後期高齢者の医療保険では、令和8年8月1日から、年齢とマイナ保険証の利用実績に応じて、届く書類が変わっています。高齢の家族の利用状況によって、どの書類が届き、受診にどう影響するのかを知りたい方もいると考えられます。
ここでは、厚生労働省が公表した後期高齢者の利用実績の統計と、東京都後期高齢者医療広域連合などの案内をもとに、80歳の家族を例に整理します。
1. 受付ではマイナ保険証か資格確認書を示せばよく、使っていなくても窓口で10割負担にはならない
厚生労働省は、医療機関・薬局の受付では、マイナ保険証を持つ人は「マイナ保険証」を、持たない人は「資格確認書」を示すよう案内しています。資格確認書は、当分の間、マイナ保険証を持たない人全員に、申請によらず交付されるものです。
マイナ保険証で受付ができない場合も、同じです。機器のトラブルや電子証明書の有効期限切れのときは、マイナンバーカードと、マイナポータルの資格情報の画面を示すことなどにより、窓口で10割負担をせずに受診できるとされています。
後期高齢者の医療保険では、令和7年8月から令和8年7月末まで、マイナ保険証の保有状況にかかわらず、全員に資格確認書が交付されていました(東京都後期高齢者医療広域連合の案内)。
2. 令和8年8月から、84歳以下で過去1年に6回以上使っていれば資格情報のお知らせ、それ以外は資格確認書が交付される
東京都後期高齢者医療広域連合と新宿区の案内では、令和8年8月1日から、85歳以上の全員と、84歳以下でマイナ保険証を普段から利用していない人に、資格確認書が交付されています。84歳以下で、普段から利用している人には、資格情報のお知らせが交付されます。
「普段から利用している」とは、過去1年間に6回以上マイナ保険証を利用して受診・利用し、かつ、おおむね直近3か月以内に1回以上利用していることです。新宿区の案内では、利用状況は令和8年5月31日時点の情報に基づくとされています。
2.1 【令和8年8月からの後期高齢者の資格確認書等の交付】
出所:東京都後期高齢者医療広域連合「資格確認書」、新宿区「資格確認書および資格情報のお知らせについて」を基に作成1/2
年齢と利用実績ごとの交付される書類
- 84歳以下で、6回以上かつおおむね直近3か月に1回以上:資格情報のお知らせ(マイナ保険証で受診)
- 84歳以下で、上記以外:資格確認書
- 85歳以上で、6回以上かつおおむね直近3か月に1回以上:資格確認書
- 85歳以上で、上記以外:資格確認書
資格情報のお知らせが届いた人でも、マイナンバーカードを紛失・更新中の人や、介助者が同行して資格確認を補助する必要がある人は、申請により資格確認書の交付を受けられます(新宿区の案内)。
3. 80〜84歳は利用なしが39%、5回以下が19%で、合わせて58%が6回に届いていない
厚生労働省は、令和6年9月から令和7年8月の、後期高齢者のマイナ保険証の利用実績を年齢階級別に示しています。80〜84歳は、6回以上利用した人が42%、5回以下が19%、利用なしが39%です。
5回以下の19%と利用なしの39%を足すと、58%です。80〜84歳の半数を超える人が、過去1年に6回以上という条件に届いていません。6回以上の42%の中にも、直近3か月に利用がない人がいると考えられるため、資格確認書の側に入る割合は、58%より多くなる可能性があります。
3.1 【後期高齢者のマイナ保険証の利用実績(年齢階級別)】
厚生労働省の資料(令和6年9月から令和7年8月の実績)を基に整理。割合は四捨五入のため合計が100%にならない場合がある2/2
出所:厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(令和8年2月12日、第210回社会保障審議会医療保険部会 資料3)を基に作成
利用実績ごとの、年齢階級別の割合
- 6回以上利用:75〜79歳43%、80〜84歳42%、85〜89歳35%、90歳以上22%
- 5回以下利用:75〜79歳19%、80〜84歳19%、85〜89歳19%、90歳以上16%
- 利用なし:75〜79歳38%、80〜84歳39%、85〜89歳45%、90歳以上62%
年齢が上がるほど、利用なしの割合は増えます。90歳以上では62%が利用なしです。令和7年10月時点のマイナ保険証の利用率は、70〜74歳が48%、75〜79歳が37%、80〜84歳が33%、85歳以上が24%でした。資料は、高齢者は認知症の進行など状態像が変わりやすいため、きめ細かい配慮が必要としています。
4. 年6回の条件は、通院が2か月に1回なら毎回使う計算で、3か月に1回なら届かない
過去1年に6回以上という条件を、通院のペースに当てはめてみます。厚生労働省の資料(医療給付実態調査、令和5年度)では、後期高齢者のうち年間に外来受診した人は約95%で、そのうち約8割が2か月に1回は受診しています。受診月数が6か月以上の割合は、グラフの割合を足すと約83%です。
通院が月1回なら、年12回の受診のうち半分の6回で、条件に届きます。通院が2か月に1回なら、年6回の受診です。毎回使って、ちょうど6回になります。通院が3か月に1回なら、年4回の受診です。毎回使っても、6回に届きません。
4.1 【通院のペースと、年6回の条件(編集部試算)】
通院のペースごとの試算
- 月1回:年間の受診は12回、6回使えば6回以上の条件に届く(半分)
- 2か月に1回:年間の受診は6回、毎回使えば届く(全部)
- 3か月に1回:年間の受診は4回、毎回使っても届かない
※前提:東京都後期高齢者医療広域連合は、1年間に6回以上、マイナ保険証を利用して医療機関等を受診・利用した場合としています。この試算は、1回の受診で1回利用する簡易な前提で、実際の数え方は、広域連合の案内で確認してください。
5. まとめ
- マイナ保険証を使っていなくても、資格確認書を示せば、窓口で10割負担にはなりません
- 令和8年8月から、84歳以下で過去1年に6回以上かつおおむね直近3か月に1回以上使っていれば資格情報のお知らせ、それ以外は資格確認書が交付されます
