「万が一」の日に備えて、火葬や葬儀の費用が気になっている方もいるでしょう。
厚生労働省が2026年9月30日に公表した人口動態統計(確定数)では、2025年の死亡数は158万9533人でした。
前年から1万5845人減って、5年ぶりの減少となりました。
それでも年間150万人を超える多死社会は続いており、費用の目安を知っておく意味は小さくありません。
1. 2025年の死亡数は約159万人 5年ぶりに減っても「多死社会」は続く
1.1 死亡数が減ったのに「多死社会」といわれるのはなぜ?
厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、2025年の死亡数は158万9533人でした。
前年より1万5845人少なく、5年ぶりの減少です。
一方で、出生数は67万1270人と過去最少でした。
死亡数から出生数を引いた自然増減数はマイナス91万8263人となり、自然減は19年連続です。
1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率も、1.14と過去最低を示しました。
先行きを見ても、死亡数が大きく減る見通しではありません。
令和7年版厚生労働白書の資料編には、2040年の死亡数を165万人とするグラフが載っています。
推計の出典は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(令和5年推計、出生中位・死亡中位)です。
年間150万人を超える水準は、2040年の推計でも変わりません。
身近な人を見送る日に備え、費用の目安を知っておく意味は小さくないはずです。
2. 火葬料金は公営の無料から民営の8万円以上まで 施設ごとの差を確認
2.1 火葬料金は公営と民営でいくら違う?
見送りの際に、早い段階で必要となる費用のひとつが火葬料金です。
東京都保健医療局は2026年3月31日に、「火葬場の運営等に係る実態調査<概況>」を公表しました。
調査の対象は都内外の公営・民営44施設で、料金は2025年9月末時点の大人料金です。
なお、都島しょ地域の施設は含まれていません。
ここで紹介する数値は東京都の調査にもとづく一例で、料金の水準や区分は地域や施設によって異なります。
まず、公営施設のうち住民料金が示された21施設の内訳です。
- 無料:7施設(33%)
- 2万円未満:12施設(57%)
- 4万円以上6万円未満:2施設(10%)
公営施設でも、域外の人に向けた一般料金は高めに設定されています。
示された20施設の内訳は次のとおりです。
- 4万円以上6万円未満:6施設(30%)
- 6万円以上8万円未満:5施設(25%)
- 8万円以上:9施設(45%)
民営施設は11施設で、8万円以上が8施設(73%)を占めました。
残りは、2万円以上4万円未満、4万円以上6万円未満、6万円以上8万円未満が各1施設となっています。
たとえば八王子市斎場(公営)は、住民が無料で、住民以外は8万円です。
臨海斎場(公営)は住民が4万4000円、住民以外が8万8000円で、差は4万4000円に上ります。
ここで見落としやすいのは、無料や低額の住民料金が、対象となる住民向けの料金であることです。
域外の場合は一般料金が適用されます。
住民料金の対象範囲は自治体や施設ごとに異なるため、事前に確かめておくと安心です。
料金の改定も続いています。
2022年4月から2025年9月までに、都内の民営8施設はすべて料金を改定しました。
都内の公営でも、18施設のうち4施設で改定がありました。
料金は改定されることがあり、お住まいの地域では東京都の例と異なる場合もあります。最新の金額は、自治体の窓口や各施設の案内で確認しましょう。
3. 葬儀費用で確認しておきたい注意点は3つ
火葬に加えて通夜や告別式などを含む葬儀全体の費用でも、想定とのずれが起きることがあります。
注意点を3つに分けて見ていきましょう。
3.1 注意点1|見積書の明細と「含まれるもの」を確かめる
国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた「葬儀サービス」の相談は、2019年度の632件から増え、2025年度は917件でした。
このうち、「高価格・料金」に関する相談は52.6%を占めています。
同センターが紹介した事例には、チラシで約30万円とされた一日葬が、契約では約80万円に膨らんだケースもありました。
