3. 受け取れると思っていたのに…見落としやすい3つの点
妻の年齢や子の条件を満たしていても、中高齢寡婦加算を受け取れないことがあります。
3.1 夫が国民年金だけの加入なら加算もない
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金に上乗せされるものです。
そのため、夫が自営業などで国民年金だけに加入していて、厚生年金保険の加入期間がなく遺族厚生年金が支給されない場合は、中高齢寡婦加算も受け取れません。
3.2 老齢厚生年金を受け取っていた夫などは加入期間20年以上が必要
夫が厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合などとは異なり、老齢厚生年金の受給権者であった夫や、保険料納付済期間などを合算した期間が25年以上ある夫が亡くなった場合は、注意が必要です。
この場合、夫の厚生年金保険の加入期間が20年(中高齢の期間短縮の特例などにより20年未満の加入期間で受給資格期間を満たした方は、その期間)以上なければ、中高齢寡婦加算は加算されません。
夫が退職後に亡くなった場合は、会社員として働いた期間が20年以上あったかを確認しておくとよいでしょう。
3.3 遺族基礎年金を受け取れる間は加算されない
遺族基礎年金を受け取ることができるときは、中高齢寡婦加算は受け取れません。
子がいる妻は、遺族基礎年金が終わったあとに加算が始まる仕組みのため、遺族基礎年金と中高齢寡婦加算を同時に受け取ることはありません。
4. 65歳になると中高齢寡婦加算はどうなる?
中高齢寡婦加算は、妻が65歳になると加算されなくなります。
65歳からは妻自身の老齢基礎年金を受け取れるようになるため、中高齢寡婦加算はその間をつなぐ役割を持っています。
4.1 1956年4月1日以前生まれの妻は「経過的寡婦加算」
1956年(昭和31年)4月1日以前生まれの妻については、遺族厚生年金を受け取ることができるようになった当時65歳以上であったとき、または中高齢寡婦加算を受け取っている方が65歳になったときに、中高齢寡婦加算が「経過的寡婦加算」に変わります。
経過的寡婦加算の額は、生年月日に応じて減額されます。
4.2 65歳以降は自分の老齢厚生年金が優先される
65歳以上で、自分の老齢厚生年金を受け取る権利がある方は、自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止されます。
中高齢寡婦加算がなくなることとあわせて、65歳の前後で受け取る年金の内訳と合計額がどう変わるかを、ねんきん定期便や年金事務所での試算で確かめておくと安心です。
5. 2028年4月からの見直しで何が変わる?
2025年に成立した年金制度改正法により、中高齢寡婦加算は2028年(令和10年)4月から見直されることになりました。
5.1 新たに発生する加算は25年かけて縮小
見直しの施行日(2028年4月1日)以降に新規に発生する加算の額は、2053年度(令和35年度)まで25年かけて段階的に縮小されます。
一度受け取り始めた加算は、翌年度以降も額は変わらず、65歳になるまで受け取ることができます。
5.2 すでに受け取っている妻は影響を受けない
施行日前からすでに加算を受け取っている妻や、もともと中高齢寡婦加算の対象外である妻(たとえば、40歳未満または65歳以降に夫と死別した18歳年度末までの子のない妻など)は、見直しの影響を受けません。
見直しの背景には、女性の就業の進展や共働き世帯の増加などを踏まえ、妻を亡くした夫には同様の加算がないという男女差を、十分な時間をかけて解消していくという考え方があります。
制度の詳細は今後の政省令などで定められる部分もあるため、実際に手続きをする際は年金事務所などで最新の内容を確認するようにしましょう。
6. まとめ:夫を亡くしたときの年齢と子の年齢を確認しておこう
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金を受け取る妻に、40歳から65歳になるまで年63万5500円(2026年度)が上乗せされる仕組みです。
子がいない妻は夫を亡くした時点で40歳以上であること、子がいる妻は40歳に達した当時に遺族基礎年金を受けていたことが条件で、夫の年金の加入状況によっては加算されない場合もあります。
さらに、2028年4月以降に新たに発生する加算は段階的に縮小されるため、今後は受け取れる額が少なくなっていきます。
夫婦それぞれの年金の加入期間や、子の年齢とあわせて、万一のときに遺族厚生年金と中高齢寡婦加算をいくら受け取れるのかを、ねんきん定期便などで一度確認しておきましょう。
参考資料
和田 直子