まる部分があります。この記事は、2026年10月時点で確認できた範囲の整理です。最新の内容は、家庭裁判所や、法務省の案内で、必ず確認してください。

親の財産のことを考えるのは、親の老いと向き合うことでもあり、気持ちの面でも、簡単なことではありません。制度が変わる時期に重なると、さらに迷います。一人で抱え込まず、家庭裁判所の窓口や、地域包括支援センター、専門家に、早めに話を聞いてもらってください。

※本記事は、編集部が裁判所と、法務省の公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

10. まとめ

成年後見の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行います。申立人は、本人、配偶者、四親等内の親族などです。費用は、収入印紙で、申立手数料800円と登記手数料2600円の合計3400円です(編集部試算)。ほかに、郵便切手や、鑑定が必要な場合の費用がかかることがあります。

令和8年法律第45号(令和8年6月24日公布)で、後見・保佐は廃止され、補助に一元化されます。施行は、公布から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日で、限度は令和10年12月24日です(編集部試算)。令和7年12月末の利用者25万7068人のうち、後見が70.3%です。

今利用している人は、基本的には現行の内容で継続でき、補助への移行や、終了もできます。個別の判断や、施行前後の申立ての扱いは、家庭裁判所や、専門家に確認してください。

11. よくある質問

11.1 Q. 成年後見の申立ては、どこにしますか?

本人の住所地の家庭裁判所に行います(裁判所)。

11.2 Q. 誰が申し立てられますか?

本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、保佐人、補助人、検察官などです(裁判所)。

11.3 Q. 費用は、いくらですか?

収入印紙で、申立手数料が800円分、登記手数料が2600円分で、合計3400円です(編集部試算)。連絡用の郵便切手は裁判所ごとに異なり、鑑定が必要な場合は、鑑定費用を負担することがあります(裁判所)。

11.4 Q. どんな書類が必要ですか?

申立書、本人の戸籍謄本、住民票または戸籍附票、診断書などです。診断書は、発行から3か月以内のものです(裁判所)。

11.5 Q. 制度は、いつ変わりますか?

令和8年法律第45号は、令和8年6月24日に公布されました。成年後見制度の見直しの施行は、公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日です(法務省)。

11.6 Q. 何が変わりますか?

後見・保佐の制度が廃止され、補助の制度に一元化されます。必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、利用を終了できるようになります(法務省)。

11.7 Q. 今、後見を利用しています。どうなりますか?

基本的には現行の内容で、利用を継続できます。新しい制度に移りたいときは補助の申立てを、終了したいときは取消しの申立てをします(法務省の経過措置)。

11.8 Q. 日常生活自立支援事業とは、違いますか?

日常生活自立支援事業は、契約に基づく福祉サービスの利用援助や金銭管理で、社会福祉協議会が行います。法定後見は、家庭裁判所が関わる制度です。

参考資料

齊藤 慧