3. 65歳までの受取総額は約3424万円
3つの段階を足し合わせて、妻が40歳から65歳までの25年間に受け取る総額を試算します。段階1を約6年、段階2を約4年、段階3を約15年として計算しました。
- 段階1:182万8190円×6年=1096万9140円
- 段階2:158万4390円×4年=633万7560円
- 段階3:112万8790円×15年=1693万1850円
- 合計:3423万8550円(約3424万円)
実際には、子の誕生日によって段階の切り替わりが1年ほどずれることがあります。また、年金額は毎年度改定されるため、この総額は令和8年度の金額で固定した目安です。
3.1 妻が65歳になったら、中高齢寡婦加算が終わる
妻が65歳になると、中高齢寡婦加算は終わります。遺族厚生年金49万3290円は続き、そこに妻自身の老齢基礎年金が加わります。
老齢基礎年金の満額は、令和8年度で月7万608円(年84万7296円)です。保険料の納付月数が満たされていれば、遺族厚生年金とあわせて年134万円ほど、月約11.2万円になります。納付月数が少なければ、老齢基礎年金の額もそれに応じて少なくなります。
4. 夫の年収で変わる:平均標準報酬額30万・40万・50万円の場合
夫の収入によって変わるのは、遺族厚生年金の部分です。遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は、夫の収入に関係なく定額です。夫の平均標準報酬額を30万円、40万円、50万円とした場合を比べました。
夫の平均標準報酬額別、遺族年金の年額と65歳までの受取総額(編集部の試算)2/2
出所:日本年金機構「報酬比例部分」、「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」をもとにLIMO編集部作成(試算は編集部の仮定による)
- 平均標準報酬額30万円(年収目安360万円):遺族厚生年金は年36万9968円。段階1は年170.5万円、段階2は146.1万円、段階3は100.5万円。65歳までの総額は約3116万円
- 平均標準報酬額40万円(年収目安480万円):遺族厚生年金は年49万3290円。段階1は年182.8万円、段階2は158.4万円、段階3は112.9万円。総額は約3424万円
- 平均標準報酬額50万円(年収目安600万円):遺族厚生年金は年61万6613円。段階1は年195.2万円、段階2は170.8万円、段階3は125.2万円。総額は約3732万円
夫の平均標準報酬額が10万円違うと、遺族厚生年金は年約12万3000円違います。一方で、遺族基礎年金と中高齢寡婦加算は定額のため、夫の収入が高くても低くても同じです。
5. 試算で見落としやすい注意点
この試算を自分の家計にあてはめるときは、次の点に注意が必要です。
- 年金額は毎年度改定されます。令和8年度は、基礎年金が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げでした
- 段階の切り替わりは、子の誕生日で1年ほどずれます。子が障害等級1級・2級の場合は、20歳になるまで対象です
- 夫の厚生年金の加入期間が300月以上ある場合は、300月のみなしではなく、実際の期間で計算します
- 妻が受け取るには、夫に生計を維持されていたことが必要です。日本年金機構は、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満という基準を示しています
- 遺族年金は、国税庁によると、原則として所得税が課税されません
なお、遺族厚生年金は2028年4月から見直しが予定されています。中高齢寡婦加算は、施行後に新たに加算が始まる分から2053年度まで25年かけて縮小される見込みで、すでに受給権がある遺族厚生年金は現行の内容が維持される見込みです。段階3の加算は縮小後の額になる可能性があるため、この記事の試算には反映していません。最新の取り扱いは、日本年金機構や年金事務所で確認してください。
6. 確認しておきたいこと
もしものときの見通しを立てるために、次の3点を確認しておくことをおすすめします。
1つ目は、夫の加入記録と標準報酬月額です。ねんきん定期便やねんきんネットで、これまでの標準報酬月額や加入期間を確認できます。遺族厚生年金の額は、この平均標準報酬額で決まります。
2つ目は、妻自身の老齢基礎年金の見込額です。妻のねんきん定期便で、保険料の納付月数と、65歳から受け取れる年金額の見込みを確認できます。
3つ目は、家計の毎月の支出です。遺族年金は、子どもの成長とともに月約15.2万円、約13.2万円、約9.4万円と下がります。それぞれの段階で、生活費や教育費がいくらかかるのかを書き出して、遺族年金とのバランスを見ておくと、備えるべき額が見えてきます。
7. まとめ
会社員の夫に先立たれた40歳の専業主婦・子ども2人の世帯が受け取る遺族年金は、令和8年度の額で、年182万8190円(月約15.2万円)から始まります。長男が18歳になった年度の末日を迎えると年158万4390円、長女も迎えると年112万8790円に段階的に下がります。
妻が65歳までに受け取る総額は約3424万円ですが、夫の平均標準報酬額によって約3116万円から約3732万円まで変わります。実際の額は、夫の加入記録や子の誕生日、毎年度の年金額の改定、2028年4月の見直しによる中高齢寡婦加算の縮小などで変わります。
まずは、夫婦それぞれのねんきん定期便を確認し、段階ごとの受取額と家計の支出を並べて、備えを考えてみましょう。
参考資料
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「さ行 生計維持」
- 国税庁「No.1605 遺族の方に支給される公的年金等」
和田 直子