表示された金額に何が含まれるのかを、契約の前に見積書の明細で確かめることが大切です。
3.2 注意点2|「想定より高い」と感じる人が一定数いる
葬儀関連のエス・エム・エスが2026年7月に公表した調査(喪主602人)では、想定より高かった人が47.3%でした。
家族葬(通夜・告別式あり)を選んだ人に限ると、53.8%に上ります。
同調査で費用の出どころを聞くと、「親(故人)が生前に現金を用意していた」が47.8%で最多でした。
お布施は5万〜20万円が中心です。
3.3 注意点3|葬祭費は申請しないと受け取れない
国民健康保険の加入者が亡くなったときは、葬祭を行った人が申請すると、自治体から葬祭費が支給される仕組みがあります。
たとえば横浜市の支給額は5万円で、申請できるのは葬祭を行った日から2年です。
金額や手続きは自治体によって異なるので注意しましょう。
以前加入していた健康保険から、別の給付(埋葬料)が出る場合もあります。
お住まいの自治体の国民健康保険の窓口で確認してください。
4. 民間調査に見る葬儀費用 形式別の目安と「想定外」の声
4.1 葬儀の形式別ではいくらかかっている?
葬儀費用は、調査ごとに対象者や集計方法が異なります。
いずれも葬儀関連の事業者などが実施した調査で、ここでは母数とあわせて見ていきましょう。
- エス・エム・エス(2026年7月28日公表、喪主602人):最も多かった費用帯は、一般葬が200万円以上、家族葬(通夜・告別式あり)が100万〜120万円、直葬が25万〜30万円
- 鎌倉新書(2026年5月12日公表、有効回答2000件):家族葬96万3900円、一般葬122万100円、一日葬74万4300円、直葬49万5600円。形式の割合は家族葬が47.0%
- レイシー(2026年5月11日公表、自社に依頼された約2000件の集計):平均額は家族葬98万円、一日葬81万円、火葬式35万円
レイシーの集計期間は、2024年1月から2025年12月です。
自社が受けた案件の集計であり、全国の平均とは限りません。
4.2 費用の「分かりにくさ」はどのくらい?
NEXER Groupと斎場白島会館は2026年6月10日、喪主などの経験者198人へのネット調査の結果を公表しました。
費用を高いと感じた人は72.7%、相場を把握していなかった人は47.4%です。
料金プランや費用を分かりにくいと感じた人も、53.1%に上りました。
調査の母数や対象は、それぞれ異なります。
数字は目安として受け止め、実際の金額は見積書で確かめてください。
5. まとめにかえて|数字は減っても、「送る側」になる日は近づいている
2025年の死亡数は5年ぶりに減ったものの、多死社会の流れは続く見通しです。
費用で後悔しないために、次の3つを確かめておきましょう。
- お住まいの自治体の公営火葬場の料金と、住民料金の対象を調べる
- 葬儀の希望や予算、費用の用意について、家族と話しておく
- 見積書の明細を受け取り、含まれる内容と追加費用の有無を確かめる
不安を感じたときや契約でトラブルが起きたときは、消費者ホットライン188が役立ちます。
最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等につながる、全国共通の電話番号です。
参考資料
- 厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)」(2026年9月30日公表)
- 厚生労働省「令和7年版厚生労働白書」資料編(p.11「死亡数の推移」)
- 東京都保健医療局「火葬場の運営等に係る実態調査<概況>」(2026年3月31日公表)
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-「家族葬だから安い」と思っていませんか?-」(2026年6月3日公表)
- 横浜市「国民健康保険の葬祭費」
- エス・エム・エス「喪主602人への葬儀費用調査」(2026年7月28日公表)
- NEXER Group・斎場白島会館「葬儀費用に関する調査」(2026年6月10日公表)
- 鎌倉新書「【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年)」(2026年5月12日公表)
- レイシー「自社葬儀案件の費用集計」(2026年5月11日公表)
池上 翠