- 85歳以上は、利用実績にかかわらず、資格確認書が交付されます
- 80〜84歳の58%は、6回に届いていません
- 通院が3か月に1回なら、毎回使っても6回に届きません
使っていない家族がいても、慌てる必要はありません。厚生労働省は、資格確認書で受診できる仕組みを案内しています。
まず、届いている書類を確認してみてください。交付の細目は、加入先の後期高齢者医療広域連合の案内で確認します。
※この記事は、東京都広域連合と新宿区の案内などに基づく整理で、制度の運用は変わることがあります。
6. 【編集者の視点】
通院が3か月に1回の人は、毎回使っても年4回で、6回に届きません。通院の回数が少ない人ほど、条件に届かず、資格確認書が交付される側になりやすいと考えられます。
ただ、それは使い方が悪いからではなく、通院の回数が少ないためです。年6回という条件は、利用の習慣を測る物差しと、編集部は見ています。条件に届かなくても、資格確認書で受診できる点は変わりません。
7. 検証:使っていないことより、届いた書類を確認することが分かれ目になる
医療保険の制度を取材してきた経験からいえば、「使っていない」ことよりも、「どの書類が届いているかを知らない」ことの方が、受診のときの困りごとにつながりやすいと考えています。
統計を見ると、80〜84歳の58%は、6回という条件に届いていません。半数を超える人が届いていないことになり、そうした人には資格確認書が交付されます。使っていないこと自体が、受診できなくなる理由にはなりません。
一方、条件に届いた84歳以下の人には、資格情報のお知らせが届き、マイナ保険証で受診する扱いになります。令和8年8月の交付は、令和8年5月31日時点の利用状況に基づきました。いま使い始めた分が、次の判定に数えられるかは、広域連合の案内で確認が必要です。
家族がまずできるのは、届いた封筒の中身が、資格確認書なのか、資格情報のお知らせなのかを見分けることです。厚生労働省は、この2つは別のものだと注意しています。受診の前に、資格確認書と書かれているかを確かめてください。
私は、使っているかどうかを責めるより、届いた書類を一緒に確認し、不明な点を広域連合に問い合わせる方が、実際には役に立つと考えています。
8. 資格確認書は、有効期限が令和9年7月31日までで、代理申請もできる
令和8年8月1日から使う資格確認書の有効期限は、最長で令和9年7月31日までです。自己負担の割合は、毎年8月1日を基準日に判定し直されます。負担の割合が変わると、期限内でも新しい資格確認書が交付されます。
資格確認書は、保険者によって、大きさ、形、色、提供方法(紙または電子)が異なります。受診の前に、「資格確認書」と記載されているかを確認してください。親族などの法定代理人のほか、介助者などによる代理申請もできます。
病態の変化などにより、顔認証付きカードリーダーをうまく使えなくなった場合は、資格確認書を使うよう案内されています。マイナ保険証の利用登録の解除を申請した人にも、資格確認書が交付されます。
制度の詳しい内容は、こちらの記事で、登録の解除や資格確認書の関係は、こちらの記事で整理しています。
9. 【編集者の視点】
資格確認書は、様式も有効期限も保険者で違い、届いた封筒の見た目で判断しにくい書類です。介助が必要な家族の場合は、代理申請ができることも、知っておく価値があります。
ただ、顔認証付きカードリーダーをうまく使えなくなったときは、資格確認書を使うよう案内されています。高齢の家族は、状態が変わりやすいため、受診の前に、手元に資格確認書があるかを確認しておくと安心です。
※本記事は、編集部が厚生労働省と広域連合・自治体が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
10. よくある質問
10.1 Q. 資格確認書が届いていない場合は、どうすればよいですか?
A. 厚生労働省は、資格確認書の交付などの不明な点は、加入している医療保険者に問い合わせるよう案内しています。後期高齢者の場合は、加入先の後期高齢者医療広域連合です。
10.2 Q. 資格確認書と、資格情報のお知らせは、同じものですか?
A. 別のものです。資格確認書は、マイナ保険証を使わないときに受診で示す書類です。資格情報のお知らせは、マイナ保険証での受付がうまくいかないときに、マイナンバーカードとともに示す書類です。
10.3 Q. 85歳以上は、必ず資格確認書になりますか?
A. 東京都後期高齢者医療広域連合の案内では、令和8年8月1日から、85歳以上の全員に資格確認書を交付するとされています。ほかの広域連合は、加入先の案内で確認してください。令和8年度の一斉更新以降に85歳になった人は、新たな資格確認書は交付されず、次回の一斉更新などで交付されます(同広域連合)。
10.4 Q. 84歳以下で資格情報のお知らせが届いた場合、受診はどうしますか?
A. 受付では、マイナ保険証を示します。うまく受付できないときは、資格情報のお知らせをマイナンバーカードとともに示します。介助者の同行が必要な場合などは、申請により資格確認書を受けられます。
参考資料
- 厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」(令和8年2月12日、第210回社会保障審議会医療保険部会 資料3)
- 厚生労働省「資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)」
- 厚生労働省WEBマガジン「医療機関・薬局では、マイナ保険証か資格確認書をご提示ください」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「資格確認書」(令和8年7月23日更新)
- 新宿区「資格確認書(後期高齢者医療資格確認書)および資格情報のお知らせについて」(2026年6月25日更新)
齊藤 慧