証券会社を名乗るメールが届き、リンクを押す前にふと手が止まった経験はないでしょうか。

金融庁が2026年10月9日に更新した月別の状況では、2026年8月に不正取引が発生した証券会社等は4社、不正取引は25件(暫定値)でした。

ピークだった2025年4月の3033件と比べると大きく減っていますが、今もなお被害は発生しています。

以下では、金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引に関する注意喚起」の被害状況(2026年10月9日付)をもとに、月別の推移、金融庁が示す6つの対策、今日できる点検をまとめます。

1. 証券口座の不正取引、2026年8月は4社で25件 ピーク時から月別でどう変わった?

1.1 8月の不正取引は何件? 金融庁の月別表で見ると

金融庁の月別表によると、2026年8月に不正取引が発生した証券会社等は4社でした。

不正取引は25件で、売却金額は約2億円、買付金額も約2億円です。

なお、不正取引件数は、不正アクセス件数のうち不正取引まで行われた件数を指します。

数値は、金融庁が各証券会社等から報告を受けた暫定値です。未判明の被害が含まれていない可能性があります。

売買金額は被害口座内で行われた不正取引額の合計であり、顧客の実際の損失額とは一致しません。

1.2 ピークの2025年4月と比べると、どれくらい違う?

証券口座の不正取引件数、月別の推移2/4

証券口座の不正取引件数、月別の推移

出所:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引の被害状況」(2026年10月9日付)をもとにLIMO編集部作成

月別に振り返ると、2025年3月の不正取引は935件でした。

翌4月は3033件に増え、売却約1625億円、買付約1423億円と、この表で最も大きな規模になっています。

その後は2025年8月に654件、2026年6月に104件へ減り、7月は1社で5件でした。

たとえば2025年4月の3033件は、2026年8月の25件のおよそ121倍です。

一方で、2026年7月の5件から8月は25件と、20件増えています。

件数が減った背景は資料に書かれていません。各社の対策強化などが影響した可能性はありますが、断定はできないでしょう。

2. 「見覚えのある相手からのメールでもリンクは開かない」金融庁が示す6つの対策

2.1 ログインするとき、どこから入っていますか?

金融庁が示す、証券口座を守る6つの対策3/4

金融庁が示す、証券口座を守る6つの対策

出所:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引に関する注意喚起」をもとにLIMO編集部作成

金融庁は、証券口座を守る基本対策として、次の6項目を示しています。

  • 見覚えのある相手からのメールやSMSでも、記載されたリンクは開かない
  • 証券会社の正しいURLをブックマークに登録し、そこからアクセスする
  • ログイン時・取引時・出金時・出金先口座の変更時の多要素認証や通知サービスを有効にする
  • パスワードを使い回さず、長く推測されにくいものにする
  • 口座を定期的に確認し、不審なサイトに入力した疑いがあれば、証券会社の窓口へ連絡してパスワードを速やかに変更する
  • OSやソフトウェアを最新に保ち、マルウェア対策ソフトを導入して常に更新する

3つ目については、今後提供されるパスキー認証など、フィッシングに強い認証も、利用できるようになり次第、設定することが推奨されています。

メールやSMSのリンクを開かず、ブックマークから入る習慣が、最初の一歩になります。

3. 月別の数字を読むときの注意点は3つあります

金融庁の月別表を見るときは、次の3点に気をつけたいところです。

1つ目は、暫定値であることにご注意ください。各証券会社等から報告を受けた数字のため、後から変わる可能性があります。

2つ目は、売買金額と損失額は別物であることです。売却約2億円、買付約2億円を足し合わせて被害額とみなすのは適切ではないでしょう。被害口座内の不正取引額の合計が、そのまま損失額になるわけではありません。

3つ目は、記載されている社数が「被害が発生した社数」であることです。各社の口座数や規模は異なるため、社数の増減だけで被害の広がりは判断できません。

このほか、被害にあった場合の補償は、各証券会社の対応や規約によって異なります。

補償の可否は、各社の公式ページや窓口で確認してください。

4. 今日10分でできる点検リスト

4.1 自分の口座は大丈夫? 確認したい5つのこと

今日10分でできる、5つの点検4/4

今日10分でできる、5つの点検

出所:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引に関する注意喚起」をもとにLIMO編集部作成

  • ログイン経路:普段のログインがブックマークからになっているか、メールやSMSのリンクから入る習慣がないかを見直します
  • 認証と通知:ログイン、取引、出金、出金先口座の変更に、多要素認証や通知が設定されているかを確かめます
  • パスワード:ほかのサービスと同じものを使っていないか、長く推測されにくいものになっているかを点検します
  • 取引履歴と出金先:身に覚えのない取引や、登録した出金先の変更がないかを定期的に確認します
  • 端末の状態:パソコンやスマートフォンのOSやアプリが最新か、マルウェア対策ソフトが更新されているかを見ておきます

設定画面の名称や操作手順は、証券会社ごとに異なります。各社の公式ページでご確認ください。

不審なサイトに情報を入力した疑いがあるときは、すぐに証券会社の窓口へ連絡しましょう。

一般的な相談は、金融庁の「金融サービス利用者相談室」でも受け付けています。電話は0570-016811(IP電話は03-5251-6811)で、受付は平日10時から17時です。

5. まとめにかえて|「減ったからこそ、入口を固定する」

不正取引の件数は、ピーク時に比べれば大きく減りました。ただ、数字が減ったからといって、口座を狙う手口がなくなったわけではありません。

証券口座は、ふだんの小さな習慣で守りの固さが変わります。メールやSMSのリンクは開かず、ブックマークから入ること。多要素認証や通知を、使える機能はすべて有効にしておくこと。

「自分は大丈夫」と思い込まず、今日の確認を、大切な資産を守る習慣の入口にしてみてはいかがでしょうか。

参考資料

池上 翠